73 / 96
2章 渡界人の日報
2-6魔獣売ります④スライム捕獲作戦①
しおりを挟むその後若草先生が帰ると渡は須藤女史のコボルト(コロという日常極まりない名前を私はあの生物に対してどうしても使う事は出来ない)をワイザリウシアへ送り返す為女神エンディローナへコンタクトを取った。傍には須藤女史が渡の仕事ぶりを目を輝かせながら追っていた。須藤女史はコロが帰るところまで見届けるのは依頼人の役割だと言って聞かなかったのだ。
例の鏡に映し出されたワイザリウシアの女神エンディローナの姿は銀髪の天使そのものの神々しい姿だった。
彼女は魔物を見ると一瞬汚物を見るような目で顔を歪めたが、私達がいる事を気にしてか天使の笑みをすぐに浮かべた。
「この1匹だけという訳ではなさそうですね?」
「そうです。貴女の世界の動物達がなぜかこちらの世界で売られているのです」
女神と渡はお互いに探るような視線を交わす。
「分かっているのは?」
「私が依頼されたのはこれを除いて1件だけです。恐らくスライムかと。最近モンスター狩りが激化したとかそんな噂を耳にしませんでしたか?」
女神は首を振る。
「そういう話は聞きませんね。コボルトもスライムも数が多い生き物です。つまり討伐依頼も各地で毎日の様に出されている。そんな生き物が10匹や20匹いなくなったところで喜びこそすれ不審がる者はいないでしょう。この私を含めてね」
女神は冷徹に言い放った。
「魔獣を管理できるような職業がありましたよね。魔獣使いでこちらに転移してきた人物はいますか?」
「それは私の管轄ではないですね。私は別世界からこちらに来る者の世話はしますが、その逆はプロングの管轄です。彼に聞いてみましょう」
「よろしくお願いします。私達はこれからスライムを捕獲する準備をしなければなりませんので」
「ではこれをお使いなさい。スライムを鎮静化とおびき寄せる為の粉末です。出来るだけ体の中心に向かって振りかけるのですよ」
女神がそう言うと小さな紙袋が背後のテーブルの上に音も無く落ちてきた。
「重ね重ねありがとうございます」
「ではよろしくお願いしますよ」
そう言うと箱の中のコボルトは煙の様に消え去り、次いで女神も鏡から姿を消した。
コボルトが無事に帰ったのを見届けた須藤女史を帰った頃には時間は既に夜の6時を過ぎていた。
私達は急いで捕獲の為の準備をすると夕飯を近くのファミレスで済ませるとスライムが潜んでいるK小学校へと向かった。
「もうどこかへ行ってしまったんじゃないのか」
「いや、話では虹色に発光していたと言っていた。あれはスライムが自分の縄張りを示す一種のマーキングなんだ。だから今夜も現れるさ」
その自信たっぷりの説明に私も納得するしかなかった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
赤き翼の万能屋―万能少女と出来損ない死霊術師の共同生活―
文海マヤ
ファンタジー
「代わりのない物なんてない。この世は代替品と上位互換に溢れてる」
万能屋。
猫探しから家の掃除や店番、果ては護衛や汚れ仕事まで、あらゆるものの代わりとなることを生業とするもの。
そして、その中でも最強と名高い一人――万能屋【赤翼】リタ・ランプシェード。
生家を焼かれた死霊術師、ジェイ・スペクターは、そんな彼女の下を訪ね、こう依頼する。
「今月いっぱい――陸の月が終わるまででいいんだ。僕のことを、守ってはくれないだろうか」
そうして始まる、二人の奇妙な共同生活。
出来損ないの死霊術師と最強の万能屋が繰り広げる、本格ファンタジー。
なろうに先行投稿中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
防御に全振りの異世界ゲーム
arice
ファンタジー
突如として降り注いだ隕石により、主人公、涼宮 凛の日常は非日常へと変わった。
妹・沙羅と逃げようとするが頭上から隕石が降り注ぐ、死を覚悟した凛だったが衝撃が襲って来ないことに疑問を感じ周りを見渡すと時間が止まっていた。
不思議そうにしている凛の前に天使・サリエルが舞い降り凛に異世界ゲームに参加しないかと言う提案をする。
凛は、妹を救う為この命がけのゲーム異世界ゲームに参戦する事を決意するのだった。
*なんか寂しいので表紙付けときます
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる