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秋恋
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人恋しい季節がやってきた。
僕は今、クラスメイトの男の子を狙っている。
彼を本気で好きなのかと聞かれたら、恐らく首をひねるだろう。しかし水泳大会で偶然見かけた時、どうしても手に入れたい、そう思ったんだ。
彼の目に止まるためにも優勝したかったが、それは叶わなかった。ひとりの男に阻まれたわけだが、それがなんとあの男の子の先輩だった。
その事実を知った僕は、両親に頼み込んで彼らの通う学校へ転入した。あの男を打ち破り、彼を手に入れる。そうしてしばらく楽しめたらそれでいい。
引っ越し先はマンションの最上階。ワンフロアすべてが僕らの住処だ。
決めたのは両親だが、僕も30階からの眺めはなかなか気に入っている。前の家は広くはあっても、高さはなかったからね。
学校へ行くのに少々早起きする必要はあるが、概ね満足だ。
しかし、彼のほうはそうもいかない。どうやら恋仲の相手がいるらしく、告白を断られてしまった。
やはり僕の直感は正しかったのだ。彼が似合いもしないライオンのキーホルダーを大事そうに扱っている姿を見て、きっと誰かからの贈り物だろうと思った。
親兄弟友人の線もあり得るが、キーホルダーに触れた時の顔つきからしてその程度の相手ではないとわかった。だからこそ、こうして今僕の手元にあるのだ。
壊してやってもいいが、いつか何かの役に立つかもしれない。そう思って鞄に入れたまま放置していたら、うっかり彼に見られてしまった。しかし彼は人が良いので、僕の適当な言い訳をすっかり信じてくれた。
ちょっと残念そうな、悲しそうな彼の表情が垣間見えて、体の奥が疼いたのは言うまでもない。
とにかく僕はますます彼が欲しくなった。
「煌時くん!」
「へっ?」
彼が驚いて振り返る。
「って呼んでもいい? 僕のことは海でいいよ」
「い、いいけど」
戸惑う表情も可愛らしい。
「僕は藤江くんのほうが落ち着くかな」
「ふふ、可愛いね」
「えっ、いや……」
困った顔でうつむいてしまった。
秋に始まった恋は長続きするという。
彼が僕の猛攻にどこまで耐えられるか、楽しみだ。
テーマ「秋恋」
僕は今、クラスメイトの男の子を狙っている。
彼を本気で好きなのかと聞かれたら、恐らく首をひねるだろう。しかし水泳大会で偶然見かけた時、どうしても手に入れたい、そう思ったんだ。
彼の目に止まるためにも優勝したかったが、それは叶わなかった。ひとりの男に阻まれたわけだが、それがなんとあの男の子の先輩だった。
その事実を知った僕は、両親に頼み込んで彼らの通う学校へ転入した。あの男を打ち破り、彼を手に入れる。そうしてしばらく楽しめたらそれでいい。
引っ越し先はマンションの最上階。ワンフロアすべてが僕らの住処だ。
決めたのは両親だが、僕も30階からの眺めはなかなか気に入っている。前の家は広くはあっても、高さはなかったからね。
学校へ行くのに少々早起きする必要はあるが、概ね満足だ。
しかし、彼のほうはそうもいかない。どうやら恋仲の相手がいるらしく、告白を断られてしまった。
やはり僕の直感は正しかったのだ。彼が似合いもしないライオンのキーホルダーを大事そうに扱っている姿を見て、きっと誰かからの贈り物だろうと思った。
親兄弟友人の線もあり得るが、キーホルダーに触れた時の顔つきからしてその程度の相手ではないとわかった。だからこそ、こうして今僕の手元にあるのだ。
壊してやってもいいが、いつか何かの役に立つかもしれない。そう思って鞄に入れたまま放置していたら、うっかり彼に見られてしまった。しかし彼は人が良いので、僕の適当な言い訳をすっかり信じてくれた。
ちょっと残念そうな、悲しそうな彼の表情が垣間見えて、体の奥が疼いたのは言うまでもない。
とにかく僕はますます彼が欲しくなった。
「煌時くん!」
「へっ?」
彼が驚いて振り返る。
「って呼んでもいい? 僕のことは海でいいよ」
「い、いいけど」
戸惑う表情も可愛らしい。
「僕は藤江くんのほうが落ち着くかな」
「ふふ、可愛いね」
「えっ、いや……」
困った顔でうつむいてしまった。
秋に始まった恋は長続きするという。
彼が僕の猛攻にどこまで耐えられるか、楽しみだ。
テーマ「秋恋」
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