集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き

文字の大きさ
上 下
156 / 171
獣人村たぶんスローライフ編

153話 夏希屋オープン準備(2)

しおりを挟む
 ワイヤレス蛍光灯で遊んでいた動物パーカー三姉妹は頑張って棚入れをしている。

 夏希はそれを見ながら4人が食事が出来るほどの木製の丸テーブルをカウンター前に設置して、その椅子に座って作業していた。

(あの蛍光灯、子供達が来たら同じことして遊びそうだな。厭な予感がする‥‥‥)

「よし、準備が出来た。おーい、そこのぶたとカエルとペンギン、こっちへ来てくれ」

「「「はーい」」」

(真冬、なんか幼女化してきてないか?)

 3人は「シュタタタ」と走って来て、空いている3つの椅子に座る。そして夏希が広げている色々な物を興味深く眺めていた。

 夏希が広げているものは、ポータブル電源に繋いだノートパソコンとプリンタとラミネーターだ。そして新たにスマホを取り出した。

「まずはアンナちゃんにするかな。さあ、ぶたさん、あそこ壁に立って可愛いポーズをしてくれるかな?」

 夏希が指示した場所には、緑色一色の壁紙が貼ってあった。

「これはなんなの?」

 アンナは不思議そうに絵を眺めている。そして落ち着くとスチール製のラックに向かって歩いて行き、取り付けてある蛍光灯を取り外し手に持って光らせる。そして足を大きく前後に開いて中腰になり、両手で右肩上部に構えた。

(その蛍光灯剣が気に入ったのね)

 夏希はその姿をスマホで撮影するとパソコンにデータを送り、加工ソフトで背景の合成と文字を追加入力する。

(剣を構えてる写真だから、夜空に輝く星の下とかでいいかな?)

 そして仕上がった写真をプリンタで印刷し、ラミネーターでラミネートする。

「ほい、これで完成。これは夏希屋会員証だ。カッコいいだろ?アンナちゃんは、会員番号1になるからね」

 アンナが受け取ったカードはカードゲームと同サイズのもので、全面に夜空に輝く星の中でアンナが光る剣を構えている姿が映し出されている。そして下の方に「会員番号1 アンナ」と表示されていた。

「これすごーーい!アンナが強いの!カッコいいの!素敵なの!」

 大興奮のアンナである。

「おお、アンナが凛々しく見えるのじゃ。それでこの会員証は何に使えるのじゃ?」

 夏希は自慢気に話す。

「何にも無いぞ?ただ、作ってみたかっただけだ。はははは!」

「はぁ、夏希の事だからそんな気がしたのじゃ。まぁ、子供達は喜ぶじゃろうな」

 スズランは呆れ顔で夏希を見ていた。そして何気に壁の方を見てみると、真冬が蛍光灯剣を2つ構えてポーズを決めていた。

「‥‥‥‥‥‥夏希、出番じゃ」

 夏希は苦笑いしながらスマホで撮影し、溢れんばかりのヒヨコ軍団が背景のラミネートカードを手渡した。

「ピヨピヨがいっぱい 素敵」

 真冬とアンナはお互いのカードを見せあいこして喜んでいる。(ふふふ、これは大ブームになる予感がするのだ)

 そしてアンナと真冬の楽しげな会話が終わり、何気に壁の方を見てしまう。

 そこには、まるで孔雀の羽のように蛍光灯剣を床に扇形に並べ、その中心に寝転がって「上から撮るのじゃ、上から」と夏希に指示を出しているスズランの姿があった。

「「…………」」

 それから2時間ほど経過し、今は夏希が飲み物を出して休憩中である。

「3人とも手伝ってくれてありがとう。商品も全て並べ終わったし、蛍光灯も取り付け出来た。あとは俺が準備するだけだから、今日はこれで終了だな」

 孔雀の羽が生えたペンギン姿のラミネートカードを見て、ニヤニヤしていたスズランが話し掛ける。

「夏希はあと何をするのじゃ?」

「よくぞ聞いてくれた。光る孔雀ペンギンよ。実は皆が準備してる間に、こんなものを作ってました」

 夏希が取り出したのは、会員証と同じサイズで、裏面全体と表面は1cm幅に銅と銀色に縁取りされたラミネートカードだった。
 そしてその表面には、デフォルメされた色々な動物と数字が描かれている。

「これは、お金の代わりをするカードだ。縁が銅色で1と書いてあるのが小銅貨で1ディール。10は銅貨で10ディールだ。銀色は銀貨で100ディールだな」

(ここで初めてアスディール帝国の貨幣の呼び名が出たのだ。因みに1ディールは10円だ。覚えておいてね)

「ほほお、それでどう使うのじゃ?」

「子供達は家の野菜を持ってきて、お菓子とかに交換してるだろ?その野菜が親の手伝いとかで駄賃として貰ったものならいいんだ。でも勝手に持ち出してる子供もいるはずだ」

 3人は「なるほど」と頷く。

「だからこのカードを親に売って、子供が手伝いや良いことをした時に渡してもらうんだ。それで子供達はこのカードで買い物をする。
 そうすれば、親も喜ぶし子供達の教育にもなる。いい案だと思わないか?」

「それなら制約に引っ掛からずに売ることが出来るな。良く考えたのじゃ。だったら全てそうすればいいのではないか?」

 スズランは夏希の中途半端なやり方に疑問を持った。

「それなんだが、この獣人村は自給自足が基本だから貨幣はあまり流通していない。だから子供の小遣い程度ならいいが、高額になってくると買えない人違が出てくるんだ。
 だから現状では、野菜との交換も継続するつもりだ。まずは試験運用して問題点を出しながら改善していこうと思う」

 夏希は3人がどうすればいいか話し合ってある姿を見て、嬉しく感じていた。

「この件は幹部会で一度話し合いをしてくるから、それまでは保留だな。あとは店番なんだよな。俺達は狩りとか行くだろ?それにしたい事もまだある。誰かいい人居ないかなぁ」

 そこでアンナが「はい!」と手を上げた。

「はい、アンナくん」と夏希が指差す。

「ランカおばちゃんがいいと思います。ルルちゃんが居るので働けないと言ってました。だから、ルルちゃんと一緒に店番したらいいと思います。どうですか?夏希先生」

「はい、大正解です。お利口さんです」

 夏希はアンナの頭をナデナデすると、アンナは「えへへ」と照れ笑いだ。

「よし、あとで聞きに言ってみるよ。アンナちゃん、ナイスアイデアだったよ」

(これで夏希屋オープンの目処がたったな)

 その日の夜は「オープンの目処がたったよ」記念として、ラグ家を招いて盛大な夕食を食べた夏希達であった。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...