上 下
46 / 88
2章 渡界人の日報

2-3盗まれたチート⑥新たな事実と帰還

しおりを挟む

 館へと戻った私は2階にある部屋の1つを警備している兵に女神シェパの居所聞いてみると4つ先の部屋だと教えてくれた。

探し当てた部屋の警備兵に例のカードを渡すと以外にもすんなり通してもらえたのでひと悶着ある事を考えていた私としては意外だった。

(仮にも神のいる場所だろうに。セキュリティーというかプロ意識に欠けてないか?)

そう思いながら私は豪華であると同時に品のある、落ち着いた近代風の調度品をしつらえた居間に通された。

「ようこそ、探偵さん。私が今回から転生を司ります女神シェパです。前任のネイの事をお聞きになりたいのですよね?」

アンティーク品といってもよい籐椅子に腰かけ、自分の向かいの席に座るよう勧められた私は部屋とその持ち主に圧倒されながらもぎこちない動作で彼女の座っているのと同じ籐椅子に腰かけた。

「はい。驚いたのですがこういう言い方をすることをお許し下されば、既にチートを授けていらっしゃるとか。そうなると例の石板の価値とは何でしょう?」

「もちろん今の状態では不完全ですよ。能力はこの館の敷地を1歩でも出れば消失してしまいます。つまりダイレクシオンの大地に立っても能力は使えません。石板からの光を受けて初めて他の場所で能力を振るう事が出来るのです。私は今石板の文言とその力を学んでいる最中ですが、ネイは石板の文字を一言一句諳んじていますし、その言葉の魔力を授けるに相応しい力を備えていますわ」

女神シェパのその口調と表情には憧れと敬愛の情が強く表れていた。

「では女神ネイのそのチートいえ能力授与は盗難判明前に起こっていると思いますがそれはいつですか?」

「1日前です。といって授けられた人間がその力に適合する為激痛を味わう事になるでしょうから即座にその力を把握したり使用する事は無理だと思います。なにせ人間には及びもつかない力を与えられる訳ですからね」

「物体透過とか相手の目を眩ませるだとかの力にはどの位の負担が人間にかかるでしょうか?」

「さあ?結局個人差によるところが大きいので正確には。ただどんな力を授かったとしても2日は苦しむと思いますわ」

「誰がどの能力を授かるとかの決まりはあるのでしょうか?」

「もちろん。適性はそちらの世界の調査官達が調べてくれますからそれに準拠した力をね」

この時私は薬の副作用のせいか頭痛がしてきた。それを押し隠し私はもう一つ質問をしてみた。

「盗難が分かった時女神ネイと大神はどうされていましたか?」

「その時は2柱とも部屋に居て仕事をしていたそうです。私はこの上の眠りの間にいたので又聞きでしかないのですが」

「どうもありがとうございます。では帰ってよくこの問題を再度検討してみたいと思います。どうやら私がここに居られる時間が迫って来たようなので」

私は痛みでガンガンする頭に何とか耐えながら部屋を退出し、世界を超えて渡の部屋へたどり着いたと同時に気を失ってしまった。

私が目を覚ましたのは実に翌日の夜で渡の部屋のベッドに寝かされていたのだった。

「やあ、君。ようやく元気になったようだね。どうだね、まだ知恵熱は続いているかい?」

氷枕の替えを持った渡がベッドの脇に立っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...