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「国王陛下より、現行の婚約解消を命ぜられ、本日付けで聖女様の専属護衛及び伴侶として尽くすようにとお言葉を賜りました」
聖女の為に用意された部屋で、ガルウィングは跪いた。
「え、ガル…婚約者居たの?」
「はい。もう解消されましたが」
先程本人からも婚約破棄を宣言された。
…破棄?
陛下の言葉では解消とのことだったが、…まぁどっちでも良い。結果は同じ事だ。
もうガルウィングは聖女の伴侶になった。
「えっ?!ちょっとまって、知らなかったの。私そんなつもりじゃ」
聖女に選ばれた彼女はまず自分の護衛を自身で選ぶように指示を受ける。
それは同時に聖女の伴侶として扱われる。
婚約者が居ようが恋人が居ようが妻が居ようが、聖女に選ばれた騎士は相手と別れるしかない。
それくらい、この国で聖女は尊い存在とされている。
「問題ありません。元々好き合っていたわけではなく命令の上での婚約でしたので、命令で以て解消されただけです。お気になさらず」
「命令って…」
聖女は貴族の常識に乏しいらしい。
わかりやすく噛み砕いて説明する。
あとは、受け入れ安いよう互いに愛情がない事を話した。
「元婚約者には恋人がおりました。婚約解消により相手も好いた男と添い遂げられるかと思います」
ガルウィングの同僚のあの男は、子爵家の子息だった。
同じ爵位だったせいか、やたら絡まれることが多かった。
今にして思えば、恋人の婚約者が気に入らなかっただけだろう。
「婚約者がいるのに…恋人?」
「貴族の婚姻は政略であることが多いので、想いあった者同士が恋人や愛人として居るのは珍しくないのです」
「…じゃあ私も政略なの?」
聖女は顔を曇らせた。
つい、口角が上がってしまう。
そうあってほしくないと、聖女の顔が語る。
立ち上がって、ソファの彼女の隣に座った。
「リノ」
顔を寄せ、彼女の名を囁く。
聖女はびくっと肩を揺らした。
聖女と護衛の時間は終了。
腰に腕を回し、自身の膝の上に跨ぐように座らせた。
「貴方と初めて会った時、貴方に選ばれたいと思った」
団長が騎士団員に集合を掛け、陛下が訪れた。
従者を多く従えていたが、その中にお仕着せに身を包んだリノがいた。
誰も気に留めていなかったけれど、ガルウィングは彼女が気になり、目を離せなかった。
視姦と言われても仕方がない程に見つめた。
脳内で彼女を散々犯し、縋らせた。
彼女を城内で見つける度に声を掛け、他の男が近づかないように威嚇してまわった。
ようやく名前を愛称で呼んで貰えた頃に、国王陛下に呼び出され、リノは聖女だと告げられ、聖女の専属の護衛となるように任命を受けた。
同時に今までの婚約は解消となった。
聖女の専属護衛は伴侶と同義。
「今まで受けたどの報奨より、この使命を喜んで受けた」
リノの顔は晴れない。
命じられての婚姻だと不満なのか不安なのか。
でもこの騎士団の世界で生きてきたガルウィングには命令は絶対だ。
…しかし、手放せと命令が下れば手放せるかの自信はない。
「さしあたって、一週間の休暇を与えられた。その間にリノは俺の想いの重さを知ると思う。好きとか嫌いとかそんな生易しいものではない」
加減などしない。
全力で食らうだけ。
リノは意味がわからないのか首を傾げる。
その後、足腰の立たなかったリノはようやくその重さを知った。
聖女の為に用意された部屋で、ガルウィングは跪いた。
「え、ガル…婚約者居たの?」
「はい。もう解消されましたが」
先程本人からも婚約破棄を宣言された。
…破棄?
陛下の言葉では解消とのことだったが、…まぁどっちでも良い。結果は同じ事だ。
もうガルウィングは聖女の伴侶になった。
「えっ?!ちょっとまって、知らなかったの。私そんなつもりじゃ」
聖女に選ばれた彼女はまず自分の護衛を自身で選ぶように指示を受ける。
それは同時に聖女の伴侶として扱われる。
婚約者が居ようが恋人が居ようが妻が居ようが、聖女に選ばれた騎士は相手と別れるしかない。
それくらい、この国で聖女は尊い存在とされている。
「問題ありません。元々好き合っていたわけではなく命令の上での婚約でしたので、命令で以て解消されただけです。お気になさらず」
「命令って…」
聖女は貴族の常識に乏しいらしい。
わかりやすく噛み砕いて説明する。
あとは、受け入れ安いよう互いに愛情がない事を話した。
「元婚約者には恋人がおりました。婚約解消により相手も好いた男と添い遂げられるかと思います」
ガルウィングの同僚のあの男は、子爵家の子息だった。
同じ爵位だったせいか、やたら絡まれることが多かった。
今にして思えば、恋人の婚約者が気に入らなかっただけだろう。
「婚約者がいるのに…恋人?」
「貴族の婚姻は政略であることが多いので、想いあった者同士が恋人や愛人として居るのは珍しくないのです」
「…じゃあ私も政略なの?」
聖女は顔を曇らせた。
つい、口角が上がってしまう。
そうあってほしくないと、聖女の顔が語る。
立ち上がって、ソファの彼女の隣に座った。
「リノ」
顔を寄せ、彼女の名を囁く。
聖女はびくっと肩を揺らした。
聖女と護衛の時間は終了。
腰に腕を回し、自身の膝の上に跨ぐように座らせた。
「貴方と初めて会った時、貴方に選ばれたいと思った」
団長が騎士団員に集合を掛け、陛下が訪れた。
従者を多く従えていたが、その中にお仕着せに身を包んだリノがいた。
誰も気に留めていなかったけれど、ガルウィングは彼女が気になり、目を離せなかった。
視姦と言われても仕方がない程に見つめた。
脳内で彼女を散々犯し、縋らせた。
彼女を城内で見つける度に声を掛け、他の男が近づかないように威嚇してまわった。
ようやく名前を愛称で呼んで貰えた頃に、国王陛下に呼び出され、リノは聖女だと告げられ、聖女の専属の護衛となるように任命を受けた。
同時に今までの婚約は解消となった。
聖女の専属護衛は伴侶と同義。
「今まで受けたどの報奨より、この使命を喜んで受けた」
リノの顔は晴れない。
命じられての婚姻だと不満なのか不安なのか。
でもこの騎士団の世界で生きてきたガルウィングには命令は絶対だ。
…しかし、手放せと命令が下れば手放せるかの自信はない。
「さしあたって、一週間の休暇を与えられた。その間にリノは俺の想いの重さを知ると思う。好きとか嫌いとかそんな生易しいものではない」
加減などしない。
全力で食らうだけ。
リノは意味がわからないのか首を傾げる。
その後、足腰の立たなかったリノはようやくその重さを知った。
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