SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
3 / 200
序章

003-『メッティーラ・エクスティラノス』

しおりを挟む
ドローンと共に、防衛区画へと到達した僕は、よくわからないタイプのドローン……小型セントリードローンに囲まれた。

『遺伝子情報を確認しました』
『お通りください』

Ve’zの文明は基本的に、人の遺伝子に重きを置いている。
外部と子作りをしなかった理由は多分これだろう。
純粋なVe‘zの遺伝子情報を持たないと、その辺の扉すら開けられないのだ。

「メッティーラ=エクスティラノスは何処にいる?」
『位置情報を共有します』

位置情報が送られてきた。
この星系…「Veli-Airnosヴェリアノス」の外周付近の哨戒中のようだ。
僕は知らないけれど、エリアスの記憶では最も忠実…というよりは、最も抵抗なく命令に遵守する存在であるようだ。

「呼び戻してくれ」
『はい』

直後、その場にワープポータルが開き、超大型の戦艦がワープしてきた。
僕は避けない。
戦艦はその場から動くことなく、艦橋部分から頭脳代わりであるメッティーラが分離してこちらに向かってくる。

『あなたのお帰りをお待ちしておりました、我が主人』
「あ…ああ、戦力の状況は?」
『あなたがお眠りになられてから7200年程の間に、四基が破損したため、一時的に隔離しています』
「そうか、すぐに修理するといい」
『ありがとうございます』

僕…というよりエリアスがいないと、彼らは増えることも同胞を直すこともできないようだ。
だけど、それは少し可哀想に思えた。

「…今この瞬間より、メッティーラ。君たちは僕の命令を待たなくていい」
『お捨てになられるということでしょうか、であれば直ぐに…』
「結論を急がないで欲しい。仲間が壊れればすぐに修復を、戦力が不足と感じれば製造を、メッティーラ。君の判断に任せる」
『…ハッ!』

明確に意思のある個体は「エクスティラノス」という苗字で管理されているが、指で数えるほどしかいない。
それ以外は全て「ノルティノス」と呼ばれる自由意志の制限されたAIが乗っかっていて、容易に増殖できる。
おぞましくも感じるが、僕の存在も同様におぞましいので省略。

「だいぶ数が少ないね」
『ハッ、エリアス様がお眠りになられてから、幾つかの統率個体が統合体より分離され、再接続の機会がないままこの宇宙中に離散しました』

恐らく、メイン出力の低下によって、遠隔との接続システムが切断され、統率を失った下部個体が離反したんだろう。
っと、何を冷静に分析しているのだ、僕は。

「たった今、メイン出力が回復した。ネットワークの再構築を始めているから、全体に繋がり次第、僕の考えを伝える」
『ハッ、お待ちしております』

僕は戦闘用ドローンに乗って帰る。
エリアスはそういった行動はしなかった様で、戦闘用ドローンのAIが困惑する様子が見てとれた。



「これは?」
『エリアス様に相応しい椅子をご用意しました』

帰ったら、ちょっと格好いい椅子が用意されていた。
玉座に近い形だが、座ってみると意図がわかった。

「これは…素晴らしい、ありがとう」
『光栄です』

ここの都市は、内部の構造が改造されていた。
本来の用途は生体兵器的な側面を持つ構造物なのだが、唯一のVe‘z人の僕のために、第二の身体として作り替えられていたのだ。
この椅子は、端末にすぎないエリアスのクローン体と僕のリンクをより深いものにするためのプラグの様なものだ。

『まもなく、復旧できないと判断したエリアを除くすべてのエリアとの通信網が回復いたします』
「わかった」

ここにいるのはエリアスだけど、中身はエリアスじゃない。
エリアスは最後のVe‘z人として、ここで無機質な余生を過ごした。
いや、滅んだ頃にはもう、Ve’z人とはそういう存在だったのだろう。
だけど僕は違う、金属と機械の墓場みたいな場所で生きるのは、正直つらい。
だからこそ、別の選択肢を取る、それを今から発表するのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。 目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。 なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。 そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。 その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・

処理中です...