異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

文字の大きさ
上 下
49 / 98
2章 渡界人の日報

2-4 地上最強の男① チート野郎の帰還

しおりを挟む


 この事件は数ある渡界人と私の関わった事件の中で初めて完成した記録文書である。

だがいざこれを発表しようとした時渡からストップがかかってしまった。

曰くあれほど日本全体を混乱に陥れた事件の真相を発表した後の事態の推移は日本社会どころか人間社会そのものに大きな動揺を与えかねない、という指摘だった。

よってこの人類がこれらの事態を受け止められる程成熟していると考えられるまではこれを永久に封印する事を私は彼から約束させられたのだった。

とはいえこれ程大きなかつ奇妙な事件を私の頭の中だけで留めておくには荷が勝過ぎているし、何より彼の言う『その日』の為にも残しておいて損はないと思いここに記すのである。




渡界人と私が異世界ダイレクシオンのチートを記した石板奪還事件は実行犯を遂に取り押さえる事が出来ないという不完全な結果に終わってしまった。

この事から当然予想される結末が起こってしまったのである。

「それで、貴女方に追放される直前に『スキルドレイン』でダイレクシオンの天界以外でも能力を使えるようにされてしまったわけですね?」

渡の部屋の巨大な鏡に映る転生神シェパの顔は屈辱と怒りに引きつっていた。

「‥‥そうです。全く忌々しい。まさか石板に書かれている技能や能力を全て使えるようになっているとは思いませんでした。これもあの鍛冶神ログの仕業でしょう」

「しかし事は深刻です。今度は僕たちの世界でその力が振るわれるわけですから」

「それに関しては申し訳なく思っています。しかし・・・」

「ええ、分かっていますよ。貴女方がこちらの世界に干渉できない事はね。ただいくつか質問をしても宜しいでしょうか」

「何なりと。渡界人」

「まずこの下手人についてお聞かせください」

「名前はクロノゲンヤといって貴方達とよく似た特徴の人間の男性です」

「そこをもっと詳しくお願いします」

「年齢はまあ、貴方と同じか少し下でしょうか。黒髪黒目の可もなく不可もなくと言った容貌ですね。ここに来たときは礼服の様な物を着ていましたが今はどうか分かりません。与えた能力は『消失』でこれは自身や他の物体を消せることができます」

思っていた以上に強力なスキルに思わず私は唸ってしまった。

「大変な能力じゃないですか。これなら人間だって」

「それは大丈夫ですよ。自身を除く生命体は消す事は出来ません」

安堵する私をたしなめる様に渡は

「しかし脅威が去った訳ではありません。石板に書かれていたという数々の能力・技能ですがこれを同時に複数使用することは出来るでしょうか?」

「それは出来ません。1度に1つまでという大原則が崩れる事はありません。例えば消失の技能を使いながら誰かを洗脳する能力を使うという芸当は出来ない訳です。この場合消失の効果が即座に切れてしまいます」

「これらの能力を消し去る方法が私達にもできるでしょうか?」

「本来ならば持ち出し厳禁なのですがこの非常時です。これを」

女神がそう言うと私達の目の前に光と共に円筒形の物体が現れる。

「これは?」

「それを能力を与えた者に向けて暫くすると能力を消し去る事が出来ます。ただし取得している量が量ですからそれなりに時間がかかるでしょうね」

「分かりました。なにかあればまた連絡をします」

「吉報をお待ちしていますよ」

そう言うと女神シェパの姿は鏡から消える。


「それでどうやって探すんだ?女神が今言った特徴の日本人なんてごまんといるぜ」

「幸い、僕らは鍛冶神ログの現世で活動していた事務所の場所の見当がついている。そこに行って顧客名簿をちょっと拝見させてもらおう」

その言葉に私は驚いて

「何でそんな事が分るんだ?僕は全くだよ」

「奴の事務所の窓からの景色からさ。君は内装にばかり注意を払っていたがね。まあ案内は任せたまえ」

そう言うと不思議な薬液を入れた小さな手提げ鞄を持って私達はクロノなる人物の手掛かりを探して街へ出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...