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二十八 結婚後六月 A
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「…お前本当にヤったのか?」
前回のように業者姿に扮装した医師は庭師を見上げる。
二人の背後で、診察を終えたクエッカは看護師と服の交換をしている。
「お嬢さんメンタル強すぎねぇ?」
クエッカの診察を終えた医師は、帰り支度をしながらアレンに処方した薬を渡した。
裂傷と火傷用の塗り薬はアレンが持つことになっている。
クエッカの部屋に忍び込み悪戯する無礼な使用人がいるらしいので仕方がない。
「…名のある医師からみてもそうなのか…?」
「完全に専門外だけど。傷ついて落ち込むというより、浮かれているような感じがするな。…なぁ、もしかして、お前さんだってバレてるんじゃ。お前さんに気があるように見えるし」
「まさか。俺の変装技術とスキルで欺けない奴はいない」
今までそうだった。だから自分の技術に自信があった。
「…まぁいい。精霊石で着床検査したけど反応なしだった」
「そうか」
「ちょっと残念そうな顔するんじゃねぇ」
「してない」
アレンは医師と共に屋敷の業者専用の裏口まで歩いていく。庭師と卸業者を演じながら。
「あーそうそう。ディゼルさん。もし、花を持ち帰りたいなら、それなりの理由をつけたら輸入は認められるかもしれませんよ?」
「そうですか。ご丁寧にどうも」
屋敷の裏口にも警護の兵はいる。
医師の言葉は、アレンの気持ちを見透かした上での助言だった。
言葉に隠された意味を理解して、理由を探しながら、クエッカの待つ庭に戻って行った。
前回のように業者姿に扮装した医師は庭師を見上げる。
二人の背後で、診察を終えたクエッカは看護師と服の交換をしている。
「お嬢さんメンタル強すぎねぇ?」
クエッカの診察を終えた医師は、帰り支度をしながらアレンに処方した薬を渡した。
裂傷と火傷用の塗り薬はアレンが持つことになっている。
クエッカの部屋に忍び込み悪戯する無礼な使用人がいるらしいので仕方がない。
「…名のある医師からみてもそうなのか…?」
「完全に専門外だけど。傷ついて落ち込むというより、浮かれているような感じがするな。…なぁ、もしかして、お前さんだってバレてるんじゃ。お前さんに気があるように見えるし」
「まさか。俺の変装技術とスキルで欺けない奴はいない」
今までそうだった。だから自分の技術に自信があった。
「…まぁいい。精霊石で着床検査したけど反応なしだった」
「そうか」
「ちょっと残念そうな顔するんじゃねぇ」
「してない」
アレンは医師と共に屋敷の業者専用の裏口まで歩いていく。庭師と卸業者を演じながら。
「あーそうそう。ディゼルさん。もし、花を持ち帰りたいなら、それなりの理由をつけたら輸入は認められるかもしれませんよ?」
「そうですか。ご丁寧にどうも」
屋敷の裏口にも警護の兵はいる。
医師の言葉は、アレンの気持ちを見透かした上での助言だった。
言葉に隠された意味を理解して、理由を探しながら、クエッカの待つ庭に戻って行った。
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