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「…つまり、私はその妖精の気まぐれで眠らされていたと?」

怒りの矛先を見つけた甥に、ウェルスタはため息を吐いた。

「…妖精が見える力があっても、愛されているわけではないのだな」

残念そうに呟く。

『妖精に祝福』されたのだと意味もわからず喜んでいた幼いアドバンズの姿はそこになかった。

ウェルスタに妖精の姿を絵に描いて一生懸命説明する愛らしかった弟。
婚約者となったニーディアの側にいっぱいいるんだと、ウェルスタの目には何もない場所を指で指して訴えるアドバンズを微笑ましく思っていた。
しかし、今はもうそんな記憶も残っていないのだろうアドバンズは妖精と聞いて胡散臭げに眉を寄せた。

「で、その妖精のなんとやらのせいで、私の婚約は継続されているのか?」

アドバンズの問にウェルスタは横に首を振った。

「いや、ニーディアとの婚約は破棄されている」
「…どうして」

アドバンズは驚いていた。
ウェルスタが言うように、妖精の祝福を受けた婚約を破棄しようとして彼らの怒りに触れたというのなら、婚約は継続されているのだろうと思っていたのだ。

「ならばっ私は何のために眠らされていたとっ!」

「王位継承を第二王子に移行させる為だろう」

一瞬この場が静まった。
それはつまり、第一王子であるアドバンズは…。

沸々と湧き上がる怒りでアドバンズはウェルスタを睨みつけた。

「アイツは!第二王子おとうとまだ十三歳の子供で!」

「もう十八になった。成人の式典も終え、正式に王太子になった」

「十八、!?」

「お前は眠っていた。いつ目覚めるかわからない王子を国王にはできないと議会で決定した」

「五年、…嘘、だろう…?」

アドバンズは受け入れられぬと理解を拒む。

「アドバンズ。お前の今後は自由にして構わないそうだ。好いた女と結ばれてもいいし、周囲の声が気になるなら王領に移り住めば良い。
政略結婚が嫌だったのだろう?よかったな」

自由だと聞かされ、急に不安に囚われた。
ずっと願っていた自由というものの中に放り出されたアドバンズは、何をどうしてよいのかわからなくなった。

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