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2章 渡界人の日報
2-3盗まれたチート⑦渡界人の推理
しおりを挟む「いやだいぶ良くなったよ。それより君の方こそどこかに行っていたのか」
私はベッドから起き上がり、渡の方を向いてそう言った。
「異世界に行けないからといって調査が出来ない訳じゃない。僕はダイレクシオンへ転移者を送り込んだ同業者を訪ね回っていたんだ。そして一組つまり業者と転移した人間2人の事だが彼らの足取りが完全に消えている事が分かった。まあそれよりも君さえよければまず調査結果を話してくれないか」
私は異世界での調査結果を渡に話して聞かせると
「なるほど。短時間でそれだけ素人が調べられるなら上出来だと思う」
「見えない転生者というのが君の調査した行方不明の転生者なのだろうか?」
「そこなんだがね。僕は今回の話を聞いてまず2通りの仮説を立ててみた。聞いてくれるかい?」
私が頷くと渡は
「まず女神ネイの話を聞いた時ダイレクシオン神界の権力闘争つまり下克上を狙った物なのではないかという事が頭に浮かんだ。だが現状これは可能性はかなり低い。何故なら今にいたるまで何も起こっていない、という事がそれを証明している。自分が頂点に立とうとするならなぜグズグズする必要がある?時間を掛ければかけるほど見つかって計画がご破算になる可能性は高くなる一方じゃないか。さらに言えば誰にも気が付かれずセキュリティー堅固な宝物庫から箱を盗み出せる奴がその箱の開錠に時間がかかっているという事も考えられない」
「だけど内部の人間でなければどうやって内部事情を知る事が出来るんだ?まさかチートの反動で2日もうなされたり神々が部屋にこもりきりなんて事が外部に伝わっているとは思えないけど」
私の反論に
「そう。だから僕は考えを変えてみた。つまり盗みだして自身の手元に置いて置くという収集目的だったとね。石板に書かれている文言そのものは新大神の儀式で読み上げられるから有名だし、与えられる能力も最初からそういう適性の奴を送り込めばいい。だが動機はともかくなぜ内部事情に詳しいのかという疑問はこれで解決される」
渡は一つの名刺を私に見せた。
そこには70くらいの老人の写真と『異世界転移業者梶原哲郎。天界との独自の繋がりあり。特殊なアーティファクトでお客様の異世界ライフをサポートします』と書かれていた。
「独自の繋がりって、まさか」
「そうだ。女神シェパに確認したらこいつはダイレクシオンの鍛冶神ログそっくりだといっていた。引退した神がまさか転移転生業者をやっているなんて考えられないがログの神格は低いからこういう事もあるだろうとは言っていたがね」
「だが行方が分からないんじゃどうしようもないな」
「分かるよ。だって君自身が調べたんだぜ。仮のチートは館の敷地内から出たら消失すると。そして君が入らなかった場所が館にはある。実行犯は目には見えない。もうわかるだろ」
「まさか眠りの間に持ってこさせたのか?」
「眠っているはずのしかも内心馬鹿にしている低位の神の寝室を調べようとはしなかったみたいだからな。恐らく秘密の通路か何かで彼の隠れ家に繋がっているに違いない。次元を超えてしまえばいかに大神とて手出しは出来ないからね。実はこの事をもう伝えてあっていま捜索が行われているところだろう。おっ噂をすればなんとやらだな」
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