その言葉はそのまま返されたもの

基本二度寝

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伯爵家

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夜会の翌日、リノナリザの実家、伯爵家にエスコートをした傷の男が訪れていた。

「リザ。大丈夫か」
「平気よ。ありがとう。ググのお陰よ」
「そうか?」

リノナリザの幼馴染、グルクフは首を傾げる。
目線だけで人を屠れそうな幼馴染が、子供のようにこてんと首を傾ける様はリノナリザの目には愛らしく映る。

「納得したのよ。ググが『テイラーは男だ』って教えてくれて。
アリスト様の恋愛対象が男性だったから、私の言葉など聞く耳を持たなかったのね、って。
女性の格好をされた男性を好む殿方が居ることは知っていたけれど、アリスト様がそうでしたのね。
早く言って下されば、身を引きましたし、応援しましたのに。
真実の愛とは、性別をも超えるのね。素敵」

それは多分違う。とグルクフは思う。
でも告げるつもりもない。
リノナリザの婚約がなくなるならそれはグルクフにとって都合の良いことだから。

「リザ。もし本当に婚約が破棄されたら、求婚しても良いか?」
「え?」

パチパチと瞬きをする。
リノナリザの驚いたときの癖だ。

「わざわざ傷物の女より良い人いるでしょう?」
「…ヘマをして怪我して傷を残すような軟弱男など、嫌か」
「王太子殿下を庇ってお守りした時に負った傷でしょう?勇敢な貴方を軟弱だって言う人がいたなら殿下に代わって私が成敗するわ!」

拳を握るリノナリザの手を、大きな手が包む。

「リザがいい」

グルクフはただでさえ女受けの悪い顔が、負った傷のせいで凄みを増した。
男でも目をそらされる事がある。
それでも態度を変えなかったのは、幼馴染のリノナリザだけだった。

視界が狭くなり、時々ふらつくのを、リノナリザは抱きついて身体全体で支えてくれる。
それに乗じてグルクフはリノナリザを抱き寄せていることに気づいていないのだろう。
まだまだアピールが足りない。
もっとわかりやすく、攻め方を変えて…。

「リザ…?」

「…そうね。とりあえず婚約破棄されてから、ね」

赤く染まるリノナリザの耳に、グルクフは少し期待してしまった。
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