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3章 候補者は4人

4 異世界コンペの提案

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 丹下景勝氏は一通り失踪期間になにがあったかを物語ると俯き肩を震わせる。妹の灯里嬢も涙を流して兄の肩を抱いた。

「丹下景勝さん。異世界総合コンサルタントとして伺います。あなたはその異世界へどうしても行きたいのですか?」

渡界人は目の前の美しい兄弟愛のドラマなど微塵も目に入らないかのような極めて事務的な口調で言った。
この態度が非常に誤解を受けやすいのだが渡自身は人助けを感情的・情緒的なものだとは捉えていない。むしろ人が過酷な自然を生き抜くための理路整然たる知恵や技術だと信じて疑わない人物なのである。

「勿論です。俺はもうこの世界でやり直すことは出来ない。なら異世界でもなんでも全く別の所で生きていく覚悟で臨んだのです。それを・・・」

この場合も冷たい態度にキッとなった景勝氏は恐らくエターナルフレイム時代そうだったのだろう、恐るべき憤怒の表情で渡を睨み返していた。

「その覚悟がおありならどうです、僕があなたをその異世界へと送る手助けをするといったなら?」

「何ですって?あなたが?しかし既に落選したものを再度応募しても同じでは?」

「切り口を変えるのですよ。恐らく向こうも非常に厳しい選考基準を設けているようですからまだ決定してはいないでしょう」

「でも・・・・」

「僕は成功報酬として料金を頂きます。駄目ならお代はいりません」

「それではお願いします」

「私からもお願いします」

兄妹は揃って頭を下げる。

「分かりました。さし当って少し情報を収集したいと思います。1~2日程かかるでしょうからそれまで滅多な事をなさらない様にお願いします」

では、というと渡は部屋を出て行ってしまった。だがすぐに戻って来て

「ああ、肝心な事を忘れていた。君、3人でね、これで退院祝いに美味しい物でも食べてきたまえ。嫌な事を忘れるにはとにかくおいしい料理で腹を満たすのが一番だからね」

そう言うと渡は私にブ厚い封筒を差し出した。

「この金の分食べたら皆腹がはちきれてしまうぞ」

「当然、残りは返してくれよ。着服無用と願いたいね」

そう言うと渡は再び病室を出て行った。


私達3人が豪遊している間渡が何をしていたのかは彼が言う通り2日の間考える事が無かった。それほど楽しい思い出を私と丹下兄妹は作る事が出来たのだがそんな事に読者諸兄は関心を持つまいから割愛する。

約束の日私は渡に呼び出され彼の部屋へ行くと既に丹下兄妹が部屋のテーブルに渡と向き合って座っていた。

「よう、来たな。では全員揃ったようですし、僕がこの2日何をしていたのかをお話しして今後の選考対策をしていきたいと思います」

「よろしくお願いします、渡さん」

「私は景勝さん、あなたを連れて行った集団の所に行って連中が何を目的としているかを知りました。その上で私は彼ら正確には彼らのオブザーバーにいわゆる異世界コンペの開催を提案したのです」

「異世界コンペだって?」

「そうとも。これこそ客観的に必要な人材を見極める手段だと彼に説いたんだよ」

「受け入れたのか?」

私は真龍警部が苦虫を嚙み潰したような顔でその提案を飲んだことが容易に想像できた。

同時に彼が何の目的で関わっているのかも俄然興味が湧いて来た。
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