30 / 88
2章 渡界人の日報
2-1 駆け落ちは異世界で⑤潜入捜査2
しおりを挟む中から出てきた部員にヨシカズ氏を訪ねるとそれは自分だと言った。
渡は名刺を見せると彼は私達と共に学校の裏手へと案内した。
「実吉ヨシカズさんですね。相手方からはまだ決めかねていると聞きましたが、一つ気になる事や忠告申し上げたい事もありましてね」
「いや、実和から聞きました。こちらを心配してくれた事や私が調べた業者はセールストークばかりでどうも信用ならない。向こうの方が安いですが向こうで何が起こるか判らないという点で信用できるのはやはりそちらだと思います」
「その信用の為送り込む人間を調査しているのです。今回の依頼はあなたが主導しているとみているのですが、どこでこの転生業者の事を知りましたか?」
「実は引きこもりの兄がいるのですが、その兄がネットから見つけてきたのです。兄は昔は優秀だったのですが高校の時ちょっと・・・いえ言いましょう、これも兄と私の関係を疑われない為にも」
渡が先を促すと
「兄は名前までは言えませんがある女性に恋をして振られました。それがよほど堪えたと見えて引きこもってしまったのです。それが家業の傾きで今奮起していましてね。一時は冷え切っていましたが家族仲は今は良好ですよ」
「ほう、あなたが居なくとも家業を継いでくれるお兄様がいらっしゃるわけですか。だからあなたの方は出奔にもあまり躊躇が無い、と。しかし先方はどうなのです?」
「向こうも妹が一人います。実良おじさん、失礼向こうの当主の名前ですが結菜家は姉妹だけです」
「お言葉ですが両家の和解は難しいのですか?あなたは向こうの家に親しみを感じているようですが」
「事情は複雑でしてね。こちらは父が特に彼らを嫌い、向こうでは母親がこちらを嫌っている、という訳なんです。今の当主は入り婿なんです。だから実良さん個人は僕らに同業者としてのライバル意識以上の感情はありませんよ」
「家業は何をされているのですか?」
「ニュースで話題になっていると思いますがYOU&MEホームズが我がミヨシハウジングを買収しようとしているのはご存じでしょう?2つの家は昔から土地関連の仕事で争ってきた歴史があるのです。でも家業が傾いた矢先に買収騒ぎですから父の憎悪もいやが上に高まるし、向こうの母親はますますこちらを見下しているという訳です」
「では決意は固いのですね」
「はい」
「異世界に行ったら二度とは帰ってこられません。まだ卒業まで1か月ほどあります。未練などは残さない様お願いします」
「分かりました」
「では最後に先方の妹さんのお名前は何と言いますか?」
「?操といいます」
私は危うく声を出しそうになった。
渡は頷くと手帳を破り何事かを書くとそれをヨシカズ氏に見せた。
それを見たヨシカズ氏は見る見るうちに顔色を変えた。
「何故わかったのですか?あなたの本業とは実は探偵なのですか?」
「必要に応じて探偵にもなりますよ。いい加減な人物をこちらも送りたくはないのです。ではさようなら」
そう言うと渡は私と共に駅へと歩き出した。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした
せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる