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2章 渡界人の日報
2-3 盗まれたチート②異世界へ
しおりを挟む「まずはダイレクシオンの神々は不死ではありますがその力には限界がある、という事を説明しなければなりません。私達は力を振るえば振るう程その力を消耗していき最後には別の神にその役職を引き継がなければなりません。力を使い果たした神々は休眠期間を経て再び役職に戻るもよし、後任を作り悠々自適に暮らすも自由です。それは神々を統括する大神でさえも例外ではありません。大神の交代時は我々神々全体の力が弱まる時期なので事は慎重に運ばなければならないのですが今回の事件はまさにその大神の交代の間隙をついて行われたとしか思えません」
「その交代の時期と引継ぎはどの位の期間でしょう?まさか力が衰えたからすぐにとはいきますまい」
渡の質問に女神は
「人間の感覚で言えば1年ほどでしょうか。半月後には交代の儀式をするのですがその準備のために3日前に宝物庫を開けたら石板が無くなっていたのです。とは言えそれ以前にも既に私達の力は弱まっていましたから警備の目をすり抜ける事さえできれば石板を守る結界は殆ど機能していない状況ですから取ろうと思えば取れる状況ではあるのです」
「その警備はどのような物でしょうか?」
「まず宝物庫へ行くまでに私達の住む館を通り抜けなければなりません。そこには常時200人の警備兵が詰めています。そして館と宝物庫を繋ぐ道は特に腕と信頼のおける兵が館側と宝物庫側に10名ずつ配置されています。そして石板は物が物なので宝物庫の最奥部に位置しています。この最奥部の扉を開くには大神の他2柱つまり計3柱の神が管理する鍵を使わなければ開ける事は出来ません。そしてそこを開けたとしても石板を収めた箱を開ける鍵が無ければいけません」
「その鍵を持っているのはどなたですか?」
「大神です」
「つまり大神は宝物庫と箱の2つの鍵を管理している訳ですね?その鍵の管理はどうなっていますか?」
「実は特定の鍵を持っている訳ではないのです」そう女神は言う。
「鍵を持つ3柱の神は鍵穴と鍵を自在に変える事が出来ます。その為普段は錠前はレリーフ以上の意味を持ちません」
「宝物庫の錠が壊されていましたか?」
「いいえ。全くの無傷でした」
渡はそこで暫く考え込み
「その石板にはどんな秘法が記されているのでしょう?そしてこれを持っていく事で利益になる者の心当たりはありますか?」
「奪われたのは転生や転移者といった人間相手に使うモノです。例えば無限の魔力を得るだとかあらゆる武器の達人になるとか。相当に強力で使い方によっては神さえ滅ぼしかねないので厳重に保管していたつもりだったのですが・・・それと心当たりはありすぎると言っていいでしょう。あの中には異世界の扉を開いて任意の者を召喚する秘術もあります。それを使って強力な手駒を揃える事など苦も無くできますから」
「大神を倒す事も可能ですか?」
「その者の素質にもよりますが可能だと思います」
そう言うと女神は嘆息した。
「神界には異変はまだないのですね?」
「ええ」
「そうなると不思議ですね」
渡は立ち上がると鏡の前に立つ。
「事を起こせば確実に神界の秩序が変わるというのにそれをしないというのは?3日あればそれくらいの事は出来そうなものでしょうにね。石板に刻まれている文字を読めない神がいますか?」
「生まれたてでもない限りは読めると思います」
「そうなると全く別の目的か、単純にいたずらという可能性もないとは言えない。最も後者の可能性は現状では限りなく0に近いですがね」
「別の目的って?」
私が口を挟む。
「分からん。君がそれを調べてくれたまえ。僕はこの仕事をするにあたっての協約上異世界へはいけないのだ。だから君にお願いするしかないのだ」
「そんな・・・僕に務まるかどうか」
突然の大役に私は面食らった。
「では女神ネイ、彼を調査に送ります」
「分かりました。可能な限り便宜を図りましょう。期待していますよ」
だがこの女神の微笑みを見て断るという選択肢を取るほど私は愚かではなかった。
こうしていささか予定は違うが憧れの異世界へと私は足を踏み入れる事になったのだった。
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