王が下した妃の処刑

基本二度寝

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去りゆく者

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『くそ…上膳据膳の自堕落生活が…』

大蛇は人型から姿を戻し、その身体をさらに細くして、エリカの住む離宮から逃げ出した。
彼女の部屋の窓にある飾り格子の隙間は、人が通れるものではないが、蛇型なら問題なくすり抜けられる。

『あー…お腹空いたぁ』
『おい、オレの頭をかじるな』

人型の生活のほうが長かったらしいエリカは、変化の感覚を取り戻すまでに時間が掛かり、日が昇る直前でようやく有鱗目種の姿になることができた。
ただでさえ情交で体力の無いところへ慣れない変化のせいで、すっかり動けなくなったエリカを背に負い、必死で城から離れるべく移動をしている。

空腹を紛らわせるためか、大蛇の身体に甘噛み続けるエリカにため息が出る。

エリカは希少種だった。
色素の薄い肌を持つアルビノと呼ばれる種類で、国が違えば彼女をめぐり争いが起きると言われる。

エリカは親に、人型で過ごせと、言われてそうしてきたらしいのも、それが理由だろう。

『ったく、とんでもねえくじだ』

エリカが卵を産んだと聞いて、大蛇はゾッとした。
ヒトが生むのは子であって、卵ではない。

しかもそんなヒトではないエリカを孕ませられる者など城内には一人しかいない。

大蛇がしていた、種族違いのため生まれないと確信を持って、眠るヒトの雌に吐き散らかした性欲発散の行為。

エリカの匂いに覚えがあった。
ならば、卵の種は自分だろうと思い当たる節しかない。

となれば、もう大蛇はエリカを殺せない。
同族も、我が子を成した雌も殺せない。

仕事ができなければ、城にも置いてはもらえまい。

『あーぁ…良い職場環境だったのに…って!身体を齧るな』

『おなかすいたぁ』

城から離れていく二匹を、泉の主は遠くから見守っていた。
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