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序章
003-『メッティーラ・エクスティラノス』
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ドローンと共に、防衛区画へと到達した僕は、よくわからないタイプのドローン……小型セントリードローンに囲まれた。
『遺伝子情報を確認しました』
『お通りください』
Ve’zの文明は基本的に、人の遺伝子に重きを置いている。
外部と子作りをしなかった理由は多分これだろう。
純粋なVe‘zの遺伝子情報を持たないと、その辺の扉すら開けられないのだ。
「メッティーラ=エクスティラノスは何処にいる?」
『位置情報を共有します』
位置情報が送られてきた。
この星系…「Veli-Airnos」の外周付近の哨戒中のようだ。
僕は知らないけれど、エリアスの記憶では最も忠実…というよりは、最も抵抗なく命令に遵守する存在であるようだ。
「呼び戻してくれ」
『はい』
直後、その場にワープポータルが開き、超大型の戦艦がワープしてきた。
僕は避けない。
戦艦はその場から動くことなく、艦橋部分から頭脳代わりであるメッティーラが分離してこちらに向かってくる。
『あなたのお帰りをお待ちしておりました、我が主人』
「あ…ああ、戦力の状況は?」
『あなたがお眠りになられてから7200年程の間に、四基が破損したため、一時的に隔離しています』
「そうか、すぐに修理するといい」
『ありがとうございます』
僕…というよりエリアスがいないと、彼らは増えることも同胞を直すこともできないようだ。
だけど、それは少し可哀想に思えた。
「…今この瞬間より、メッティーラ。君たちは僕の命令を待たなくていい」
『お捨てになられるということでしょうか、であれば直ぐに…』
「結論を急がないで欲しい。仲間が壊れればすぐに修復を、戦力が不足と感じれば製造を、メッティーラ。君の判断に任せる」
『…ハッ!』
明確に意思のある個体は「エクスティラノス」という苗字で管理されているが、指で数えるほどしかいない。
それ以外は全て「ノルティノス」と呼ばれる自由意志の制限されたAIが乗っかっていて、容易に増殖できる。
おぞましくも感じるが、僕の存在も同様におぞましいので省略。
「だいぶ数が少ないね」
『ハッ、エリアス様がお眠りになられてから、幾つかの統率個体が統合体より分離され、再接続の機会がないままこの宇宙中に離散しました』
恐らく、メイン出力の低下によって、遠隔との接続システムが切断され、統率を失った下部個体が離反したんだろう。
っと、何を冷静に分析しているのだ、僕は。
「たった今、メイン出力が回復した。ネットワークの再構築を始めているから、全体に繋がり次第、僕の考えを伝える」
『ハッ、お待ちしております』
僕は戦闘用ドローンに乗って帰る。
エリアスはそういった行動はしなかった様で、戦闘用ドローンのAIが困惑する様子が見てとれた。
「これは?」
『エリアス様に相応しい椅子をご用意しました』
帰ったら、ちょっと格好いい椅子が用意されていた。
玉座に近い形だが、座ってみると意図がわかった。
「これは…素晴らしい、ありがとう」
『光栄です』
ここの都市は、内部の構造が改造されていた。
本来の用途は生体兵器的な側面を持つ構造物なのだが、唯一のVe‘z人の僕のために、第二の身体として作り替えられていたのだ。
この椅子は、端末にすぎないエリアスのクローン体と僕のリンクをより深いものにするためのプラグの様なものだ。
『まもなく、復旧できないと判断したエリアを除くすべてのエリアとの通信網が回復いたします』
「わかった」
ここにいるのはエリアスだけど、中身はエリアスじゃない。
エリアスは最後のVe‘z人として、ここで無機質な余生を過ごした。
いや、滅んだ頃にはもう、Ve’z人とはそういう存在だったのだろう。
だけど僕は違う、金属と機械の墓場みたいな場所で生きるのは、正直つらい。
だからこそ、別の選択肢を取る、それを今から発表するのだ。
『遺伝子情報を確認しました』
『お通りください』
Ve’zの文明は基本的に、人の遺伝子に重きを置いている。
外部と子作りをしなかった理由は多分これだろう。
純粋なVe‘zの遺伝子情報を持たないと、その辺の扉すら開けられないのだ。
「メッティーラ=エクスティラノスは何処にいる?」
『位置情報を共有します』
位置情報が送られてきた。
この星系…「Veli-Airnos」の外周付近の哨戒中のようだ。
僕は知らないけれど、エリアスの記憶では最も忠実…というよりは、最も抵抗なく命令に遵守する存在であるようだ。
「呼び戻してくれ」
『はい』
直後、その場にワープポータルが開き、超大型の戦艦がワープしてきた。
僕は避けない。
戦艦はその場から動くことなく、艦橋部分から頭脳代わりであるメッティーラが分離してこちらに向かってくる。
『あなたのお帰りをお待ちしておりました、我が主人』
「あ…ああ、戦力の状況は?」
『あなたがお眠りになられてから7200年程の間に、四基が破損したため、一時的に隔離しています』
「そうか、すぐに修理するといい」
『ありがとうございます』
僕…というよりエリアスがいないと、彼らは増えることも同胞を直すこともできないようだ。
だけど、それは少し可哀想に思えた。
「…今この瞬間より、メッティーラ。君たちは僕の命令を待たなくていい」
『お捨てになられるということでしょうか、であれば直ぐに…』
「結論を急がないで欲しい。仲間が壊れればすぐに修復を、戦力が不足と感じれば製造を、メッティーラ。君の判断に任せる」
『…ハッ!』
明確に意思のある個体は「エクスティラノス」という苗字で管理されているが、指で数えるほどしかいない。
それ以外は全て「ノルティノス」と呼ばれる自由意志の制限されたAIが乗っかっていて、容易に増殖できる。
おぞましくも感じるが、僕の存在も同様におぞましいので省略。
「だいぶ数が少ないね」
『ハッ、エリアス様がお眠りになられてから、幾つかの統率個体が統合体より分離され、再接続の機会がないままこの宇宙中に離散しました』
恐らく、メイン出力の低下によって、遠隔との接続システムが切断され、統率を失った下部個体が離反したんだろう。
っと、何を冷静に分析しているのだ、僕は。
「たった今、メイン出力が回復した。ネットワークの再構築を始めているから、全体に繋がり次第、僕の考えを伝える」
『ハッ、お待ちしております』
僕は戦闘用ドローンに乗って帰る。
エリアスはそういった行動はしなかった様で、戦闘用ドローンのAIが困惑する様子が見てとれた。
「これは?」
『エリアス様に相応しい椅子をご用意しました』
帰ったら、ちょっと格好いい椅子が用意されていた。
玉座に近い形だが、座ってみると意図がわかった。
「これは…素晴らしい、ありがとう」
『光栄です』
ここの都市は、内部の構造が改造されていた。
本来の用途は生体兵器的な側面を持つ構造物なのだが、唯一のVe‘z人の僕のために、第二の身体として作り替えられていたのだ。
この椅子は、端末にすぎないエリアスのクローン体と僕のリンクをより深いものにするためのプラグの様なものだ。
『まもなく、復旧できないと判断したエリアを除くすべてのエリアとの通信網が回復いたします』
「わかった」
ここにいるのはエリアスだけど、中身はエリアスじゃない。
エリアスは最後のVe‘z人として、ここで無機質な余生を過ごした。
いや、滅んだ頃にはもう、Ve’z人とはそういう存在だったのだろう。
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