結婚前に経験を積むのは悪い事じゃない

なこ

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その6 結婚生活の始まり

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 初夜を終え新婚生活が始まったが、翌日からセシリアに月のものが来てしまい、1週間の結婚休暇は1度も交わることなく終えてしまった。

 おまけに、月のものがきている間のセシリアの体調は悪く、夜も一人で眠りたいとの申し出にクリスは頷くしかなかった。


 ようやく1週間が過ぎ、仕事が始まったがクリスは可能な限りセシリアを抱いた。可愛くて愛しくて、待ちわびてやっと手に入れた大切なセシリア。

 おまけにセシリアの体は最高に気持ちがよく、今までの女と比較にならないほどの快楽を味わうことができた。元々そのつもりだったが、もうセシリア以外の女性を抱くつもりはない。本物を手に入れたのだから、彼女以外は必要ない。


 そうしてクリスはセシリアを愛し、毎日のように子種を注いだことで、3か月後にセシリアは懐妊した。

 妊娠中は「生まれてくる赤ちゃんのため」と言われ、クリスは一切の性的接触を拒まれた。だが、クリスは自分たちの愛の結晶のためと思うと我慢が出来たし、他の女に行こうという気持ちにもならなかった。


 時がたち、セシリアはとても愛らしい男の子、アランを出産した。セシリアにもクリスにも似たところがあり、クリスは感動のあまり涙を流して喜んだ。セシリアも無事に男児を生むことができホッとしていた。


 出産後半年ほどで医師の許可が下り、クリスは再びセシリアを毎晩のように抱くようになった。出産をしてもセシリアの中は変わらず狭く絡みつき、また自身との子を産んでくれた妻だと思うと愛しさは際限なく増し、クリスは夢中になって愛した。


 結婚後は当然だが一切の浮気をせず、セシリアだけを愛し続けている。


 今では、社交界デビューしてからの3年間、沢山の女を抱いてきた自分を信じられない気持ちで振り返ることがある。どうして我慢できなかったのか。

 今になって、不誠実な行動を繰り返した自身の行動を後悔している。しかし、後悔しても過去に戻ってやり直すことはできない。これから誠実に生きることで、セシリアへの愛を証明していこうと思うのだった。


 そうして過ごしていると、5カ月後には第2子の妊娠が分かり、再びクリスの禁欲生活が始まった。

 第1子アランの時と同じく他の女の事など考えることもなく、二人の愛の結晶を身籠るセシリアがとにかく愛しくて心配で、セシリアのことばかり考えて過ごしていた。そうして、子はセシリアのお腹の中で順調に育っていった。


「セシーは、男の子と女の子、どちらがいい?」

「男の子ですね」

「そう?俺は女の子でもいいなって思うよ。セシーとの子なら絶対可愛いよね」

「私は、男の子がいいです」

「セシー、後継を気にしてるの?アランがいるんだし、焦らなくても大丈夫だよ」

「…はい」


 セシリアが貴族社会で義務のように言われている「男子を2人産む」ことを気にしていたようでクリスは少し驚いた。

 クリスは、自分たちは愛し合っているのだし、このまま過ごしていればいずれ第3子、第4子くらいで男の子も生まれるのではないかとのんびりと考えていたから気にしていなかった。

 生まれなくてもアランがいるのだし、考えたくないが万が一の時は親戚筋から養子を迎えればいいのだ。


 セシリアは生れてくるのが待ち遠しいのか、穏やかな顔で膨らむ腹を撫でていた。そんな女神のような美しいセシリアを見て、クリスはこの上ない幸せを感じていた。



 出産予定日まで残すところ2ヶ月となり、お腹の大きなセシリアは夜会に出ることが難しいため、クリスは一人で夜会に訪れた。


「こんばんは」


 突然、クリスに話しかけてくる男がいた。


「こんばんは。あなたは…?」

「オートン侯爵家の次男でハリスと申します。夫人のセシリア様と学院時代生徒会で付き合いがありました」

「ああ、妻がお世話になりました」

「いえ、彼女のおかげでとても有意義な学生生活を送ることができましたので、お礼を言うのは私の方です」

「ところで、彼女はどちらに?」

「出産予定日が近いものでして、大事をとって欠席をしています」

「…では、2人目のお子様ですか?」

「ええ」

「男の子だといいですね」

「いえ、私はどちらでもいいと思っています。むしろ、彼女に似た女の子も欲しいなと思っているところでして…」


 クリスはセシリアのお腹を撫でる姿を思い出し、自然と笑みを浮かべた。ハリスは、そんなクリスを一瞬冷めた目で見つめたが、すぐに笑顔に戻って会話を続けた。


「そうですね。彼女に似たらどちらでも可愛いでしょうね」

「はい、生まれてくるのが待ち遠しいです」


 会話を終え、ハリスは「セシリア様に無事の出産をお祈りいたします、とお伝えください」と伝言を頼みクリスから離れた。

 ハリスの顔からは表情が消え、遠くに見えるクリスを冷めた目で見つめ続けた。その目の奥には憎しみが宿っていた。


 
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