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他の女に目移りしたら、婚約者は他の男と親密だった

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「今度は何をやらかした?」

国王陛下の前に突き出され、ダナリムは訴えた。

「マルシアが浮気をしてました!」

陛下は片眉を上げ、マルシアの護衛に目を向ける。

「例の者と接触しておりました」
「なるほど。で、突撃しようとしていたと」
「浮気など許せるはずがありません」
「ふむ。で、お前は何故その場に居たのだ?一人で?」

その問いに、はっとした。
あの場に置き去りにしてきた彼女の存在を忘れていた。
なんと答えるべきか悩む。
浮気を咎める者が、他の女と居たなどとは素直に言えるものではない。
護衛も連れていた。誤魔化しはできない。

だが陛下は答えを待たずに別の質問へ飛んだ。

「マルシアと共にいたのはだれかわかるか?」
「…平民のようでしたが」

陛下は深い息を吐いた。

「そんなことも、知らないのか」

ダナリムは平民に知り合いなどいない。
貴族の顔を覚えることでも精一杯なのだ。

「こうなるとマルシアを手放すのは惜しいな…」
「手放すとは、」
「私はお前がもっとマシだと思っていた。マルシアが居なくとも。」

どういう意味なのかわからない。

「お前の婚約者の再選定が決定した。マルシア以上の人材を見つけられるように祈っておけ」

王太子の婚約者が男と密会していたのに父はあの時のように烈火の如き怒りをみせることはなかった。

浮気じゃないのか…?
何故婚約者の再選定など…。


ダナリムは陛下の執務室から追い出された。

陛下の言動が理解できなかった。
説明もされなかった。



「マルシアと居た男は誰だ?」

ダナリムをここまで連れてきたマルシアの護衛に問う。

「中央商会会頭の子息です」
「ふーん。ただの商人か」

あの男は鍛えていた体躯をしていたので意外だった。
そんなダナリムの言葉に護衛は驚きを隠さない。

「ご存じないのですか…?」
「何をだ」
「かの商会はこの国きっての大店ですよ…?」
「聞いたことはあるが、それがどうした」

護衛は絶句した。
ダナリムはその反応に不愉快だと眉を寄せた。

「いえ。なんでもありません」

護衛は礼をしてその場を去った。


ダナリムは知らない。

護衛は王太子が即位する前に国を出ようとたった今、心に決めた事を。
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