4 / 200
序章
004-大集結
しおりを挟む
「僕はエリアス・アルティノス、再びこの地に戻ったので、今後の方針を伝える」
椅子に座りながら、僕は目を閉じてネットワークに意思を伝える。
さっきは大変だった。
1000年強ぶんのログが一斉に雪崩れ込んできて、それを全部解釈するのにすごい負荷を喰らったのだ。
カサンドラが手伝ってくれなかったら、もう少し時間がかかっていたかもしれない。
…今まで無関心を貫き、最初の命令「監視せよ」を遵守していたことがわかるログを送信してきた統括AIたちが、僕の指示を待っている。
なら、僕としても、エリアスとしても、答えない訳にはいかないだろう。
「集結せよ、統括地域を放棄して、首都を再建するために集結せよ。その後は各地のインフラストラクチャーを復旧する。また、他の知性体との接触は、こちらの行動指針が露見しない程度であれば許可する」
他の知性体の情報も、ログの中にあった。
攻撃してきたり、探ろうとしてきたり。
全部撃退したらしいが。
「.....!」
脳に....というかメインコンピューターに、賛同の意を示すメッセージが大量に送られてくる。
ただし、何百件かは広域に展開中の傘下機体を呼び戻してから、という事だったが。
「また、僕は再起動時に別の人格を獲得したため、前のエリアス・アルティノスとは若干違う点がある、留意してほしい。また、そちら側の思考とこちらの命令に矛盾が発生したように感じた場合は、意見具申を許可する」
僕はそう宣言した。
一人でいろいろやると、絶対ミスが起きる。
完璧なコンピューター人間の元エリアスと違って、僕は小市民だ。
「戦闘限定の設計のノルティノスは作業用に改造を施す必要がある為、タッティラ=エクスティラノスの工業エリアへと向かい、判断を仰げ」
タッティラ=エクスティラノスとは、ヴェリアノスの工業エリアの担当者だ。
エリアスとしても会った事はない。
勝手に仕事を任せたら怒るだろうか?
「では、通達を終える。各自撤退時に管理権限を僕に移譲するのを忘れないように」
最後に伝える。
現地に残ったものをハッキングされないように、僕の遺伝情報でロックする。
最上位の権限でロックされているので、例外なくすべての情報にアクセスできなくなるだろう。
「カサンドラ、都市機能の回復を急ぐ。.....食事をしよう」
『わかりました、直ちにご用意いたします』
食事といっても、僕ではないのが悲しいところだ。
この都市にある、ナノマシン急速修復装置を使うのだ。
こちらオーダーメイドになりまして、数に限りがございます、という奴で、常に使うわけにもいかない。
「......ところで、カサンドラ」
『何でしょうか、エリアス様』
「...人間の食事は、あるかな」
『ご興味がおありですか?』
「......そうなるな」
どうやら、あるらしい。
記憶を探ってみると、前のエリアスが興味を持って作らせたときの食材がまだあるそうだ。
とりあえず、食べてみるか。
その日、世界に激震が走った。
領有権を無言で主張し、近づく者を撃滅し、各地を我が物顔で偵察していた古代の勢力「Ve’z」が、急にその全てを放棄して移動を始めたのだ。
コンタクトを試みた者は、彼らが攻撃をしてこない事に驚きつつも、返ってこない肝心の内容に困惑した。
「調査の結果、彼らはとある銀河に集結していることが分かりました」
調査機関であるTRINIY.は、そう発表した。
そこは人類の使用するワープ技術では、到底たどり着けない遥か彼方の銀河であった――――
椅子に座りながら、僕は目を閉じてネットワークに意思を伝える。
さっきは大変だった。
1000年強ぶんのログが一斉に雪崩れ込んできて、それを全部解釈するのにすごい負荷を喰らったのだ。
カサンドラが手伝ってくれなかったら、もう少し時間がかかっていたかもしれない。
…今まで無関心を貫き、最初の命令「監視せよ」を遵守していたことがわかるログを送信してきた統括AIたちが、僕の指示を待っている。
なら、僕としても、エリアスとしても、答えない訳にはいかないだろう。
「集結せよ、統括地域を放棄して、首都を再建するために集結せよ。その後は各地のインフラストラクチャーを復旧する。また、他の知性体との接触は、こちらの行動指針が露見しない程度であれば許可する」
他の知性体の情報も、ログの中にあった。
攻撃してきたり、探ろうとしてきたり。
全部撃退したらしいが。
「.....!」
脳に....というかメインコンピューターに、賛同の意を示すメッセージが大量に送られてくる。
ただし、何百件かは広域に展開中の傘下機体を呼び戻してから、という事だったが。
「また、僕は再起動時に別の人格を獲得したため、前のエリアス・アルティノスとは若干違う点がある、留意してほしい。また、そちら側の思考とこちらの命令に矛盾が発生したように感じた場合は、意見具申を許可する」
僕はそう宣言した。
一人でいろいろやると、絶対ミスが起きる。
完璧なコンピューター人間の元エリアスと違って、僕は小市民だ。
「戦闘限定の設計のノルティノスは作業用に改造を施す必要がある為、タッティラ=エクスティラノスの工業エリアへと向かい、判断を仰げ」
タッティラ=エクスティラノスとは、ヴェリアノスの工業エリアの担当者だ。
エリアスとしても会った事はない。
勝手に仕事を任せたら怒るだろうか?
「では、通達を終える。各自撤退時に管理権限を僕に移譲するのを忘れないように」
最後に伝える。
現地に残ったものをハッキングされないように、僕の遺伝情報でロックする。
最上位の権限でロックされているので、例外なくすべての情報にアクセスできなくなるだろう。
「カサンドラ、都市機能の回復を急ぐ。.....食事をしよう」
『わかりました、直ちにご用意いたします』
食事といっても、僕ではないのが悲しいところだ。
この都市にある、ナノマシン急速修復装置を使うのだ。
こちらオーダーメイドになりまして、数に限りがございます、という奴で、常に使うわけにもいかない。
「......ところで、カサンドラ」
『何でしょうか、エリアス様』
「...人間の食事は、あるかな」
『ご興味がおありですか?』
「......そうなるな」
どうやら、あるらしい。
記憶を探ってみると、前のエリアスが興味を持って作らせたときの食材がまだあるそうだ。
とりあえず、食べてみるか。
その日、世界に激震が走った。
領有権を無言で主張し、近づく者を撃滅し、各地を我が物顔で偵察していた古代の勢力「Ve’z」が、急にその全てを放棄して移動を始めたのだ。
コンタクトを試みた者は、彼らが攻撃をしてこない事に驚きつつも、返ってこない肝心の内容に困惑した。
「調査の結果、彼らはとある銀河に集結していることが分かりました」
調査機関であるTRINIY.は、そう発表した。
そこは人類の使用するワープ技術では、到底たどり着けない遥か彼方の銀河であった――――
22
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
【SF短編】エリオの方舟
ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

転生先は美少女パイロットが乗るロボットのAIでした。
美作美琴
ファンタジー
いじめられっ子の少年、瑞基(みずき)は事故死して女神に出会う。
彼女は瑞基を転生させようとするが瑞基はかたくなに拒否。
理由は人間に転生してまたいじめられるのが嫌だから。
しかし実績の為どうしても瑞基を転生させたい女神は瑞基にある提案をする。
それは瑞基を人間ではないもの……科学技術が進歩した世界のAIに転生させるというものだった。
異世界転生はファンタジー世界に転生するだけに在らず……異例のロボ転生、刮目してみよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる