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その10 俺だけの妻

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 夜会が終わり、シーズンも終わったことで、貴族たちの中には領地へ帰る者もいる。

 王宮務めのクリスは1年の大半を王都で暮らし、セシリアも友人が皆王都にいることもあり、1年の半分以上は王都に滞在する。

 時々いつもの4人でお茶会を開き会話を楽しみ、他の貴族とも同じくお茶会などで交流を持ち様々な情報交換をする。




 夜会から2週間が経ったある日の夜、寝支度を終えたクリスがセシリアに話をした。


「セシー、来週から領地に帰るよ」

「仕事はどうするの?」

「今週で退職する事になった。侯爵領の方の仕事を本格的に始めて、数年以内に爵位を継承することが決まったから」

「急な話ね…」


 クリスはまだ20代後半だ。セシリアは、クリスが爵位を継ぐのは30代後半くらいだと思っていたので早いような気がしたのだ。


「そうかな?侯爵領は広大だし、そろそろ引き継ぎの準備が必要な頃だと思っていたから、急ではないよ」

「そうなの?」

「セシー、子供たちと一緒に領地で暮らそう」


 いつになく真面目な顔のクリスに、これが本当の話なのだと察したが、あまりにも急な話だったためセシリアはきちんと理解するのに少し時間がかかった。


「…分かったわ」

「王都とは暫くのお別れだよ」

「寂しくなるわね」

「……」


 クリスがセシリアを抱きしめた。


「セシー、俺だけの、君だからね。何人産んでも愛人や恋人は認めないよ。これから先ずっと、俺以外は絶対に許さないから」

「夫婦なんだから、愛人や恋人を作るにはお互いの同意が必要なのよ。クリスが認めないのなら作ることはないわ。でも、クリスも堂々と作れないけど…それでいいの?」

「勿論だよ。セシー以外はいらない」

「…そう。まぁ気が変わったら教えてね」

「……」


 クリスの思いはどこまでも信じてもらえない。それは自分の蒔いた種だから甘んじて受けるしかないと思っている。


 クリスは、セシリアの信頼が得られなくても、これから先の未来全てをセシリアと過ごすことを最優先にすることにした。

 愛する人が妻でいてくれるだけでも幸せだと思うことにしたのだ。愛を返してもらえなくても、自分が愛し続ければいい。そう思うことにした。


「セシー、抱いてもいい?」


 甘い顔をして、クリスがセシリアに問う。セシリアは小さく笑って答えた。


「なぁに?いつもは聞かないのに…」

「うん。でも、セシーに“いい”って言って欲しい」

「いい、わよ?」

「セシー…」


 途端にクリスはセシリアの口に吸い付いた。頭を固定して、舌を差し込み口内を舐め回す。セシリアは上顎を舐められるのが弱く、クリスは重点的に舐め続けた。

 舌を絡ませながら、セシリアの陰核を指で優しくノックする。それだけで、その先の快楽を知っているセシリアの秘部はジワリと濡れて、クリスの指の滑りをよくしていく。


「セシー、濡れてる」

「あっ、クリス、気持ちいいっ。もっと…」

「仰せのままに」


 クリスはセシリアの寝衣を脱がせ、下着を取り、一糸纏わぬ姿にした。


「セシーの体は、俺だけのものだよ。ココを愛していいのは俺だけ。孕むのは、俺の子だけだよ」

「なあに?夫婦なんだから、あなただけに決まってるじゃない」

「うん、そうだけどね。それだけじゃないんだ…」


 そう言いながら、セシリアと軽く舌を絡ませた後、乳首を舌で転がし吸いつきながら、陰核を直接捏ね始めた。円を描くようにくるくる撫でていると、次第に赤く膨らみ、セシリアのそこは愛液でぐっしょりと濡れていた。


「ああ、もうヌルヌルだね。中を触るよ?」

「んっ、お願い…」


 愛液で十分に濡れたセシリアの膣穴へ指を挿入する。ヒクヒクと入口が収縮し、クリスの指を誘い込むように何度もきゅっと締め付ける。中からはどんどん愛液が溢れ出し、セシリアがクリスの愛撫に感じて気持ちよくなっているのが分かり、漸くクリスは許されている気持ちになる。

 セシリアが感じてしっかり反応すると「抱いてもいい」と許されているような気がして、クリスは安心して挿入する事が出来るのだ。


「セシー、トロトロだ。指がぐっしょりと濡れて、ふやけそうだよ」

「もうっ、気持ちいいの。そろそろ欲しいわ…」

「まだダメだよ。もっと求めてもらわないと」


 すると、クリスは乳首から口を離し、陰核へちゅうっと吸いついた。吸いつきながら膣穴には指を2本挿入し、膣の中のGスポット、陰核の裏側を擦った。


「ああっ、クリス、だめっ、きちゃうっ」


 セシリアの声を無視して、クリスはそのまま陰核をチロチロと舐めしゃぶり、溢れた愛液を時々じゅるじゅるっと音を立てて吸う。


「ひぁっ、あんっ、おかしくなるのっ。やあああっ」


 セシリアは盛大に達した。汗がどっと吹き出し軽く意識を飛ばしていた。

 クリスはピクピクと痙攣するセシリアをうっとりと眺め、目を細め笑った。そして、先ほどから先走りを涎のように垂らしていた陰茎をセシリアの膣口にあてると、一気に腰を進め最奥を突いた。

 まだ達した余韻が残り、呆然としたままだったセシリアはその衝撃に再び啼いた。


「やぁっ、まだ、だめっ、…あんっ、クリス…」

「はぁ、だめじゃないでしょ?気持ちいいって言って?」

「やっ、気持ちいいっ、クリス、やなの、気持ち良すぎてっ」


 善がるセシリアは最高に淫らで美しい。セシリアの快楽を優先したいのに、クリスも腰を振り始めると止まらなくなる。この中を奥までガンガンに突いて、壊してしまいたいとさえ思う。クリスの形を覚えさせ、誰のための体なのかしっかり刻み込まなければならない。


「セシーは快楽に弱いね。俺にこうされるのが好きなんだ?」

「好きっ、クリスの、気持ちいいっ、だめぇ…」


 強すぎる快楽にセシリアの目尻にほんの少し涙が滲む。クリスはその涙を舐め取り、そのまま唇を移動して耳朶を甘噛みしたり耳の溝をくちゅくちゅと音をさせて舌でなぞった。

 その度にセシリアは背筋がゾクゾクして、クリスの陰茎をきゅうきゅうと締め付けた。

 そうして、耳元で息を吹きかけながらクリスはセシリアに問いかけた。


「一体、どんな経験を積んできたのかな?アイツは俺よりヨかったの?」

「んんっ、クリスが、気持ちいいわっ、ぁんっ、…んっ」


 クリスは善がるセシリアを責めながら、最奥に亀頭をグリグリ押し込む。小刻みに奥を揺すりながらセシリアの乳首を指で摘み軽く抓った。


「ほんと酷いね。セシーは俺をどうしたいの?」

「やぁんっ、またっ、やだっ、クリス…、ああぁぁっ」


 セシリアは再び絶頂した。白い肌は赤らみ、全身にしっとりと汗をかいている。クリスは力が抜けてぐったりとしたセシリアをうつ伏せにして腰をつかみ、後ろから貫いた。


「クリスぅ、まだ、やぁ、まってっ…」

「セシー、前と後ろ、どっちが好き?」

「んんっ、どっちもっ、気持ちいっ、好きっ」

「そっか。後ろからも好きなんだ?」

「好きっ、クリス…、後ろも、好きぃ」


 セシリアが「好き」と言ってくれるのが嬉しくて、クリスは何度も尋ねる。普段は絶対言ってくれないし、今だってクリス自身を好きだと言っている訳では無い。それでも、クリスが関わる事を好きだと言ってもらえるだけでも嬉しくて、胸が締め付けられながらも聞かずにはいられないのだ。


 後ろから身体を密着させ、ゆっくりと奥を突きながら陰核をクニクニと優しく撫でる。

 クリスは首の後ろにじんわりと滲む汗を舐め取り、ちゅぅっと吸い付き跡を残していく。気付いたら、セシリアの背中には異常なほどの沢山の赤い鬱血痕が出来ていた。


 クリスは背中全体に跡をつけたら満足し、後ろから体重をかけセシリアに覆い被さった。既に体を支えるのも億劫なセシリアはそのままうつ伏せに倒れ、身動きが取れなくなる。


 陰茎を埋めたまま、今度はセシリアの乳首をクニクニと摘んで刺激しながらクリスは少しずつ腰を揺らした。


「セシー、また俺の子を産んでくれる?」

「んっ、授かれば、産むわ」

「毎日、沢山注ぐよ。沢山飲んで、いつもココを子種で満たしておこうか」

「んっ、クリス…」


 クリスは片方の手を移動し再び陰核を捏ね始めた。後ろから突かれながら乳首と陰核を攻められ、セシリアは快楽の渦に呑み込まれていった。


「はぁっ、セシー、限界だっ、もう注ぐねっ」

「あぁ…、クリス、も、ダメ…、はぁっ、…んっ」

「全部飲んでっ。俺のっ、全部、セシーの中に出すよっ」


 クリスは少しだけ強く突き上げ、ぐっと陰茎を押し込み最奥で勢いよく射精した。全てを子宮に直接注ぎ込むつもりでセシリアを後ろからぎゅっと抱きしめ固定した。


「んっ…」

「セシー、大好きだよ。俺だけ…。ここは、俺だけが満たすからね」

「ん…、クリス……」


 セシリアを抱きしめ、クリスは思わず呟く。


「セシー、…どうして、他の男と…したの…?」


 セシリアの目はトロンとして今にも眠ってしまいそうだった。クリスはセシリアを抱きしめたまま、じっとしていた。


「…私の……お兄様が、いなくなったから……」

「……」

「…だから、お兄様だけを愛した私も、消した…の…よ」

「……」


 そのままセシリアは気を失ったように眠ってしまった。何度も達して、体力も限界だったようだ。

 クリスは喉を詰まらせ、声にならない涙を流した。



 セシリアを壊したのはクリスだ。もう、昔と同じように真っ直ぐな目で愛してもらうことはないのだろう。それでも手放すことは出来ないし、何よりセシリアを愛しているのだ。


 クリスはセシリアから陰茎を抜き、そっと仰向けに寝かせた。そして、膣口から白濁がゆっくりと溢れ出てくるのをじっと眺めた。

 垂れた白濁を指で掬いセシリアの膣の中へ塗り込むように撫でながら指で中に戻そうとした。何度も押し込むがそれでも溢れ出すため、もう一度セシリアの中へ陰茎を埋めて、栓をした。

 手にべっとりと付いた白濁は、臍の下、子宮の辺りの皮膚に塗り込んだ。

 時々、意識の無いはずのセシリアから艶かしい吐息、感じている声が聞こえる中、クリスはゆっくりと抽送を続け、再び最奥で射精した。

 
 そして、今度は眠るセシリアの首筋、胸、腹、太腿に順に吸い付き、赤い跡を残した。全身が虫刺されのようで、色白のセシリアだととても目立ち、病気のようにも見えた。しかし、クリスはそんなセシリアを見てうっとりと穏やかな笑みを浮かべた。


「セシーは俺だけの妻…。二度と誰にも触れさせないから…」


 そっと口づけをして、クリスはセシリアを抱きしめて眠りについた。






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