聖女の専属護衛は婚約破棄を受け入れる

基本二度寝

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四 サドル

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「…婚約が解消されたの」

シャラリーゼから呼び出しを受けてサドルは公爵家に居た。
しかも、あのムカつく野郎との婚約がなくなったと聞いて、内心小躍りをしていた。

「そうか…アイツのためにがんばったのにな」

振られた女を慰めて…あの野郎の後釜っていうのは癪だが公爵家に婿入りできれば言うことはない。


散々、団内で見下してきた上位貴族らを見返せる。

あのムカつく野郎ガルウィングも、だ。

サドルもガルウィングと同じ子爵の子息だったが、こっちは三男。アイツは長男で跡取りのくせに騎士団に入団してきた嫌味な奴だった。

同時期に入団し、年齢も近く、同じ爵位の生まれ。
サドルとステータスは大して変わらないのに、シャラが見初めて公爵令嬢の婚約者になった。

運が良いだけだ。
シャラを助けたのがサドルだったなら、シャラと婚約できたのはサドルのはずだった。

幼馴染として仲が良かったから何度かシャラの父、公爵に婚約の打診をしたが、笑って首を振られた。

「子爵の子息では…ね」

それがどういうことだ。
シャラが望めば爵位など関係ないではないか。
子爵の子息のあの野郎が婚約者に収まったのだから。

俺にもチャンスはあるはずだ。

シャラを慰める為に手を伸ばす。
彼女に惚れられることができれば。

肩を抱いて引き寄せれば、払われた。

「全然役に立たなかった」

シャラは暗い目でサドルを睨む。

「サドルが教えてくれたこと。全部無意味だった」

「シャラ…?」

「婚約解消の王命を出した国王陛下おじさまに理由を聞きたくて、王城に行ったの。伯父様には会えなかったけど、城内の人間が話しているのを聞いたの」

シャラはサドルと距離を取って座り直す。

「ガルウィングは聖女様の伴侶に選ばれたって」

「聖女っ!?」

そんな馬鹿な。
いつ聖女の発表があった?

いや、聖女が選ばれたとなればまず、専属の護衛騎士の指名があるはずだ。
聖女の騎士となれば、将来は安泰。
なんたって聖女はその立場だけならば、国王陛下よりも高い地位となる。
騎士としてなら最上級。国王の近衛よりも地位は高い。

是非聖女サマの目に止めるように務めねば、…

いや、シャラは今何といった?

「聖女の、伴侶…?」
「ガルウィングが指名されたらしいの。なんで、わざわざ私の婚約者を…」

「…聖女サマには事情を話さずにまず自分の護衛騎士の指名をさせるからな。それが伴侶となることは選んだ後に知るから…って待てよ。ガルウィングが選ばれたのかよ!?はぁ!?なんで!」

「知らないわよ!」

シャラは頭を掻きむしってヒステリックに叫ぶ。
俺だって、叫びたい位だ。

寝取ってやるつもりで、シャラを唆し婚約破棄を宣言させたのに、悔しがりもしなかった。

あの時にはもう、聖女の専属騎士への内定があったからか?

なんで、どうしてアイツばかり!
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