集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き

文字の大きさ
上 下
133 / 171
腕試し編ートバルの街ー

133話 夏希がニアにスズランとルンバ(2)

しおりを挟む
 自身の実力をある程度だが把握した夏希。

 獣人村に戻る準備を始めた夏希はニアに秘密を話そうと宿屋に呼びスズランを紹介した。

 ニアがスズランを見た第一声が幼女恋人疑惑であった事に「えっ?突っ込むとこソコなの?」と、夏希とスズランは唖然とするのであった。

「ニア、紹介するね。彼女はスズラ……」

「か、彼女……」

 ニアは彼女と言う言葉に過剰反応する。

「あ、いや、違うか……」

「違うのか?ワレは?」

 スズランが追い討ちを掛ける。ただ、その表情は「面白い事になりそうだ」と語っている。

「スズラン、お前まで……話が進まないから2人は突っ込み禁止だからな」

 夏希は特にスズランを睨んで黙らせる。

「ぶふっ、判ったのじゃ。早く終わらせて晩酌を始めるのじゃ」

 夏希はニアの方を向き話し始めた。

「コイツは見た目は幼女だが、もう1000年以上この世界で生きている。今は訳あって俺の影で生活している。ここの部分は詳しく話せないがスズランは悪いヤツでは無い。そして彼女でも無い。スズランは俺の大切な家族なんだ。一応……」

 夏希は最後辺りで声が小さくなる。

「ワレがスズランじゃ。宜しくなのじゃ。夏希とは縁があって一緒に生活してるのじゃ」

「あ、はい。こちらこそ宜しくお願いします。その、もしかしてペンギンさん?ですよね」

 スズランはニコニコしながら頷く。

「スズランの事はひとまず紹介だけて終わりだ。後で晩酌するからその時に話せばいい。それでこれから俺のことを話す。まず、俺は異世界人だ」

 夏希はニアの反応を見るが冷静に見える。

「ニアが知ってる真冬も同じ異世界人で、俺を含めて11人が一緒にこの世界にやって来た。ある者にスキルを与えられてな。そして真冬達10人は隣のバルバドス王国で俺だけがこの国に送られたんだ。

 俺は最初に訪れた獣人村で生活していたんだが、自分の実力を確かめる為にトバルの街に来た。そしてルンバ師匠に魔法の師事をしてもらい、他の冒険者との模擬戦である程度の実力を把握する事が出来た。だから2,3日中にこの街を出る。スズランと一緒にな」

 ニアはスズランを見る。そして夏希を見た。

「夏希さんは周りの人とどこか違う人だなと思っていました。異世界人の事はギルドで働いているので情報は知っています。だから納得出来ました」

 ニアの表情は納得した割には優れない。夏希はニアが続けて話そうとしたがそれを止め、話し始めた。

「あともう少しだけ説明させてくれ。俺は当初、実力を確認したら獣人村に戻り生活すると決めていた。だが今は違う。この街で信頼出来る仲間が出来た。そしてニアと出逢った事が決め手となった」

 夏希はニアの手を取り両手で優しく包む。

「俺はニアの事が好きなんだと思う。だから獣人村に戻っても、ニアの居るこの街に戻ってくる。だからなにも心配せずに待っていて欲しい」

「えっ?思うってなんですか?好きとは違うんですか?なんか中途半端なんですけど?もしかしてスズランさんの方が好きなんですか?私はオマケですか?」

 ニアは夏希の両手を最大握力で握り返し、中腰になって夏希に捲し立てるのであった。

(えっ?ここはニアが感動してホワホワな雰囲気になる場面じゃないの?俺なんか間違えた?)

 夏希はニアから拘束された紫色に変色してヒョロヒョロになった両手を取り戻し、脅えたビブラート全開の物凄く小っさい声で話し始める。

「あ、あの……ニアさんご機嫌が麗しく無いようですが、私がなにか粗相をしました?でしょうか?」

「ぶはっ!夏希、ワレは影に沈む。だからちゃんと気持ちを伝え直すのじゃ。ぐふふ、ニアも面白いキャラだったのじゃな。これからも楽しくなりそうじゃ」

 スズランは笑いながら影に沈んでいった。

 ニアは夏希をじっと見ている。ずっと。そして両手を握りしめ祈るように胸の前で止める。

「夏希さん、私はあなたが好きです。誰よりも」

 ニアはその言葉に全ての想いを込めた。

 夏希はその真剣なニアに一瞬困った顔をしたが、姿勢を正してニアを見つめる。

「俺はニアの事が好きだ。ニアの笑顔と優しさが俺の心を癒してくれる。ニアの全てを守りたい。離したくない。俺はニアの全てがいとおしい」

 ニアはその言葉に涙を流した。

「とても嬉しいです。私はあなたに逢えて良かった」

 二人は照れながらお互いを見つめ合っていた。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...