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第一章 悪魔との契り
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綺麗な弧を描いて、ソレは丘の上へと消えた。
大丈夫、あるはずだ。
無ければ、うん。そうだなぁ…。
また、やり直す羽目になってしまうのかな。
「さぁ、十秒経ったぞ?結局、何をしていたのか知らねぇが、無駄だったみたいだなぁ?」
「…………いいえ?そうでも無いみたい。」
ぱん、ぱん、と大きな手が土を叩く。
その都度、乾いた土がそこらに舞って、私は慌てて目を覆う。
勝利を確信しているのか、或いは元からソレに気づいていなかったからか、彼はとても嬉しそうだ。
そんなに、人間を嫁にするのは嬉しいことなのだろうか。
───まぁ、無理ですけど。
微かに、鼓膜を揺らした音。
水分が蒸発する音。
ぶくぶくと、ソレが沈んでいく音。
嗚呼、ほら、四肢の炎が縮んで……。
「あ"、っ!?てめ、っ…なに、を!」
「?……なにをって…気づきません?問題です、イフリート。貴方の本体は何処でしょう。」
私はにこりと笑う。
両手を広げて見せるが、私の手にその炎はない。
ただ、少し焦げ付いた左手があるだけで。
イフリートはぎょっとして私を捕えることも忘れて丘を登った。
そこに広がっているのは多分大きな湖。
下から投げたのだ。
彼の本体が宿った石を。
イフリートは血眼になって石を探す。
あと十秒ですよ、なんて私は呑気に言った。
そして、天を仰いでから勝ちを確信する。
「!!……ふぅ…ふぅ…し、死ぬかと思った。こんのガキ!!」
「あら、もう見つけてしまわれたの?残念だわ、とても、残念。」
わざとらしく、私は悲しんでみせた。
だが、もう私に為す術はない。
渾身の力を込めて湖へ投げ入れた石も、彼は見つけてしまった。
そして、彼も、もう私に油断はしない。
負ける要因は全て潰す。
そして、嫁として、女として、自分という存在を刻みつける。
既にこの男の頭の中はそれでいっぱいだった。
何故わかるのか?
彼は単純だ。目を見ればすぐに思考なんて分かる。
ぐっ、と土へ足を踏み込ませて、その目が狙いを私に定めた。
びくり、と震えた。
だが、動かない。
恐怖で動けない?
違う
一瞬のチャンスを狙ってる?
違う。
私が動いてしまえばソレの狙いも逸れるから。
風を切る、人間の目には追えない瞬間。
目の前で散った火花を、たしかに見た。
白銀色の髪。
青く美しい瞳が微かに安堵の色を浮かべ、体を舐める。
そして、私も安堵してしまってへたりとその場へ座り込む。
だが、瞳は目の前で呆然とする悪魔へと向けた。
「……三十秒、経ちましたわよ?イフリート。」
「っ……はは!…大したお嬢さんだなぁ」
それはたしかに、悪魔が私を認めた瞬間だった。
大丈夫、あるはずだ。
無ければ、うん。そうだなぁ…。
また、やり直す羽目になってしまうのかな。
「さぁ、十秒経ったぞ?結局、何をしていたのか知らねぇが、無駄だったみたいだなぁ?」
「…………いいえ?そうでも無いみたい。」
ぱん、ぱん、と大きな手が土を叩く。
その都度、乾いた土がそこらに舞って、私は慌てて目を覆う。
勝利を確信しているのか、或いは元からソレに気づいていなかったからか、彼はとても嬉しそうだ。
そんなに、人間を嫁にするのは嬉しいことなのだろうか。
───まぁ、無理ですけど。
微かに、鼓膜を揺らした音。
水分が蒸発する音。
ぶくぶくと、ソレが沈んでいく音。
嗚呼、ほら、四肢の炎が縮んで……。
「あ"、っ!?てめ、っ…なに、を!」
「?……なにをって…気づきません?問題です、イフリート。貴方の本体は何処でしょう。」
私はにこりと笑う。
両手を広げて見せるが、私の手にその炎はない。
ただ、少し焦げ付いた左手があるだけで。
イフリートはぎょっとして私を捕えることも忘れて丘を登った。
そこに広がっているのは多分大きな湖。
下から投げたのだ。
彼の本体が宿った石を。
イフリートは血眼になって石を探す。
あと十秒ですよ、なんて私は呑気に言った。
そして、天を仰いでから勝ちを確信する。
「!!……ふぅ…ふぅ…し、死ぬかと思った。こんのガキ!!」
「あら、もう見つけてしまわれたの?残念だわ、とても、残念。」
わざとらしく、私は悲しんでみせた。
だが、もう私に為す術はない。
渾身の力を込めて湖へ投げ入れた石も、彼は見つけてしまった。
そして、彼も、もう私に油断はしない。
負ける要因は全て潰す。
そして、嫁として、女として、自分という存在を刻みつける。
既にこの男の頭の中はそれでいっぱいだった。
何故わかるのか?
彼は単純だ。目を見ればすぐに思考なんて分かる。
ぐっ、と土へ足を踏み込ませて、その目が狙いを私に定めた。
びくり、と震えた。
だが、動かない。
恐怖で動けない?
違う
一瞬のチャンスを狙ってる?
違う。
私が動いてしまえばソレの狙いも逸れるから。
風を切る、人間の目には追えない瞬間。
目の前で散った火花を、たしかに見た。
白銀色の髪。
青く美しい瞳が微かに安堵の色を浮かべ、体を舐める。
そして、私も安堵してしまってへたりとその場へ座り込む。
だが、瞳は目の前で呆然とする悪魔へと向けた。
「……三十秒、経ちましたわよ?イフリート。」
「っ……はは!…大したお嬢さんだなぁ」
それはたしかに、悪魔が私を認めた瞬間だった。
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