王太子妃は人質として帝国に差し出された

基本二度寝

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「半年だ。この地に駐留する」

ジルグレイアはエンフィアに目を向けた。

「その後は好きにしていい。王太子の元へ戻るのも自由だ。
元々此方はこの件に関っているはずの王族を差し出せ、とは言ってあったが人質なんて要求していない。
向こうが、停戦を条件に該当のを『人質』として差し出すと言ってきたんだ」

話が違う。
エンフィアは王太子から聞いた話となにもかも違う。

いや、そうではない。

エンフィアは一切何も聞かされていないだけだ。

「王族…」

「捕えた族が匂わせていた。試しに国王に吹っかけたらあからさまに拒絶されたからな。多分王族の誰かが関わっている」

ジルグレイアは誰かと言いつつ、その誰かを確定しているに違いない。

ウェルズは最初に言っていた言葉が頭を過る。

ー『あの糞王子が』

「王太子殿下…ですか」

「なぜそう思う?」

エンフィアは沈黙の後、
「ウェルズ様が女性が滞在できる準備がないとおっしゃっていました。姉王女様や妹王女様でないなら、候補は多くありません」
と答えた。

「なるほど」

ジルグレイアは頷いて納得した。
しかし、肯定も否定もしなかった。

「ああそうだ。エンフィア妃。この地にいる間は俺の側から離れるな」

「…ご命令でしょうか」

「そうだ。外でコソコソと彷徨く王国側の人間も警戒しているが、自国の部下も全面的には信用できない。現にウェルズも勝手に貴女を連れて動いたしな」

皇帝は、はぁとまたため息を吐いた。

「俺には加護がある。俺の側にいれば同じように守られる筈だから近くに居ろ。望んでいない人質でも死なれたら困る」

「…かしこまりました」

人質であるエンフィアが亡くなれば、王国側に有利に運ぶ。
強盗団などうやむやにして帝国を悪だと国際社会に訴える。

もしかしたら、それを狙われているのかもしれない。

強盗団への憎悪が蔓延するこの帝国軍の中で、エンフィアが彼らの憎しみを引き受け死にいたる事を。

ジルグレイアが、王太子の用意した侍女を突っぱねたのは、もしかしたらあの侍女は王太子の息のかかった者だったのではないか。

エンフィアの侍女ならば、きっといつでも彼女を屠れる。
何故か、あの時はエンフィアに長く使えていた侍女ではなく、王太子の側付きだった侍女を用意されていた。
その時は疑問に思わなかったが…後々妙なことばかり思い出される。

母国に、王太子に対して疑惑が生まれていく。
なにもかもが怪しく思えるようになっていた。

エンフィアは耳飾りに触れる。


急遽開かれた王族だけの結婚式。

その時に王太子殿下から贈られた耳飾り。


エンフィアは耳飾りをそっと外した。


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