9 / 14
第二章 まぁ、そう簡単にはいかないようで
@3
しおりを挟む
「…………。」
二人の王子に送られて帰路へ着く
馬車に揺られ、流れてく景色をぼんやりと見た
ふと、先程までの記憶が甦る
今日は栄養の消耗が激しいが私や他人の命が掛かったことなのだ
思考を止めることは許されない
私が、彼らに問いかけたものは心理学を専攻していた友人に聞いた質問だ
サイコパスだか、狂気だか、詳しいことは分からなかったが、私はなんとなく彼らに私が受けた質問をしてみた
質問内容も至って普通で本当に他愛のない雑談の様なものだ
そして、彼らの返答の殆どが私の答えと一致
ごく普通の答えだった
いくつかの誤差はあったが彼らの態度や言葉遣いに違和感はなかったし、猟奇的な部分は見当たらない
アイラ王子は国を、民を想う優しく立派な第一王子
ランス王子は少し無愛想で荒い口調だけど、素直になれない幼い一面を持ち合わせた第二王子
人に関わる学部を専攻していなかったが、私にも彼らが一般的な人々と違う思考を持つとは思えない
まぁ、多少、考え方の違いはあるかもしれないが、許容範囲ではあった
「……つーことは」
彼らは、まだヤンデレではない?
私が知っているゲームでは既に彼らは狂っていて、狂気を思わせるセリフがちらほら混ざっていた
だが、今日の様子を見る限り、そんな一面は全くない
私が物語と違う行動に出たから、少しずつ彼らの性格にも変化が現れているのだろうか
……とにかく、今日は少し疲れた
植物とは違って、人は見るだけで全てを理解することは出来ない
話して、仲良くなって、その人の内側を知る
そこまでして、やっとその人を知れた、理解出来た、と言えるだろう
「足元にお気をつけください、お嬢様」
「……嗚呼、ありがとう」
メアリの手を取って、馬車を降りる
大分話し込んでしまった為か、外はすっかり暗くなっていた
この時代に、街灯なんて無くて足元はとても暗い
満月の夜ならばいいものの、月蝕なんて起こればそれこそ何も見えないだろう
「……あの、ライム様」
「?……なに?どうかしたのか?」
離れかけた手を彼女の手が引き止める
綺麗で少し角張った手は震え、何かに怖がっているようだ
彼女の顔は暗くてよく見えない
だが、微かに聞こえる息遣いに何かを言おうとしてる事はよく分かった
珍しいことだし、こんなストーリーもなかったから、彼女が何を伝えたいのかも分からない
静かに言葉を待つと、彼女はゆっくりも口を開いた
「な、なにか……私達に隠しておりませんか?」
「え……?」
一言目が彼女の唇から紡がれると、そのまま雪崩のように言葉が続く
最近、植物以外に心理学の本まで読み始めたこと
以前より、睡眠時間が減っていること
時折、とても疲れた表情をしていること
……正直、彼女らの言葉に驚いた
出来るだけ顔に出さないように
彼女らが見ないように、と配慮はしてきた
それでも彼女達は分かる、理解する
幼い頃から私を見てくれていた、彼女達には分かってしまう、理解してしまうのだ
「…………。」
喉から出かかった言葉を咄嗟に飲み込んだ
言えるわけがない
彼らが信用してくれていたとしても、そんな突拍子もないことを信じてもらえる確信もない
もし、信じてもらえたとして、彼らに何かをしてもらう訳にはいかないのだ
仮に、彼女らに手伝ってもらったとして、何がBAD ENDへのトリガーかわかってない以上、何が起こるか分からない
最悪、彼女らが命を落とす場合だって考えられる
それだけは絶対に避けなければならないのだ
だが、この状況をどう切り抜ければいいだろうか
彼女らを騙すのは至難の技だ
私の全てを殆ど知っているのだ、下手すれば私よりも私を知っている
そんな彼女らを出し抜ける自信は私にはない
「……ありがとう、メアリ。でも、ごめんね。お前達まで危険な目にあわせたくないんだ」
それは、素直な気持ちだった
私は、傍から見ればとんだお人好しなのだろう
友人を庇って死んだり、自分の立場を気にせず友を庇ったり
それでも、私は信念を貫いただけだ
どれだけ罵倒されても、間違っていると指をさされても高らかに告げよう
自分の考えを貫いて何が悪い、と
ずっと、どうするべきか、考えていた
彼らとの関係も、この貴族という地位も
「ぁ……」
「お嬢様!?」
ふらり、と体が傾いてメアリに体重を預ける
少し、疲れた
温かい、彼女の手
心配そうに私を抱えた執事
私を見つめる瞳はどれも心配の色を帯びていて、愛されているのだと自覚する
女性から向けられる憎悪とか、互いを蹴落とすとか、どうでもいい
私は───
二人の王子に送られて帰路へ着く
馬車に揺られ、流れてく景色をぼんやりと見た
ふと、先程までの記憶が甦る
今日は栄養の消耗が激しいが私や他人の命が掛かったことなのだ
思考を止めることは許されない
私が、彼らに問いかけたものは心理学を専攻していた友人に聞いた質問だ
サイコパスだか、狂気だか、詳しいことは分からなかったが、私はなんとなく彼らに私が受けた質問をしてみた
質問内容も至って普通で本当に他愛のない雑談の様なものだ
そして、彼らの返答の殆どが私の答えと一致
ごく普通の答えだった
いくつかの誤差はあったが彼らの態度や言葉遣いに違和感はなかったし、猟奇的な部分は見当たらない
アイラ王子は国を、民を想う優しく立派な第一王子
ランス王子は少し無愛想で荒い口調だけど、素直になれない幼い一面を持ち合わせた第二王子
人に関わる学部を専攻していなかったが、私にも彼らが一般的な人々と違う思考を持つとは思えない
まぁ、多少、考え方の違いはあるかもしれないが、許容範囲ではあった
「……つーことは」
彼らは、まだヤンデレではない?
私が知っているゲームでは既に彼らは狂っていて、狂気を思わせるセリフがちらほら混ざっていた
だが、今日の様子を見る限り、そんな一面は全くない
私が物語と違う行動に出たから、少しずつ彼らの性格にも変化が現れているのだろうか
……とにかく、今日は少し疲れた
植物とは違って、人は見るだけで全てを理解することは出来ない
話して、仲良くなって、その人の内側を知る
そこまでして、やっとその人を知れた、理解出来た、と言えるだろう
「足元にお気をつけください、お嬢様」
「……嗚呼、ありがとう」
メアリの手を取って、馬車を降りる
大分話し込んでしまった為か、外はすっかり暗くなっていた
この時代に、街灯なんて無くて足元はとても暗い
満月の夜ならばいいものの、月蝕なんて起こればそれこそ何も見えないだろう
「……あの、ライム様」
「?……なに?どうかしたのか?」
離れかけた手を彼女の手が引き止める
綺麗で少し角張った手は震え、何かに怖がっているようだ
彼女の顔は暗くてよく見えない
だが、微かに聞こえる息遣いに何かを言おうとしてる事はよく分かった
珍しいことだし、こんなストーリーもなかったから、彼女が何を伝えたいのかも分からない
静かに言葉を待つと、彼女はゆっくりも口を開いた
「な、なにか……私達に隠しておりませんか?」
「え……?」
一言目が彼女の唇から紡がれると、そのまま雪崩のように言葉が続く
最近、植物以外に心理学の本まで読み始めたこと
以前より、睡眠時間が減っていること
時折、とても疲れた表情をしていること
……正直、彼女らの言葉に驚いた
出来るだけ顔に出さないように
彼女らが見ないように、と配慮はしてきた
それでも彼女達は分かる、理解する
幼い頃から私を見てくれていた、彼女達には分かってしまう、理解してしまうのだ
「…………。」
喉から出かかった言葉を咄嗟に飲み込んだ
言えるわけがない
彼らが信用してくれていたとしても、そんな突拍子もないことを信じてもらえる確信もない
もし、信じてもらえたとして、彼らに何かをしてもらう訳にはいかないのだ
仮に、彼女らに手伝ってもらったとして、何がBAD ENDへのトリガーかわかってない以上、何が起こるか分からない
最悪、彼女らが命を落とす場合だって考えられる
それだけは絶対に避けなければならないのだ
だが、この状況をどう切り抜ければいいだろうか
彼女らを騙すのは至難の技だ
私の全てを殆ど知っているのだ、下手すれば私よりも私を知っている
そんな彼女らを出し抜ける自信は私にはない
「……ありがとう、メアリ。でも、ごめんね。お前達まで危険な目にあわせたくないんだ」
それは、素直な気持ちだった
私は、傍から見ればとんだお人好しなのだろう
友人を庇って死んだり、自分の立場を気にせず友を庇ったり
それでも、私は信念を貫いただけだ
どれだけ罵倒されても、間違っていると指をさされても高らかに告げよう
自分の考えを貫いて何が悪い、と
ずっと、どうするべきか、考えていた
彼らとの関係も、この貴族という地位も
「ぁ……」
「お嬢様!?」
ふらり、と体が傾いてメアリに体重を預ける
少し、疲れた
温かい、彼女の手
心配そうに私を抱えた執事
私を見つめる瞳はどれも心配の色を帯びていて、愛されているのだと自覚する
女性から向けられる憎悪とか、互いを蹴落とすとか、どうでもいい
私は───
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鬱展開乙女ゲームの悪役令嬢に転生したので推し全員幸せにする!
かのほ
恋愛
乙女ゲーム『アイノクサリ』
それは、悲しくも美しい物語だった。
嫉妬深く狂おしいほどの愛を注いでくる、悪役令嬢の婚約者ジャルー。
ジャルーの狂った愛に疲弊し、ヒロインの相手(攻略対象達)を奪おうとする悪役令嬢アイリス。
そのことに嫉妬したジャルーは、アイリスに関わる全ての者を陥れようとする。
そんな中、ヒロインは攻略対象との愛を深めながら、必死に奮闘。
そして、物語はハッピーエンドとバッドエンドに分岐する。
私はこの乙女ゲームが大好きだ。
世界観、キャラ、ストーリー、全てが最高で。
だけど、どのキャラのルートのエンドも悲惨な運命…。ハッピーエンドのルートですら、どこか悲しい。
じゃあもしアイリスが、諸悪の根源であるジャルーを、ジャルーの気持ちと同等かそれ以上に愛していたら…?
悪役令嬢アイリスとして転生し、乙ゲーヲタクでジャルー最推しだった記憶を取り戻した私は、覚悟を決める。
大好きな世界観、キャラ、ストーリー。
その全てを壊してでも、推し全員、幸せにする!!!
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
乙ゲーの主人公に転生したけどヤンデレが怖いので全力で攻略を回避する
流子
恋愛
高校が舞台の乙女ゲームの主人公(ヒロイン)として転生した女の子が、攻略対象であるヤンデレたちに殺されないよう頑張ろうとする話しです。
ヒロインのデフォルト名は闇出レミだけど、主人公自体はネームレス。
ゲームの舞台は高校だけど、転生前の主人公の年齢は大学生くらい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる