異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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2章 渡界人の日報

2-6魔獣売ります④スライム捕獲作戦①

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 その後若草先生が帰ると渡は須藤女史のコボルト(コロという日常極まりない名前を私はあの生物に対してどうしても使う事は出来ない)をワイザリウシアへ送り返す為女神エンディローナへコンタクトを取った。傍には須藤女史が渡の仕事ぶりを目を輝かせながら追っていた。須藤女史はコロが帰るところまで見届けるのは依頼人の役割だと言って聞かなかったのだ。

例の鏡に映し出されたワイザリウシアの女神エンディローナの姿は銀髪の天使そのものの神々しい姿だった。
彼女は魔物を見ると一瞬汚物を見るような目で顔を歪めたが、私達がいる事を気にしてか天使の笑みをすぐに浮かべた。

「この1匹だけという訳ではなさそうですね?」

「そうです。貴女の世界の動物達がなぜかこちらの世界で売られているのです」

女神と渡はお互いに探るような視線を交わす。

「分かっているのは?」

「私が依頼されたのはこれを除いて1件だけです。恐らくスライムかと。最近モンスター狩りが激化したとかそんな噂を耳にしませんでしたか?」

女神は首を振る。

「そういう話は聞きませんね。コボルトもスライムも数が多い生き物です。つまり討伐依頼も各地で毎日の様に出されている。そんな生き物が10匹や20匹いなくなったところで喜びこそすれ不審がる者はいないでしょう。この私を含めてね」

女神は冷徹に言い放った。

「魔獣を管理できるような職業がありましたよね。魔獣使いでこちらに転移してきた人物はいますか?」
「それは私の管轄ではないですね。私は別世界からこちらに来る者の世話はしますが、その逆はプロングの管轄です。彼に聞いてみましょう」

「よろしくお願いします。私達はこれからスライムを捕獲する準備をしなければなりませんので」

「ではこれをお使いなさい。スライムを鎮静化とおびき寄せる為の粉末です。出来るだけ体の中心に向かって振りかけるのですよ」

女神がそう言うと小さな紙袋が背後のテーブルの上に音も無く落ちてきた。

「重ね重ねありがとうございます」

「ではよろしくお願いしますよ」

そう言うと箱の中のコボルトは煙の様に消え去り、次いで女神も鏡から姿を消した。

コボルトが無事に帰ったのを見届けた須藤女史を帰った頃には時間は既に夜の6時を過ぎていた。
私達は急いで捕獲の為の準備をすると夕飯を近くのファミレスで済ませるとスライムが潜んでいるK小学校へと向かった。

「もうどこかへ行ってしまったんじゃないのか」

「いや、話では虹色に発光していたと言っていた。あれはスライムが自分の縄張りを示す一種のマーキングなんだ。だから今夜も現れるさ」

その自信たっぷりの説明に私も納得するしかなかった。
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