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一言言ってやらねば。


クリスフォードは肩を怒らせていた。
リベローラのせいでとんだ赤っ恥だ。


従者に、過去に受け取った従妹の結婚式の招待状を見せられた。
確かに、それを目にした記憶があった。
面倒くさいと断ったことも思い出した。

「くそっ」

リベローラは登城しているらしい。
一言言ってやらねば、腹の虫が収まらなかった。

中庭を見下ろすと、東屋の少し離れた場所にスクリュードの護衛を目にして、そのまま中庭に足を向けた。



クリスフォードは護衛にチラリと目線を送られたが無視して先を進む。

東屋に二人は並んで座っていた。
目に飛び込んできてのは、美しい姫が愛しの王子からキスを受ける、そんな物語の一部を切り取ったような光景だった。

思わず、足を止め見入ってしまう。
姫は王子に微笑むと、その胸に頭を預け、胸に添えていた手が落ちる。
頭が傾ぎ、姫は眠りに落ちた。


「なにか用か?」

目も合わせない腹違いの弟の物言いにカチンと来た。

「随分偉くなった物言いだな」

「兄弟だと思って馴れ馴れしく話しかけるな。俺とお前では背負うものが違う」

「っ!」

以前、クリスフォードがスクリュードに放った言葉をそのまま返された。

「俺はっお前を認めていない!」
「別に認めなくてもいい。既に決定していることだし」

「くそが…」

二人の言い合う間も、スクリュードの胸に頭を預けたままのリベローラはピクリとも動かない。

そうだ、彼女に文句を言いに来たのだ。

クリスフォードは彼らに近づき、リベローラに手を伸ばした次の瞬間、正面から大きな空気の塊を受けた。
足が地から離れ、後ろに吹き飛ばされると、背中に衝撃が走る。

「うぐっ」

クリスフォードは背を叩きつけられ、反動で前のめりに手をついた。

「サス、有難う。まぁクリスなんか助けずそのまま城壁に打ち付けられても良かったけどね」

クリスフォードの背中の衝撃は、スクリュードの護衛が押しとどめたものだった。
護衛が間に入らねば、クリスフォードは城壁に肉片を飛び散らせていたかもしれない。

「はぁ、ハァッ、今のは、」

「そんな敵意剥き出しで近寄ればそうなるよ。防護セキュリティは強固だからね」

防護セキュリティ…?」

「…気づいていないとか本当に無の、いや」

「なんの事だ」

痛みに耐えて立ち上がる。
けれど、先程の恐怖が勝ち、足が竦んで東屋には近づけない。

「王太子だった時分に彼女に何度も命を救われたはずだ。リベローラは、王太子の盾なんだから」

「リベローラ…?」

「さっきの風魔法はリベローラの物だ。今彼女は眠っているけれど、意識がなくても問題なく機能する。王の盾となる道を選んだ彼女の努力の成果だよ。どうせ、知らなかったのだろうけど」

スクリュードは優しい瞳でリベローラの頭を膝に下ろした。

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