上 下
142 / 171
獣人村たぶんスローライフ編

139話 夏希の我が家訪問(お邪魔します!)

しおりを挟む
 獣人村から豪華な家を貰った夏希。

 夏希はアンナに案内され、改めて我が家となる建物をじっくりと眺めた。

(それにしてもデカ過ぎないか?)

 両開きの引戸は建物の真ん中に位置してあり、2階のベランダが屋根の代わりをしている。少し離れて右手側に木製のお洒落なドアがある。(これが玄関だな)
 両開きの引戸を開けて中に入ると広さ20畳ほどの空間があった。まだ何も無い状態だ。
 右側に奥に伸びる長いカウンターがあり、そのカウンター側の壁の手前と奥にドアが1つずつある。あと左奥にもドアが1つあった。

「ここが店舗ね。中身は夏希さんの希望を聞いてからにしようと何も置いてないの。左奥とカウンター奥のドアは部屋に通じてるの。手前のドアは倉庫ね」

 夏希は手前と奥側に通路があるカウンター内に入り、手前のドアを開けると6畳ほどの空間があった。(在庫とか交換したものを保管する場所かな)

「じゃあ玄関に回って部屋で休憩しましょうか。ふふふ、驚きすぎて喉が渇いてるでしょ?」

 サーラは玄関の前まで来ると夏希に「さあ、どうぞ」と玄関前から横に移動して微笑んだ。

(夏希の自宅訪問!テンション上がるなぁ!)

「ガチャ」

「おお!新築だから木のいい匂いがするのじゃ!玄関入ってすぐにタイル張りの空間と腰掛けがあるな?ここで靴の汚れを落とすのじゃな。なかなか考えておるな。これはこの先の部屋を見るのが楽しみじゃ」

 夏希はスズランの行動に玄関前で固まっていた。

「お前という奴は……」

「私が2番 夏希は3番」

 真冬が夏希を避け、トコトコと歩いて中に入る。

「真冬まで……」

 これにはサーラも苦笑いだ。

「お前らちょっとそこで待て」

 夏希は急いでネットスキルを開きスリッパを購入し、タイル張りから木製に変わる通路に並べた。

「この家は土足禁止とする。靴はここで脱いでこのスリッパに履き替えてくれ。そのスリッパは各自専用となるからな。気に入ったモノがなければリクエストを受け付けるぞ。アンナちゃんはどれがいい?」

 夏希が出したスリッパは、ゆるふわ動物シリーズだ。デフォルメされたヒヨコ、カエル、ウサギなど、人数より多めに出して並べていた。

「わぁ!可愛い動物さん達でいっぱいなの!どれも可愛いからアンナは選べないの……」

「アンナちゃんは可愛いな。もう全部あげちゃう!」

「ドスッ!」「お前はアホか?ワレはこれじゃ」

 夏希の横腹を肘打ちしたスズランは、ヒヨコを選んで両手で持って嬉しそうに眺めていた。

 アンナはライオン、真冬はカエル、サーラさんはゴリラを選んでいた。皆嬉しそうにスリッパに履き替えて、真新しい廊下を歩いていく。

「ピヨピヨ、ガオー、ゲコゲコ、ウホウホ」

 皆が足を踏み出す度に色々な鳴き声がする。

「うわぁ、ライオンさん吠えてるよ!ガオーって」

「ゲコゲコ しゅき」

「「…………………」」

 賛否両論である。

「ははは、面白いかなと思って……因みに俺は九官鳥だ。このつぶらな瞳が可愛いね!」

 夏希は「可愛いね!」と言いながらスリッパに履き替えて我が家の廊下に第一歩目の右足を踏み入れた。

「おはよー」

「ん?」夏希は恐る恐る左足を踏み入れる。

「こんにちわ」

「「「…………………」」」

(なんで挨拶なんだよ!鳴き声にしろよ!)

「ははは、ものまね上手だね!」

 夏希は周りに挨拶を振り撒きながら歩いていく。そして後ろから動物大合唱団が付いてくる。

(これは本日限りだな)

 幅の広い廊下が奥まで伸びている。その間に右側に2つ、左側に1つのドアがある。右側の2つはトイレとお風呂場で左側は店舗に繋がる短い廊下であった。

「うわっ!お風呂場があるんですね。脱衣所もあるし洗面台もある。おお、3人がゆったり入れそうな大きなお風呂だ。これは楽しみだな」

「ふふふ、夏希さんはお風呂好きですものね」

 そして夏希が一番奥のドアを開けると横長の広い空間が現れた。手前からリビング、ダイニング、キッチンと続いている。このワンフロアには、ダイニングに綺麗な木目をした大きなテーブルが置いてあった。

「ここが1階の部屋ね。2階は右側にある階段を上がると寝室が5部屋あるの。凄いでしょ?家具はまだテーブルセットしか準備出来てないの。夏希さんの好みがあるでしょ?後で聞かせてね」

 サーラが皆をテーブルに呼び、座らせ話し出す。

「まだキッチンには何もないから家に戻ってお茶の準備をしてくるわ。それまで座っててね」

 サーラが戻ろうとしたところを夏希が止めた。

「サーラさん、俺が準備しますから座ってください。ついでにケーキでも食べましょう」

 夏希はネットスキルからプチケーキセットを購入し、ストックしてある紅茶、コーヒー、ジュースをテーブルに出していく。(飲み物はポット入りだよ)

 それぞれが好きな飲み物と気になるケーキを選んでいる。(俺は勿論コーヒーだ。ケーキはモンブラン)

 アンナちゃんは「可愛いね。美味しいね」と喜んで食べている。サーラさんも久し振りのケーキにご満悦だ。スズランはビールと言ってきたが無視だ。

(ふぅ、我が家でのコーヒータイム。いいねぇ)

「ピコン」

(うお!ビックリした。天使メールかよ)

 夏希はステータスを開きメールを確認する。

[ネットスキルがまた制約解除されたわよ。貴方は前回気付かなかったからメールしてあげたのよ。ありがたく思いなさい。次回からお知らせメールが送られるようにしたからね。因みに今回の解除条件は、「マイホームで優雅にケーキを食べてコーヒーを飲む」ことが条件だったの。良かったわね。
    優しい天使カルレスより]

(なんてピンポイントな解放条件なんだよ……後で詳しく確認しないとな。楽しみだ)

「まだ2階を見てないですが素敵な家ですね。落ち着いた雰囲気がして気に入りました。それで家具なんですが俺が準備しますね。もうこれ以上は貰えません」

「ふふふ、そう言うと思ったわ。でもまだベッドも何も無いわよ?確かあまり高価なモノは買えなかった筈よね?大丈夫なの?」

 夏希は急いでネットスキルを確認する。(お!MAXが5,000円から30,000円に上がって使用限度金額も50,000円から300,000円に上がっる。もうこれって絶対に天使がやらかしてるよな)

「ははは、なんとか大丈夫そうです」

「それじゃあ、私とアンナは宴の準備に行くから夕方までゆっくりと休んでね。準備が出来たらアンナが迎えに行くから。ケーキ美味しかったわ」

「夏希お兄ちゃん、ご馳走さまでした!」

 2人は仲良く手を繋いで宴の準備に向かった。

「スズラン、真冬、ネットスキルで買える単価と上限額が上がったから、今から身の回りのモノを揃えるぞ。これから打ち合わせだ!」

 3人は楽しく家具選びを始めるのであった。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

処理中です...