どこかがふつうと違うベータだった僕の話

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美晴にとっての初めてと婚約の話4〜美晴視点5

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食器を片付けた後、まったりしていたら、玄関から鍵を開ける音がした。


「ただいま!陽向」

「ただいま。陽向。2人ともいらっしゃい。あれ?陽向は?」


美男美女のご夫妻が帰ってきた。おばさんの方が陽向に似てる。2人ともベータと言っていたが、それは違うんじゃないかと僕は思ってる。直人も同じ意見だ。ベータの両親からしか、ベータは生まれないと言われているからだ。他のバースからもベータが生まれるらしいが、ごく少数だ。陽向のバースがベータだから、ご両親もベータと言っているだけなのではないか?僕も直人もそう思っている。

「陽向は眠ってます」

「あの子、直人君たちをほっといて寝ちゃったの?困った子ねぇ」

おばさんは呆れたようにため息をついた。いや、悪いのは陽向を散々くったこいつですから。そうおばさんに言えたら良かったが、現状としてまだ言うのは早いから、黙っておく。

「俺達が夜遅くまでゲームしてたから、それで寝不足なんですよ。久しぶりに泊まったから、盛り上がっちゃって。なので怒らないで下さい」

お前がそれを言うか!おばさん達や直人の両親に知られたら、間違いなくお前が怒られるだろうな。

「そうなのね。それなら仕方ないわね。直人君達、何か話があるのでしょ?だから、私達が帰ってくるまで残っていたのよね?」

おばさん達の顔付きが変わった。さっきまでの柔らかい表情が嘘のようだ。

「はい。僕は陽向のことが好きです!陽向とずっと一緒にいたいと思っているし、結婚したいと思っています。お願いです!婚約の許可をして下さい!」

僕はそう言うと、おばさん達に頭を下げた。

どれくらい経っただろうか?数分のことが、とても長く感じる。

「美晴君。顔をあげてちょうだい。あなたの気持ちはよく分かったわ」

顔を上げるとおばさんはふわりと微笑んだ。おじさんも穏やかな顔をしている。

「美晴君、現状はあなたとの婚約は許可出来ないわ。理由はあなたがオメガだから。ベータの陽向とは結婚したとしても子どもは出来ないわ。オメガだから差別してる訳じゃない。陽向も美晴君のことを好きみたいだしね。でもベータの陽向との結婚を世間は許可しない。うちの親戚も許さないでしょうね。私達の本音では結婚させてあげたいのだけれどね。美晴君、そう言う訳だから、分かってもらえるかしら?」

「…分かりました。でも気持ちの上では納得していませんし、僕らはまだ高校生です。先のことは分かりませんから」

「そうね。それから直人君」

「…はい」

直人が重々しく頷いた。

「今、陽向には、多くの家から見合いや婚約の話が出ているわ。主に、アルファやベータの家庭からなのだけど。この話は聞いたことがあるかしら?」

「はい。うちの親から聞いています」

「陽向のことを考えて、今まで全て断ってきたわ。でもそれも難しい状態なのよね。そこでね、直人君に婚約者になって欲しいと思っているのよ」

「俺が…陽向の婚約者…」

直人は茫然としているようだった。急な話だったし、頭がついてこないのだろう。それは僕も同じだった。

「陽向は美晴君ともだけど、直人君とも仲が良いでしょ?それはどのうちも知っているわ。それに直人君自身はアルファだし、家柄もいいわ。だから陽向との婚約も納得すると思うのよ。どうかしら?」

こんな時、おばさんは本当にベータなんだろうかと疑ってしまう。母は強しと言うが、どうも違う気がする。

「少し、考えてさせて下さい」

「そうね。急な話だったものね。よく考えて納得して返事をちょうだい。さ、それよりも、シュークリームを買ってきたのよ。良かったら食べてって」

先ほどの真剣な表情とうって変わってそう言うと、鼻歌を歌いながら、おばさんは台所に向かった。

「直人君、美晴君。うちのは、さっきああ言ったが、本心は2人とも結婚して欲しいと思っているし、3人で幸せになって欲しいとも思っている。陽向は2人といる時が一番幸せそうだからな。直人君だけが婚約者になるのは、あくまで仮。3人が一緒になるための方法を考える時間を稼ぐための1つの手段に過ぎないのだよ。最終的に納得する結論は3人でよく話合って決めて欲しい。それが僕ら親の願いだ。君達の両親もそう思っているはずだよ」

おじさんはそう言うと、ゆっくり味わうようにコーヒーを飲んだ。

いつの間にコーヒーなんて用意したのだろうか?なんてどうでもいいことを考えてしまった。

その日は、美味しいシュークリームをいただいた後、それぞれの家路に着いたのだった。





近いうちに期間限定で感想欄を開けようと思います。どのお話がお気に入りが教えてくださると嬉しいです♪
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