5 / 6
伯爵家
しおりを挟む
夜会の翌日、リノナリザの実家、伯爵家にエスコートをした傷の男が訪れていた。
「リザ。大丈夫か」
「平気よ。ありがとう。ググのお陰よ」
「そうか?」
リノナリザの幼馴染、グルクフは首を傾げる。
目線だけで人を屠れそうな幼馴染が、子供のようにこてんと首を傾ける様はリノナリザの目には愛らしく映る。
「納得したのよ。ググが『テイラーは男だ』って教えてくれて。
アリスト様の恋愛対象が男性だったから、私の言葉など聞く耳を持たなかったのね、って。
女性の格好をされた男性を好む殿方が居ることは知っていたけれど、アリスト様がそうでしたのね。
早く言って下されば、身を引きましたし、応援しましたのに。
真実の愛とは、性別をも超えるのね。素敵」
それは多分違う。とグルクフは思う。
でも告げるつもりもない。
リノナリザの婚約がなくなるならそれはグルクフにとって都合の良いことだから。
「リザ。もし本当に婚約が破棄されたら、求婚しても良いか?」
「え?」
パチパチと瞬きをする。
リノナリザの驚いたときの癖だ。
「わざわざ傷物の女より良い人いるでしょう?」
「…ヘマをして怪我して傷を残すような軟弱男など、嫌か」
「王太子殿下を庇ってお守りした時に負った傷でしょう?勇敢な貴方を軟弱だって言う人がいたなら殿下に代わって私が成敗するわ!」
拳を握るリノナリザの手を、大きな手が包む。
「リザがいい」
グルクフはただでさえ女受けの悪い顔が、負った傷のせいで凄みを増した。
男でも目をそらされる事がある。
それでも態度を変えなかったのは、幼馴染のリノナリザだけだった。
視界が狭くなり、時々ふらつくのを、リノナリザは抱きついて身体全体で支えてくれる。
それに乗じてグルクフはリノナリザを抱き寄せていることに気づいていないのだろう。
まだまだアピールが足りない。
もっとわかりやすく、攻め方を変えて…。
「リザ…?」
「…そうね。とりあえず婚約破棄されてから、ね」
赤く染まるリノナリザの耳に、グルクフは少し期待してしまった。
「リザ。大丈夫か」
「平気よ。ありがとう。ググのお陰よ」
「そうか?」
リノナリザの幼馴染、グルクフは首を傾げる。
目線だけで人を屠れそうな幼馴染が、子供のようにこてんと首を傾ける様はリノナリザの目には愛らしく映る。
「納得したのよ。ググが『テイラーは男だ』って教えてくれて。
アリスト様の恋愛対象が男性だったから、私の言葉など聞く耳を持たなかったのね、って。
女性の格好をされた男性を好む殿方が居ることは知っていたけれど、アリスト様がそうでしたのね。
早く言って下されば、身を引きましたし、応援しましたのに。
真実の愛とは、性別をも超えるのね。素敵」
それは多分違う。とグルクフは思う。
でも告げるつもりもない。
リノナリザの婚約がなくなるならそれはグルクフにとって都合の良いことだから。
「リザ。もし本当に婚約が破棄されたら、求婚しても良いか?」
「え?」
パチパチと瞬きをする。
リノナリザの驚いたときの癖だ。
「わざわざ傷物の女より良い人いるでしょう?」
「…ヘマをして怪我して傷を残すような軟弱男など、嫌か」
「王太子殿下を庇ってお守りした時に負った傷でしょう?勇敢な貴方を軟弱だって言う人がいたなら殿下に代わって私が成敗するわ!」
拳を握るリノナリザの手を、大きな手が包む。
「リザがいい」
グルクフはただでさえ女受けの悪い顔が、負った傷のせいで凄みを増した。
男でも目をそらされる事がある。
それでも態度を変えなかったのは、幼馴染のリノナリザだけだった。
視界が狭くなり、時々ふらつくのを、リノナリザは抱きついて身体全体で支えてくれる。
それに乗じてグルクフはリノナリザを抱き寄せていることに気づいていないのだろう。
まだまだアピールが足りない。
もっとわかりやすく、攻め方を変えて…。
「リザ…?」
「…そうね。とりあえず婚約破棄されてから、ね」
赤く染まるリノナリザの耳に、グルクフは少し期待してしまった。
631
お気に入りに追加
941
あなたにおすすめの小説


私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

真実の愛の言い分
豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」
私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。

想い合っている? そうですか、ではお幸せに
四季
恋愛
コルネリア・フレンツェはある日突然訪問者の女性から告げられた。
「実は、私のお腹には彼との子がいるんです」
婚約者の相応しくない振る舞いが判明し、嵐が訪れる。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる