素顔を知らない

基本二度寝

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「貴方の言うものに該当する宝物ほうもつを探させた」

国王は聖女セイラと名乗る女の話聞き、縋る気持ちで彼女の言うがまま素直に行動を起こした。

ちなみに王太子はといえば
「御託は良い!お前はいつも通り祈りでも捧げれば良いんだ」と叫び、
「煩い!口を挟むな!!」と国王の雷が落ちてからは、不満顔ではあるが部屋の隅で静かに成り行きを見ていた。


聖女の助言に対し、すぐに王は指示を出して従者が動き、この部屋に壺が運び込まれてきた。
幼い子どもが入れそうな大きさの壺が、国王の前に置かれる。

「間違いありませんね。止まぬ雨の原因はこの古魔具アーティファクトが原因ですね」

聖女は壺の周りをぐるぐると周り、確信した上で王に伝えた。

この国は水害が多い土地などではない。
地続きになっている両隣国が穏やかな土地のだから、この国だけ災害が多い異常な土地、なんてことがおかしいのだ。

聖女にそう言われ、国王は「確かに」と神妙になる。
なにか原因があるはずだ、聖女と王は問答を繰り返し、ようやく此れにたどり着いた。

「この壺は宝物庫で大事に保管するのではなく、割って壊すか水を張るか、外に放置してください」

「…そんな…。貴重な宝をみすみす…」

「これは『雨乞いの壺』と呼ばれるものなんですよ」


元々砂漠の国で重宝されていた。

壺が乾けば雨を呼ぶ。壺が満ちれば雨は止む。
そういう魔道具なのだから、壺に水を入れておけば、雨は去るのだと簡単に説明した。

本来は室内でなく外に飾られる置物なのだ。 

半信半疑で、王は壺に水を満たさせた所、あれほど降り続いた雨音が静かになっていき、やがて止んだ。

「…まさか…こんな簡単なことで…」

雲の切れ間が現れ、青空を見上げる国王は、脱力した。

聖女が災害からこの不安定な国を守ってくれる。
早々に見つけ出し、国を安定させ、王族に取り込むようにと。
それが、代々受け継いできた王家の習わしだった。

「まさか…壺一つで国が傾くなんて…。
しかし、なぜ誤った情報が後世に受け継がれていたのだ」

不可解だと疑問を持つ王に、聖女は答えを差し出した。

「聖女、と言うものは古来より比較的見目がよいと言われてます。じつは、こういったことはよくあるのですが…」

見目の良い聖女と婚姻したいが為に、国に災いをあえて呼び込む。
聖女を国に縛り付ける為だけに、国に災いを呼ぶ権力者が居るのだと。
それが、この国の先祖であると聞かされ、国王は微妙な気持ちになった。

「本当によくある話なんです」

慰めのつもりなのか、聖女は他国でも似たような事があるのだと話す。

その知識から災害は魔道具の効果の可能性を思いつき、結果的にこの国の水害問題を解決したのだった。
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