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2章 渡界人の日報
2-5 悪人転生①降ってわいた災難
しおりを挟む異世界総合コンサルタント
我が隣人が生業とする常識外れな職業である。
類は友を呼ぶではないがそうした職業についてくるのはやはり常識外れな人々や出来事である。
私自身彼と仕事を共にして危険な目に遭った事は1度や2度ではない。物理的な危険という点では今回執筆する話に勝るものも無いだろうと思うのだ。
『暇でも来るな。こちらが良いと言うまで来るな』
アパートの隣人渡界人からのそのメールが来たのは連夜勤から解放され、アパートの自室の布団の中で半覚醒状態の何ともいえない心地いい浮遊感に微睡んでいた時だった。
過重労働で頭の働かない状態でもそれが異常事態だと分かる。
この時期既に渡とそれなりに長い付き合いだったが彼がメールを寄こす事など片手で数えられる程しかなかったからだ。
彼と彼に関連するその職業の性質について考え始めた私の頭は眠りから覚め、寝すぎた体によく起こるあの憂鬱なダルさを引き剥がすように私は、部屋を這いずって壁に耳を付け隣の部屋の様子を窺ってみる。
当然物音は何も聞こえない。私は後で詳しく説明してくれるようメールに返信すると空腹を満たす為にコンビニへと向かった。
「何かあったな」
気に入った物が無く、いくつかの弁当屋やコンビニをはしごして部屋に戻り、勝ってきたコンビニ弁当を食べながらネットサーフィンをしていた私は渡から何の連絡もない事に不信を抱き始めていた。
既にメールの返信をしてから2時間になろうとしていた。渡という男はこう言った事は早い男だった。
ネットニュースには昨夜発生したこの近辺でコンビニ強盗が発生し犯人は未だ逃走中との記事が出ていた。
私が疲れ切っていたのはこの記事のせいでもある。被害を受けたのと同じバイトしているせいで心の半分はビクビクしながら過ごしていたが、もう半分は渡と組んでの仕事でいくつかの危険を乗り切って来た身としては今更コンビニ強盗くらいなんて事はないさ、という思いで自分を鼓舞していたのだ。
その後そんな奴とは出くわさず今日の夜を無事に迎えられたという安心感と送られたメールの発信時刻から渡が思いのほか仕事に難航しているなら何か差し入れでも持って行ってやろうというお節介から私はメールの文面を忘れて彼の部屋のインターホンを鳴らした。
3度鳴らしても出て来ない。ノブを回すと不用心な事に鍵が開いており、ドアを少し開くとその隙間から毛むくじゃらの手が伸びてきて私を部屋の中へと引きずり込んだ。
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