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2章 渡界人の日報
2-3盗まれたチート⑥新たな事実と帰還
しおりを挟む館へと戻った私は2階にある部屋の1つを警備している兵に女神シェパの居所聞いてみると4つ先の部屋だと教えてくれた。
探し当てた部屋の警備兵に例のカードを渡すと以外にもすんなり通してもらえたのでひと悶着ある事を考えていた私としては意外だった。
(仮にも神のいる場所だろうに。セキュリティーというかプロ意識に欠けてないか?)
そう思いながら私は豪華であると同時に品のある、落ち着いた近代風の調度品を設えた居間に通された。
「ようこそ、探偵さん。私が今回から転生を司ります女神シェパです。前任のネイの事をお聞きになりたいのですよね?」
アンティーク品といってもよい籐椅子に腰かけ、自分の向かいの席に座るよう勧められた私は部屋とその持ち主に圧倒されながらもぎこちない動作で彼女の座っているのと同じ籐椅子に腰かけた。
「はい。驚いたのですがこういう言い方をすることをお許し下されば、既にチートを授けていらっしゃるとか。そうなると例の石板の価値とは何でしょう?」
「もちろん今の状態では不完全ですよ。能力はこの館の敷地を1歩でも出れば消失してしまいます。つまりダイレクシオンの大地に立っても能力は使えません。石板からの光を受けて初めて他の場所で能力を振るう事が出来るのです。私は今石板の文言とその力を学んでいる最中ですが、ネイは石板の文字を一言一句諳んじていますし、その言葉の魔力を授けるに相応しい力を備えていますわ」
女神シェパのその口調と表情には憧れと敬愛の情が強く表れていた。
「では女神ネイのそのチートいえ能力授与は盗難判明前に起こっていると思いますがそれはいつですか?」
「1日前です。といって授けられた人間がその力に適合する為激痛を味わう事になるでしょうから即座にその力を把握したり使用する事は無理だと思います。なにせ人間には及びもつかない力を与えられる訳ですからね」
「物体透過とか相手の目を眩ませるだとかの力にはどの位の負担が人間にかかるでしょうか?」
「さあ?結局個人差によるところが大きいので正確には。ただどんな力を授かったとしても2日は苦しむと思いますわ」
「誰がどの能力を授かるとかの決まりはあるのでしょうか?」
「もちろん。適性はそちらの世界の調査官達が調べてくれますからそれに準拠した力をね」
この時私は薬の副作用のせいか頭痛がしてきた。それを押し隠し私はもう一つ質問をしてみた。
「盗難が分かった時女神ネイと大神はどうされていましたか?」
「その時は2柱とも部屋に居て仕事をしていたそうです。私はこの上の眠りの間にいたので又聞きでしかないのですが」
「どうもありがとうございます。では帰ってよくこの問題を再度検討してみたいと思います。どうやら私がここに居られる時間が迫って来たようなので」
私は痛みでガンガンする頭に何とか耐えながら部屋を退出し、世界を超えて渡の部屋へたどり着いたと同時に気を失ってしまった。
私が目を覚ましたのは実に翌日の夜で渡の部屋のベッドに寝かされていたのだった。
「やあ、君。ようやく元気になったようだね。どうだね、まだ知恵熱は続いているかい?」
氷枕の替えを持った渡がベッドの脇に立っていた。
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