SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
2 / 200
序章

002-暗中模索

しおりを挟む
『遺伝情報を承認』
『開錠』

扉が開かれる。
僕はコアブロックに進入し、Ve’zにしかアクセスできないメインシステムを再起動する。
Ve’zの首都星系には、惑星サイズの都市、「A-Roughtアロウト」が存在していて、僕が今いるのもここだ。
この首都のメインコンピューターが、僕のこのクローン体では出来ない演算を出来るようにしてくれる......らしい。
カサンドラに聞くと怪しまれるので、自力で記憶のアーカイブを探して見つけた。

「何が何だか.....」

ほぼ一瞬で再起動したメインコンピューターだが、演算領域はフルに使えない。
メイン動力......「F.......D.....」ダメだ、読めない。
とにかく、起動したばかりのメイン動力のエネルギーが不十分なので、ここ以外のネットワークへの復旧は出来ない。

「....はぁ」

コアブロックから都市部にワープする。
凄い技術だ。
でも、「理論が知りたいな」とか思ってはダメだ。
また頭痛に襲われる。
望めば何でも手に入るのは、幸せじゃないのだ。
基礎があって初めて、それを手に入れる喜びがある。

「Ve’z.......」

アロウトの街並みは、素人が3Dモデルで街を作りました! みたいなデザインだった。
こればかりは情報が表示されないので考察だが、Ve’zの人間は居住性のみを重視していたのだろう。

『エリアス様、御召し物をご用意しました』
「ありがとう」

その時、標準型の警備ドローンが何かを持ってきた。
僕はそれを受け取り、着用する。

「..........本当に助かる」

凄くいいファッションセンスだと思う。
全身から金属の触手が出せるし、単独で宇宙の旅も出来る。
それでいて熱排出の手間はないし、充電もいらないらしい。
本当に、素晴らしいファッションセンスだ.....

「本当に、普通の身体じゃないんだな」

僕は鏡を見つけて、自分の姿を見る。
足元まで伸ばした、青みがかった銀髪と、生気の感じられない肌、虹色に見える瞳。
ふと皮膚を引き千切ると、橙色の発光する液体が滲み出る。

「.........」

人間じゃない。
人間もいない。
何でこんなことになった?

「.........」

情報は表示されない。
僕の状態を説明することはできないようだ。
生まれ変わるなら、もう少しマシな状況にして欲しかった。
主人でないとバレたら、あの金属触手のかいぶ...カサンドラに八つ裂きにされるかもしれないというのに。

「頭がおかしくなりそうだ」

ここがどこだか、わからない筈なのに...わかる。
自分が何者か、わかる。
何をすべきかは、ある程度わかる。
この世界に僕が呼ばれた理由は...わからない。

「...っ」

僕の目の前で、血(?)を垂れ流していた腕が治っていくのが見えた。
痛みは感じるけれど、鈍く、再生は一瞬。
Ve‘z人の頑丈さが見て取れる。

「さて...こんな所で油売ってる場合じゃないんだ」

僕は外見調整場...公衆電話ボックス版美容院みたいなものから出る。
ワープ装置を使ってもいいけど、今の僕だと警報装置に引っ掛かるかもしれないので、自力で宇宙に飛び出す。

「ぐぐ.....」

アロウトの重力フィールドから離脱するのは容易ではない。
だからこそ思いっきり飛んだのだが、重力フィールドに囚われて落下軌道に入る。
そのまま都市まで落下する。

「いてててて.....」

今気づいたけれど、この都市は生きている。
僕の義体と同じような、人工血液が各部に浸透し、心臓部である動力炉のエネルギーを効率的に伝達しているのだ。

「どういう技術.....あああ、いい」

疑問を持つと、凄くわかりやすくて知りたくない記憶が蘇ってくる。
エリアスの常識と僕の常識が嚙みあってないので、そのせいで余計につらい。

「もう一度...!」

金属の触手で、自分を思い切り上空に跳ね上げる。
飛んでる最中、ふと思った。

「(これ、ドローンを呼んで乗って行けばよかったかもな....)」

反重力スラスターを起動して、最後の一押しで重力フィールドを突破する。

『エリアス様、どこへ?』
「ちょっと”詰め所”に」
『お供をお付けします』

いらないんだが.....
カサンドラの厚意を断れず、僕は戦闘用ドローンと共に行動することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【SF短編】エリオの方舟

ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

処理中です...