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2章 渡界人の日報
2-6 魔獣売ります⑧ 罠
しおりを挟む「これはなんだ?須藤さんは知っているのか?」
私は渡から渡された紙きれを見て驚いた。それはあのコボルト・コロが居なくなったので見つけたら連絡して欲しいというチラシだった。
「勿論。彼女にお願いして作ってもらったのだからね。これを町中に貼って様子を見るのだ。ここには好物という形でコロの食べる物も書いてある。僕と連中はあの世界のコボルトの習性を熟知しているからね。つまりコボルトのいそうな場所で怪し気な行動を取っている者が居ればそいつが当事者か、そうでなくとも連中に繋がる何者かを探し当てる事が出来るという訳だ」
「直接店に乗り込むって方が手っ取り早くないか?」
「それは手を尽くした後の最後の手段だよ。現状状況証拠のみだからこれで連中を黙らせるのは難しい。問題の魔獣もペットショップ店内ではなく他の場所、例えば収納魔法の応用で異空間にモンスターを飼育しているとなればそれを見つけ出すのは難しいだろう」
「そうか。墓石なんかはその檻のカモフラージュで実際にはその中の異空間にモンスターがいるってことか」
「その通り。そしてそれを破る手段を現状僕らは持っていない。だからこの方法を使うんだ」
そして渡は同じ紙の束を机にドン、と置く。
「さあ、手分けしてこの紙を街中の張ろうじゃないか」
そう言うと彼は紙束の半分を持ってさっさと外へ出て行ってしまった。
私は写真とはいえまたこの生物を見るのは気が進まなかった。とは言え本物はもうこの世界には居ない事は分かっているのだからその点では気が楽だったが。
こうして私達は街中の電柱やら掲示板、商店の人にお願いして探し犬(犬という表現が適切かどうかはこの際置いて置く)の張り紙を張らせてもらった。道行く人々や商店の事業者もこの生物の気味悪さに顔を引きつらせて異口同音に最近の若者の流行は分からん、と口をそろえて言った。
「本当にこれに釣られるかな?」
渡された紙をあらかた張り終えて渡の部屋に戻ってきた私は後から帰ってきた渡を労いつつそんな不安を口にした。
「だが、連中もあのコボルトの去就までは知らないはずだ。至る所に監視の目を光らせているのでなければね。ところであの店の店員について少しわかった事があったよ。ペットショップ近くの交番の巡査が教えてくれたのだがね」
そう前置きすると
「あの店は従業員が店主を含めて2人しかいないのにその5倍はありそうなくらいの肉を買い込んだり夜な夜な怪光が見えたりするそうだ。その2人というのが片方が外国人でどこの国の出身ともいえない、何とも不思議な感じのする浅黒い肌をした男ともう一人は明らかに白人系だが、日本在住が長そうな人物らしい。彼、つまりその人物は男であるのだが万事控えめで礼儀正しく仕事ぶりもキッチリしている上に日本語も達者だという話だったよ」
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