王太子妃は人質として帝国に差し出された

基本二度寝

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その夜僕は夢を見た。






















僕はなぜか真っ暗な川べりにいて
順之助じゅんのすけを待っている。






















背も高くなって、もう青年、と
いわれるような年格好。






















(今日もこない……順之助じゅんのすけ…。)
























一之進いちのしん!!」





















声がしたと思ったら順之助じゅんのすけ
息を切らし走ってきて
僕を抱きしめたんだ。

























「はぁはぁ…会いたかった…。」























順之助じゅんのすけ…。何があったの?
もうずっと約束の刻に来てくれなかった!
寂しかったよ…。ずっと…ずっと
待ってたんだから!』























「ごめん…一之進いちのしん…。
見張られてて出してもらえなかった。」
























『じゃあやっぱり…。』























「………………。」
























順之助じゅんのすけ…。』






















一之進いちのしん…。駆け落ちしよう…。
このまま…どこか遠くへ…。一緒に…。」

























順之助じゅんのすけ
……………………………………わかった。
行こう。このまま遠くへ。』


























手を取り走り出す。
どこ、ともしれないどこか遠く。


























どれだけ走り、歩いただろうか。
たどり着いたのは小さな古い廃屋。


























「ここで休ませてもらおう…。」


























『はぁ、はぁ………。ん…。コホ…。』
























一之進いちのしん大丈夫か?」
























『ゴホゴホ…。だい…じょう、ぶ。』






















「水を探してきてやるから。
待ってろ。」
























『いやだ!どこにも行かないでっ!』























「大丈夫。すぐ戻る。」



























『やだ!やだ!ひとりにしないで…。』

























「………………わかった。ほら、これ。」























『わぁ…可愛い…。』






















小さな瓶の中には色とりどりの
金平糖が入っていた。


























その中のひとつを口に入れてくれる
順之助じゅんのすけ





















『…ん。甘い…。美味しい…。』
























僕の頬を優しく撫でて
よかった…、と呟いて
順之助じゅんのすけは横に座った。






















そっ、と手が握られる。
















       
それだけで愛おしさが溢れて
その肩に身を預けた。

























ふ、と目覚めると横に
順之助じゅんのすけはいなくて…。
























僕は慌てて外に飛び出す。





















 
順之助じゅんのすけぇぇえ!』























「あ!一之進いちのしん!起きたのか?」 























『よかった…いた……………。』























「明るくなったらすぐ横に
井戸があるのが見えて。
一之進いちのしんも顔を洗ったら?
すっきりする。」
























順之助じゅんのすけが汲んでくれた井戸水は
思いのほか綺麗でひんやりして
気持ちが良かった。























顔を洗い、はぁ、と息をつくと
クスクスと笑って僕を見ている
順之助じゅんのすけの笑顔に出会い
僕はまたかぁっと頬が熱くなり
見上げる。


























「真っ赤だよ?水、冷たすぎたの?」
 





















     
ううん、と僕は俯いてかぶりを振った。























僕の頬に順之助じゅんのすけの手が添えられる。























「可愛いな…。」






















『えっ……………。』





















「また赤くなった…。」























『……………………。』























「ふふふ…どうしたんだ、唇を尖らせて…。」

























『だって…。ずるい…。』























「ずる、い?」

























『容姿端麗な順之助じゅんのすけ
そんなふうに言われたら…。』






















「言われ、たら…?」






 


















『……もう~。』


























また、ふふふ、と笑い順之助じゅんのすけ
僕のおでこにそっと口づけをくれた。



























「ゆでダコだな…。可愛い…。」


























その声に顔をあげて見た顔も
ゆでダコのように赤くて…。























順之助じゅんのすけも…赤い。』


























そっと僕の両頬に手を当てて
目を見つめてきた順之助じゅんのすけ
僕も目を合わせふふ、と笑いあった。
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