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第2章
第114話
しおりを挟むエントside
「で、取り敢えず走り出すまでは良いのですが、さて、一体どこにいるのでしょう?」
走りながら周りをキョロキョロと見渡し獲物を探す。
「あ、念のために、《貴方は、そこに居ますか?》『魂消る』」
エントがそう唱えると徐々に姿が薄れていく様な錯覚を覚える。だが、エントは、確かにそこにいる。
先程唱えたのはエントが自力で開発した隠密魔法で『魂消る』だ。
大体、『魂消る』とは、驚きを意味するものであるが、それとは全く関係なく、この魔法を発動すると、まるで、その場から存在が消えるかのように影が薄くなり、対象に気づかれにくくなる魔法である。しかも、位置づけとしては下級部類なので、MP消費は1時間で5、詠唱はかなり短く、暗殺者なら喉から手が出るほど欲しい代物である。
「何が悲しくて自分から影を薄くしないといけないのか……」
だが、そんな便利魔法も元から影が薄いと、精神的ダメージも多少ながらある。
「影を濃くするために魔法の実験していたからと言って、その副産物でこんな物が出来るなんて………不幸なのか、幸運なのか………」
普通なら副産物として魔法が出来ること自体幸運の何物でもないのだが、それは効果と本人の思考次第である。
「…………あ、いた。けど………」
エントの前方。500m程であろうか?そこには、敵影と思しきものを発見した。たが、それはリザードマンではなく、キリトの説明にあった下位の竜種であった。
「ちょっと、リザードマンより先にこんなのが出るなんて」
「不運だ」と小さく呟く。
(先に竜種が出るのは不運だが、相手は俺に気がついてない。だったら背後からの奇襲が可能だし、有効的だ。武器は……)
執事服の長袖を捲り、左右のブレスレットが露になる。エントはそれを外しMPを消費しながら、ブレスレットを1つにまとめ、それを細長く伸ばしていき、長さはエントの頭1つ分程大きくする。
「これぐらいでいいか。次は刃を……」
頭1つ分伸びた部分から生えてくるように徐々に半三日月型の刃が出てくる。その形状はデスサイズに限りなく近いが、刃の部分は通常の半分より少々大きい程度の物だ。
「よし、後は……」
そう言うと、エントは目を細めて、下位の竜種を見据えていた。
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