能力持ちの若き夫人は、冷遇夫から去る

基本二度寝

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二十一 結婚後五月 C

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「え、神父様。本当ですか?間違いではありませんか?」

いつになくぼやっとしていたクエッカは、定期の訪問ではない神父を迎え、いつもの如く『純潔証明』を受けたのだが。

「ええ。貴方はもう純潔ではありませんね。他者の気の流れが混ざっています。非処女ですね。おめでとうございます」

神父はホッとして、クエッカの肩を撫でた。
今一組『白い結婚』の申し立て条件が無くなったのは神父としても喜ばしいことだった。

「ええ、本当に。よかったです、奥様」

家令も微笑んで喜んでいる。

「嘘、じゃないの…?本当に…?」

神父に掴みかかってクエッカは縋った。
もし冗談です、なんて言われた場合笑える自信などない。

「奥様、そんなに詰め寄っては…神父様もお困りで」

「神父様!『証明』をください!!」

「奥様」

家令も神父もクエッカは混乱しているのだと思った。
非処女に『純潔証明』は発行できないのに。

「違います!!『非処女証明』?『不純証明』を!!ひ、日付がわかるのならば、それも是非っ!」

興奮した面持ちでクエッカは『証明』を強請った。

「『不純証明』…ですか…?」
「『純潔』を証明できるのならば『不純』の証明もできるでしょう?」

神父はこんなことは初めてだと、『不純証明』を発行した。

純潔を失った日付まで記載の上で。

「ああ…夢じゃないのね…これは、本当に…」

証明書を受け取るとクエッカは感動して、ポロポロと涙を流した。

「ええ…よかったですね」

喜びに震えて涙するクエッカに神父は微笑ましくなった。

「神父様、ありがとうございます。
神様は素晴らしいですね。こんな私に…祝福をくださいました」

以前の懺悔の内容が頭を過ぎった神父だが、夫婦仲が改善したのなら言うことはないと、うんうんとクエッカを肯定した。

「奥様。これで『白い結婚』は不可能になりましたね」

何故か非処女を喜ぶ不可解なクエッカに、黒い笑顔で家令が放つ。
もう、離縁の申し立てはできないのだぞと突きつけられた。

「『白い結婚』…?なんですか?それは」

クエッカはなんのことだかわからないと首を傾げたのだった。
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