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腕試し編ートバルの街ー

106話 幕間 ニアの想い

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 私は冒険者ギルド受付嬢の猫族のニア。

 私はこのトバルの街で生まれた。

 母は私が6才の時に病気で亡くなったの。父親は知らない。冒険者だったが私が赤ちゃんの時に出て行ったと母から聞いた記憶があるわ。

 母が亡くなった後は街の北東にある孤児院にお世話になった。今もその孤児院に住んでいる。

 私は13才になった時にギルドの受付嬢見習いとして雇用してもらい、一生懸命働いた。そして15才で正規ギルド職員となったの。そして今は18才。

 この街はアスディール帝国に属している。

 帝国は人族主体の国で人種差別があるが、この街トバルは帝都から離れていてそこまで酷い差別は無い。

 そこまでは…

 冒険者ギルドの受付は5つ。そのうち獣人の受付は1つ。その1つの受付窓口に来るのは9割以上が獣人冒険者達で残りが獣人を人族より下と見る人族冒険者達なの。ただ酷い事をする冒険者は居ない。ただその目や口元や口調が普通と違うだけ…

 だから気にしなければ被害に合うことなど無い。

 でも私はその1つ1つの積み重ねで心が痛い。どうして同じ人なのに差別するのかと…

 私はそのギルドでの環境を少しでも回避したい為、人族冒険者に対応する時だけ言葉使いを変えたの。
 それが語尾に「にゃーん」を付ける事。何故か人族は猫族にこの言葉や似た言葉を語尾に付けたら喜ぶ人が多い。勿論、全ての人族が喜ぶ訳では無いわ。ただ、良い印象はあるみたい。

 そんなある日、私の前に1人の人族が現れたの。

 私はいつもの様にその目、口元を見ないで対応する。口調は防ぎようが無いので我慢する。そうして話し始めると何かが違う。

 その人族の話し方は柔らかな雰囲気がする。少しも嫌味が含まれていない事が判る。私は興味を持ってその人族の顔を見た。優しい目で私を見ていた。話す口元を見ると嫌らしい感じは全く無かった。

 ただ語尾に「にゃ」を付けてと言ってきた。そこは他の人族と一緒なのねと笑ったわ。

その人族は私に美味しいお菓子をくれたの。「にゃ」を付ける事を条件に。私はこの人族に興味を持った。だからその要望を受けることにしたの。

それからの私は楽しいの。心が暖かいの。

その人の行動や言動がとても面白い。

その人が優しい目でからかってくる。

その人が色々と気遣ってくれる。

その人が私にプレゼントしてくた。

私の心はあなたが来ると喜ぶの。

私の心はあなたが来ないと寂しがるの。

夏希さん。私はあなたのことを想ってるわ。

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