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2章 渡界人の日報
2-6 魔獣売ります⑦犯人の目的はなにか?
しおりを挟む翌日カーテンの裂け目からの差し込む光で目が覚めた。いつの間にか寝ていたようだ。
「そうだ。昨日の事はどうなったろう?」
私は急いで隣室へを訪ねるとリビングで難しい顔をしてソーメンをすすっている渡が出迎えた。
「どうした?その顔は取り逃がしたのか?」
「取り逃がすも何も奴は現れなかったんだ。おかげで寝ずの番をする羽目になるし、ワイザリウシアのブリング神と今後の対応を話さなければならなかった。流石にくたびれたよ」
「そうか。じゃあ仮眠の邪魔になるから僕は一度帰るよ」
「いや、これまでの考えを整理してから寝たいのでね。そうすれば余計な事を考えずに眠りに集中できる。今から話しても大丈夫かい?」
私が了承すると渡は椅子に深く腰掛けて話始めた。
「まず、僕はこの依頼を若草さんと須藤女史からもらった時から2通りの考えを持っていた。ワイザリウシアから来た何者かが何かの目的でペットショップを開き、魔獣を売りつけている。ここまでは大丈夫かい?」
私は頷く。
「まず最初に浮かんだのが彼らは純粋に金儲けの為にこれをやっている、それも悪意なくね。ブリング神によると実際向こうの世界ではコボルトやスライムといったメジャーな魔獣に芸を仕込んで日銭を稼ぐ者はそう珍しくないらしい」
「こっちではそうじゃない」
「その通りだ。誰かそういう芸人の中に頭のいい奴がいて、こちらの世界では存在しない魔獣を売りさばく事を思いついた。ただ大っぴらに営業してこちらの世界の同業者の恨みを買わない様に偽装したものの、肝心の金銭的価値が分からなかったので安値で売る事になってしまった。これが第一の仮説だ」
渡は右手の人差し指を立てる。
「実際に小学生の小遣いで買える額で売っているという点からそれが伺える。ところが」
渡は中指を立ててVサインをつくる。
「もう1つの仮説も立てられるんだ。こちらは何らかの実験目的でわざとはした金で品種改良した魔獣のテストをしているというものだ。向こうの世界ではコボルトやスライムなんかありふれているから元手は殆どかからない」
「何の為に?」
「一番考えたくない最悪の目的はこちらで品種改良した生物をワイザリウシアへ逆輸入する事だ。つまり復讐だよ」
「待てよ!それじゃあ小学校にいたあのスライムはまさか・・・!」
「わざと逃がした可能性がある。別の環境でどの位順応するかとかの実験の為にね」
「武田先生が逃がしたあの謎の人物がそうなんだろうか?」
「顔をはっきり覚えていなかったのが悔やまれるが、いまさら言っても仕方がない。そしてこの仮説が正しい場合、僕らの相手となる人物はとにかく用心深い切れ者という事になる。なにせ自身の顔がバレる事を恐れてスライムの回収に来なかったんだからな。それどころか僕らの捕り物を見ていたかもしれない」
「まずいじゃないか!これではその男を捕まえられない」
「一応手はまだある。その為にも君にも手伝って欲しい」
そう言うと渡は1枚の紙きれを取り出した。
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