8 / 12
八
しおりを挟むその夜僕は夢を見た。
僕はなぜか真っ暗な川べりにいて
順之助を待っている。
背も高くなって、もう青年、と
いわれるような年格好。
(今日もこない……順之助…。)
「一之進!!」
声がしたと思ったら順之助は
息を切らし走ってきて
僕を抱きしめたんだ。
「はぁはぁ…会いたかった…。」
『順之助…。何があったの?
もうずっと約束の刻に来てくれなかった!
寂しかったよ…。ずっと…ずっと
待ってたんだから!』
「ごめん…一之進…。
見張られてて出してもらえなかった。」
『じゃあやっぱり…。』
「………………。」
『順之助…。』
「一之進…。駆け落ちしよう…。
このまま…どこか遠くへ…。一緒に…。」
『順之助?
……………………………………わかった。
行こう。このまま遠くへ。』
手を取り走り出す。
どこ、ともしれないどこか遠く。
どれだけ走り、歩いただろうか。
たどり着いたのは小さな古い廃屋。
「ここで休ませてもらおう…。」
『はぁ、はぁ………。ん…。コホ…。』
「一之進大丈夫か?」
『ゴホゴホ…。だい…じょう、ぶ。』
「水を探してきてやるから。
待ってろ。」
『いやだ!どこにも行かないでっ!』
「大丈夫。すぐ戻る。」
『やだ!やだ!ひとりにしないで…。』
「………………わかった。ほら、これ。」
『わぁ…可愛い…。』
小さな瓶の中には色とりどりの
金平糖が入っていた。
その中のひとつを口に入れてくれる
順之助。
『…ん。甘い…。美味しい…。』
僕の頬を優しく撫でて
よかった…、と呟いて
順之助は横に座った。
そっ、と手が握られる。
それだけで愛おしさが溢れて
その肩に身を預けた。
ふ、と目覚めると横に
順之助はいなくて…。
僕は慌てて外に飛び出す。
『順之助ぇぇえ!』
「あ!一之進!起きたのか?」
『よかった…いた……………。』
「明るくなったらすぐ横に
井戸があるのが見えて。
一之進も顔を洗ったら?
すっきりする。」
順之助が汲んでくれた井戸水は
思いのほか綺麗でひんやりして
気持ちが良かった。
顔を洗い、はぁ、と息をつくと
クスクスと笑って僕を見ている
順之助の笑顔に出会い
僕はまたかぁっと頬が熱くなり
見上げる。
「真っ赤だよ?水、冷たすぎたの?」
ううん、と僕は俯いてかぶりを振った。
僕の頬に順之助の手が添えられる。
「可愛いな…。」
『えっ……………。』
「また赤くなった…。」
『……………………。』
「ふふふ…どうしたんだ、唇を尖らせて…。」
『だって…。ずるい…。』
「ずる、い?」
『容姿端麗な順之助に
そんなふうに言われたら…。』
「言われ、たら…?」
『……もう~。』
また、ふふふ、と笑い順之助は
僕のおでこにそっと口づけをくれた。
「ゆでダコだな…。可愛い…。」
その声に顔をあげて見た顔も
ゆでダコのように赤くて…。
『順之助も…赤い。』
そっと僕の両頬に手を当てて
目を見つめてきた順之助に
僕も目を合わせふふ、と笑いあった。
僕はなぜか真っ暗な川べりにいて
順之助を待っている。
背も高くなって、もう青年、と
いわれるような年格好。
(今日もこない……順之助…。)
「一之進!!」
声がしたと思ったら順之助は
息を切らし走ってきて
僕を抱きしめたんだ。
「はぁはぁ…会いたかった…。」
『順之助…。何があったの?
もうずっと約束の刻に来てくれなかった!
寂しかったよ…。ずっと…ずっと
待ってたんだから!』
「ごめん…一之進…。
見張られてて出してもらえなかった。」
『じゃあやっぱり…。』
「………………。」
『順之助…。』
「一之進…。駆け落ちしよう…。
このまま…どこか遠くへ…。一緒に…。」
『順之助?
……………………………………わかった。
行こう。このまま遠くへ。』
手を取り走り出す。
どこ、ともしれないどこか遠く。
どれだけ走り、歩いただろうか。
たどり着いたのは小さな古い廃屋。
「ここで休ませてもらおう…。」
『はぁ、はぁ………。ん…。コホ…。』
「一之進大丈夫か?」
『ゴホゴホ…。だい…じょう、ぶ。』
「水を探してきてやるから。
待ってろ。」
『いやだ!どこにも行かないでっ!』
「大丈夫。すぐ戻る。」
『やだ!やだ!ひとりにしないで…。』
「………………わかった。ほら、これ。」
『わぁ…可愛い…。』
小さな瓶の中には色とりどりの
金平糖が入っていた。
その中のひとつを口に入れてくれる
順之助。
『…ん。甘い…。美味しい…。』
僕の頬を優しく撫でて
よかった…、と呟いて
順之助は横に座った。
そっ、と手が握られる。
それだけで愛おしさが溢れて
その肩に身を預けた。
ふ、と目覚めると横に
順之助はいなくて…。
僕は慌てて外に飛び出す。
『順之助ぇぇえ!』
「あ!一之進!起きたのか?」
『よかった…いた……………。』
「明るくなったらすぐ横に
井戸があるのが見えて。
一之進も顔を洗ったら?
すっきりする。」
順之助が汲んでくれた井戸水は
思いのほか綺麗でひんやりして
気持ちが良かった。
顔を洗い、はぁ、と息をつくと
クスクスと笑って僕を見ている
順之助の笑顔に出会い
僕はまたかぁっと頬が熱くなり
見上げる。
「真っ赤だよ?水、冷たすぎたの?」
ううん、と僕は俯いてかぶりを振った。
僕の頬に順之助の手が添えられる。
「可愛いな…。」
『えっ……………。』
「また赤くなった…。」
『……………………。』
「ふふふ…どうしたんだ、唇を尖らせて…。」
『だって…。ずるい…。』
「ずる、い?」
『容姿端麗な順之助に
そんなふうに言われたら…。』
「言われ、たら…?」
『……もう~。』
また、ふふふ、と笑い順之助は
僕のおでこにそっと口づけをくれた。
「ゆでダコだな…。可愛い…。」
その声に顔をあげて見た顔も
ゆでダコのように赤くて…。
『順之助も…赤い。』
そっと僕の両頬に手を当てて
目を見つめてきた順之助に
僕も目を合わせふふ、と笑いあった。
72
お気に入りに追加
1,003
あなたにおすすめの小説

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)


不治の病の私とは離縁すると不倫真っ最中の夫が言ってきました。慰謝料、きっちりいただきますね?
カッパ
恋愛
不治の病が発覚した途端、夫であるラシュー侯爵が離縁を告げてきました。
元々冷え切っていた夫婦関係です、異存はありません。
ですが私はあなたの不貞を知っておりますので、ちゃあんと慰謝料はきっちり支払っていただきますね?
それから・・・わたしの私物も勿論持っていきますから。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!



あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる