上 下
31 / 88
2章 渡界人の日報

2-1 駆け落ちは異世界で⑥蠢く陰謀

しおりを挟む



「ねえ君、僕は当初はあの2人を送る事にあまり気乗りしなかったが今はこれ程適任と思える人材はいなかろうと思うよ」

「その心境の変化は何故だい?あの紙になんて書いたんだ?」

「ああ、彼の兄が結菜嬢の妹に告白した事とその妹がヨシカズ氏本人に愛の告白した事さ」

「は?」

私は驚きのあまり立ち止まってしまった。

「じゃあ、あの老人たちの言っていた事はそう言う意味だったのか。しかし今回の件とそれがどう関係するのさ」

「鈍いなあ!陰謀だよ。それもこの転生事件その物が犯罪計画の第一段階である可能性が極めて強い。最も今の状況ではどちらが事件の首謀者か分からない。それを含めていくつかの手掛かりを求めて明日僕が単独で両家を調べようと思う」

「どうもよくわからないね。そもそも何を企んでいるんだ?そしてどうしてそれを君は疑っているんだ?」

「動機はよくある痴情のもつれという奴だ。だがその方法は邪悪その物といっていい。いいかい、疑いの始まりは昼間も言ったが彼氏の苗字を言わなかった事だ。そして決定的なのが現在判明している三吉・結菜両方の家の登場人物の名前だ。フルネームでだぜ。ちなみに僕はヨシカズ氏をどう漢字で書くかを既に知っているがそれを知らなくても推定はできる」

「いつ知ったんだ?そんな機会はなかったと思うが」

「僕が講義室で倒れただろ?あれは出席代わりに集めた感想の紙を見る為にわざとやったんだ。倒れた拍子に紙の束を崩してね」

「あれはそういう事だったのか」

「それと一つ頼みがあるんだが」

「あまり無理なものでなければ」

「明日以降しばらくの間留守番を頼みたいんだ。日給5万でどうだ?特に今回送る先の異世界の女神様は気が短くてね。来たらこちらの連絡を待つよう言っておいてくれ。それと新たな依頼がきたら断っておいてくれないか」

「それは願ってもない事だがそれほど危険なのか」

「全ては決行日次第だがね。本当は今日にでも取り掛かりたいがこう時間が遅いと警戒される。ああ忘れていた。その女神さまは強面だからって失礼の無いように頼むよ」

翌日から渡は朝早くから出かけて行って夜遅くに帰って来た。

翌日とその次の日はそもそも帰ってこなかった。

4日目の昼頃渡の部屋で留守番をしていた私はこの部屋にある巨大な鏡に映った物を見て仰天した。

「渡界人はいるか?」

そう言ったのはメデューサみたいな顔が4つと8本の腕にそれぞれナイフを持った悪魔だった。

「ど度ddっどちら様で!?」

「我は異世界パクールの転移女神スラー。進捗はどうなっているのだ?」

「そっそそれはこちらから連絡すると渡が」

私は終始震え声だった。

「早くしろと伝えろ。私自らの手で送るのだからな」

「伝えます伝えます」

最後は土下座である。取って食われる、そんな身の危険を感じるほどの怒気を発していた。

そこへ部屋の主が帰って来た。

「お待たせしました、女神スラ―。件の人物達は今夜行くことになります」

「うむ。ではこちらを」

鏡の中からカランと乾いた音がして3センチほどの大きさの真っ赤な剣型のアクセサリーが2つ転がった。

「それを連中に渡すなり、周囲に投げるでもよい。それを頼りに転移の魔方陣が発生する」

そう言うと女神スラ―の姿は消えた。

「今夜決行なのか?卒業を待たずに」

「そうだ。君も来るかい?真相を知りたいだろう。決行は夜中だから今のうちに寝ておくといい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした

せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ―――

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました

竹桜
ファンタジー
 自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。  転生後の生活は順調そのものだった。  だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。  その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。  これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...