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2章 渡界人の日報
2-3 盗まれたチート③界人の忠告
しおりを挟む「女神ネイ、彼は異世界へ行くのは初めてなので諸々のマナーを教えておきたいと思います。1時間後に転送をお願いできますか?」
女神ネイがすぐにでも異世界へ連れて行こうとするのを渡はそう言って静止した。
女神は渋々という形でこれを了承した。
「さて、時間はないからいくつかあの世界について話しておこう」
「何かあるのか」
出鼻を挫かれた私はいささか気を悪くしていた。
「まず彼女が話の中で言っていなかったことがいくつかある。まず君が調査することになる館には君同様の人間が多くて10人ほどいるはずだという事、そして探すべき石板の入った箱は赤地にダイレクシオン創生の過程の描かれた浮彫が全面に描かれている」
「待て、君はそれを見たことがあるのか?」
「直接はない。僕らの様な転移転生業者は公正を期すために異世界に行ってはいけないんだ。ああいう依頼の形ではなく直接現地に飛ぶと接待やらなにやらが確実に起こりえるし、そうでなくても直接見たり会ったりした相手に自然と情が湧くのも避けがたいからね。話を戻すとダイレクシオンという異世界は彼らが主張する所では異世界からの転移者に史上初めてチートを授けたらしい。よってあそこでは転生者を神々の住まいからダイレクシオンの大地へ送り込む事は一大儀式となっているのだ。そしてその儀式は大神の交代等の重大案件に付随して行われるのが通例なのだ。よってダイレクシオンへの転移はいつも募集している訳ではない、いわゆるレアイベントといったところだね。ちなみに転移転生業界にこの事を知らない奴がいたらそいつは間違いなくモグリだよ。正式に君が異世界へ転移転生する時の参考にするといい」
「それよりも他に人間がいるという事をなぜ教えてくれなかったんだろう」
「無論自分達の常識は相手も知っていると考えているからさ。この点に注意して調査をしてくれ。あえて語られない事が手掛かりとなりえるのだ」
「そうは言ってもそれをどうやって判別するか・・・・」
正直な所私はあまり記憶力の良い方ではないし、速記等は門外漢である。
「どの道今日一日では出来る事は限られるし、情報の取捨選択は僕の方でやろう。あまり使いたくはないんだがこれを飲むかい?」
渡は依頼人が来るまで作っていた薬液を見せる。
「それは何だい?」
「記憶力の研究の過程で作っていたものでね。実は自分で試すつもりで作っていたんだが1日だけあらゆるものを記憶することができる薬液だ。ただしこいつは副作用も酷くて1週間は反動で知恵熱に苦しめられることになる」
「いいとも。バイトなんかより異世界で女神さまを助ける方が何倍も価値があるよ」
「君もブレない奴だな」
渡は苦笑しながら試験管を私に渡す。
中の薬液を飲み干すと同時に女神ネイが現れた。
その導きで私は光に包まれて異世界ダイレクシオンの神々の住まい『クォレント』の長い階段の前に立っていたのだった。
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