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1章無色透明な習作

7衝撃の真実

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「だが彼みたいな人間が行けるなら僕だって行けるはずだ。僕はずっと異世界へ行きたかったんだ。毎日はつまらないし、上司や客はクソだし、良い事なんかありゃしない。それならいっそ何もかもが知らない世界でチートを貰って人生一発逆転したいと皆思っているよ。ある日突然神様に選ばれて異世界を救う運命を課せられることさ。その過程で魅力的な仲間との出会い、手に汗握る冒険、凶悪な魔族との戦い。最後は救った国の王女なりと結婚して幸せな人生を送る。どれも現実世界じゃ無理な話だ」

この私の意見に渡は急に声を強めた

「魔王なり、魔神なりを倒すのは転移した君達の義務だ。神様連中がその過程についてとやかくいわないのは、君達を信用しているからではなく忙しいからだ。君の言う理想はそれこそ現実世界でだってそんな場所はいくらでもあるさ。だがそういう場所は基本的に人間関係が煩わしいか、さもなくば今の場所や環境より不便だったりとデメリットがある事が多い。僕はそういう楽をして生きたい人間は弾くことにしている。異世界転生あるいは転移はそいつの人生の逃避や一発逆転の為にあるんじゃない。きちんとした目的や信念もしくは適性のある者だけを依頼人に紹介しているのさ。何故ならそういう奴らは確実に現地人ともいざこざを起こし、本来の目的である世界救済などせずにスローライフなどと称して勝手気ままに生きる事が目に見えて分かるからね。小遣い稼ぎの追放ショーの人材の派遣ならともかく依頼人への不誠実という事で僕は正式な異世界救済の依頼を潰したくないのでね」

「追放ショーだって!?」

聞き捨てならない言葉を聞いた私はオウム返しに彼の言葉を返した

「そうだよ。君はこの手の事に詳しいだろうから知っていると思うが、変だとは思わないか?何の前触れも無しに、もしくは非論理的な理由でいきなりパーティーなり、国なり実家なりを追い出されるんだぜ。その多くは目的も果たしていないのにさ。あの手の奴は最初から依頼人の神々が楽しむために設定された、我々の世界のTVショーと同じ不道徳な娯楽番組と同じなんだよ。この仕事の駆け出しの頃そうとは知らず騙される形でそれに関わった事が1度だけあるので知っているのだ」

「知らなかった・・・でも彼のサポートは続けるんだろ?さっきも住民とのいざこざがって」

「しないよ。僕の仕事は適格な誰かを異世界に送り届けるまでであってそこから先彼または彼女が目的を果たせず朽ち果てようが僕の知った事じゃないさ。最もそうならないように気を付けて送り込んでいるがね。そこは大抵異世界側の依頼人の管轄でもあるからね。だが気を付けたまえ、そういうアフターサービスをうたっている業者は大抵が悪徳業者だよ」

「業界があるのか?」

「もちろん。この仕事は僕以外の人間もやっているとも。仕事があれば業界だって出来るのは当たり前だろ。先程も言ったが悪徳業者は真っ当な異世界転移あるいは転生ものと称して追放ショーに送り込むなんて事は平然とやる連中だからね」

「君は自分の仕事に誇りを持っているんだな」

そう言うと渡は照れくさそうにまあねといっただけだった。

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