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2章 渡界人の日報
2-1 駆け落ちは異世界で⑥蠢く陰謀
しおりを挟む「ねえ君、僕は当初はあの2人を送る事にあまり気乗りしなかったが今はこれ程適任と思える人材はいなかろうと思うよ」
「その心境の変化は何故だい?あの紙になんて書いたんだ?」
「ああ、彼の兄が結菜嬢の妹に告白した事とその妹がヨシカズ氏本人に愛の告白した事さ」
「は?」
私は驚きのあまり立ち止まってしまった。
「じゃあ、あの老人たちの言っていた事はそう言う意味だったのか。しかし今回の件とそれがどう関係するのさ」
「鈍いなあ!陰謀だよ。それもこの転生事件その物が犯罪計画の第一段階である可能性が極めて強い。最も今の状況ではどちらが事件の首謀者か分からない。それを含めていくつかの手掛かりを求めて明日僕が単独で両家を調べようと思う」
「どうもよくわからないね。そもそも何を企んでいるんだ?そしてどうしてそれを君は疑っているんだ?」
「動機はよくある痴情のもつれという奴だ。だがその方法は邪悪その物といっていい。いいかい、疑いの始まりは昼間も言ったが彼氏の苗字を言わなかった事だ。そして決定的なのが現在判明している三吉・結菜両方の家の登場人物の名前だ。フルネームでだぜ。ちなみに僕はヨシカズ氏をどう漢字で書くかを既に知っているがそれを知らなくても推定はできる」
「いつ知ったんだ?そんな機会はなかったと思うが」
「僕が講義室で倒れただろ?あれは出席代わりに集めた感想の紙を見る為にわざとやったんだ。倒れた拍子に紙の束を崩してね」
「あれはそういう事だったのか」
「それと一つ頼みがあるんだが」
「あまり無理なものでなければ」
「明日以降しばらくの間留守番を頼みたいんだ。日給5万でどうだ?特に今回送る先の異世界の女神様は気が短くてね。来たらこちらの連絡を待つよう言っておいてくれ。それと新たな依頼がきたら断っておいてくれないか」
「それは願ってもない事だがそれほど危険なのか」
「全ては決行日次第だがね。本当は今日にでも取り掛かりたいがこう時間が遅いと警戒される。ああ忘れていた。その女神さまは強面だからって失礼の無いように頼むよ」
翌日から渡は朝早くから出かけて行って夜遅くに帰って来た。
翌日とその次の日はそもそも帰ってこなかった。
4日目の昼頃渡の部屋で留守番をしていた私はこの部屋にある巨大な鏡に映った物を見て仰天した。
「渡界人はいるか?」
そう言ったのはメデューサみたいな顔が4つと8本の腕にそれぞれナイフを持った悪魔だった。
「ど度ddっどちら様で!?」
「我は異世界パクールの転移女神スラー。進捗はどうなっているのだ?」
「そっそそれはこちらから連絡すると渡が」
私は終始震え声だった。
「早くしろと伝えろ。私自らの手で送るのだからな」
「伝えます伝えます」
最後は土下座である。取って食われる、そんな身の危険を感じるほどの怒気を発していた。
そこへ部屋の主が帰って来た。
「お待たせしました、女神スラ―。件の人物達は今夜行くことになります」
「うむ。ではこちらを」
鏡の中からカランと乾いた音がして3センチほどの大きさの真っ赤な剣型のアクセサリーが2つ転がった。
「それを連中に渡すなり、周囲に投げるでもよい。それを頼りに転移の魔方陣が発生する」
そう言うと女神スラ―の姿は消えた。
「今夜決行なのか?卒業を待たずに」
「そうだ。君も来るかい?真相を知りたいだろう。決行は夜中だから今のうちに寝ておくといい」
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