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2章 渡界人の日報

2-3 盗まれたチート④神の住居クォレント

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ダイレクシオンの神々の住むクォレントの荘厳さは人間の持つ言葉ではどうやっても説明のしようがない、と今でも思う。

私がその威容に圧倒されていると女神ネイは

「すみませんが、私も役職の交代の時期なのです。他の神々には話を通してありますので『眠りの間』以外でしたら好きな所へ行って調査をして下さい。もし私に御用がおありでしたら後任の女神シェパを訪ねて下さい。私の当時の行動はそれでわかるでしょう」

確かによく見ると女神の体は半透明になっていた。

「分かりました。その眠りの間はどこに?」

「この館の最上階にある、一番大きな部屋です」

女神の顔には何言ってんだこいつといった表情が確かに浮かんでいた。

私は丁寧にお礼を言うと通行証代わりのカードを渡された。

これで晴れて神々の為の捜査を開始、と行きたかったが

「・・・広すぎる・・・」

館内部は案内版など当然なく入り口を入ってすぐに私はその途方もない広さに眩暈を覚えた。

このホールの中央には巨大な神々の像があり、それを照らす不思議な温かさを持つシャンデリアがいくつも天井からぶら下がっている。

この像の傍にいる転移待ちと思われる、何かの本を読んでいる人間の男に私は思い切って話しかけてみる事にした。

「すみませんが、宝物庫への道を教えてもらえますか?」

「あそこは封鎖中だ。おかげで転移の儀式も中断だとよ」

「僕はそれを調べる為に女神ネイから派遣されてきたんです」

私は女神からもらったカードを見せると

「そうか!あんたが噂の・・・だが気を付けろよ。転移後の生活を円滑にする為に俺達は1年ほど前からここにいてもらったチートの使い方やダイレクシオンの歴史なんかを学ばされているんだがどうもおかしな事が続いているんだ」

「おかしなこと?それはどんな」

「そうだな。一番よく聞くのは幽霊騒ぎだ。壁や床が動いているなんてのもあれば私物が無くなったりしてな。転移者達の私物の方は暫くすると戻ってくるんだが気味が悪い事には変わりない」

「そいつが犯人何ですかね?神様の物は大丈夫なんでしょうか」

「さあな。だがそんな事をすれば俺達は魂ごと焼かれちまう。実際俺はここに着いてすぐ、女神ネイの服を盗もうとしたスケベな奴がその服を盗もうとして手に取った瞬間奴の体が燃え上がって消滅しちまったのを見ているんでな。神様の服よりどう考えても大切な物ならなおの事そういうセキュリティーがあってしかるべきだと俺は考えるがね」

そう話す男の声は最後は消え入りそうなほど小さかった。

無理もない。どこで神々が聞いているか分からないのだ。不敬罪で処刑されることは誰だって避けたいのが人情だろう。

私は彼から宝物庫への行き方を教わった後お礼を言って別れた。
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