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二 結婚式当日 初夜 C

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クエッカは今日夫になったボルスターの出ていく背中を見つめていた。

主が部屋から出ていくと、部屋の隅にいたメイドもお役目を終えたようにお辞儀をして部屋から出ていく。

一人残されたクエッカは首を傾げた。

「愛することはないって…なんでわざわざ当たり前のことを言ったのかしら?」


クエッカは政略結婚というものを理解していた。

彼女の母はクエッカを産むと、彼女を置いて実家に帰った。

父は母が出ていったあと直ぐに愛人を家に入れた。
クエッカは一通りの教育を受けさせてもらえたが、家族で食事を囲んだり、出かけたことはない。

クエッカは親の愛を知らない。
父と母の状態を知っている彼女には、結婚した夫婦が愛し合うという発想がない。
愛が無いのが普通なのだ。

ボルスターとの婚姻が決まった時、「離縁されても戻ってくるなよ。うちには跡取りがもういるのだからな」と父には言いくるめられている。

愛人の産んだ異母弟では、母が持っている爵位を継承できないのだけれど、わざわざそれを教えてやる気も、その爵位を継ぐ気もない。

「離縁されたら、何処か知らない土地に行くのも良いなぁ」

クエッカは貴族に未練はない。

父の愛人は貴族の仲間入りをしたそうではあったけれど、貴族になったらもう父には愛されなくなるのかな、と思っている。
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