画策して堕ちたメイド

基本二度寝

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五 ミリス

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「それはありえません」
「え?」

メイド長の即答にミリスは反応できなかった。

「ですが、手紙には…」
「貴方は顔を見たのですか、イグナス様の」

「それは、」

ミリスにしてみれば、昨夜の人物がイグナスでないなど信じられなかった。
イグナスの想い人はレニで間違いないと思っている。
しかし、それを知るのはおそらくイグナスを観察し続けたミリスだけ。

抱きしめられ背中に感じた鍛えられた身体の感触は騎士であることに間違いはない。
それなのに、イグナスではないという。

「顔は見ていませんが、イグナス様だと確信しています」
「…その自信は何処から来るのかしら」

メイド長はため息を吐く。

「イグナス様は数日前から魔物討伐で王城を離れています。所在確認しましたが、早馬でも二日はかかる距離にいるそうです。念の為、通信球にて確認していただきましたが、部隊の兵士が間違いなくイグナスは拠点から離れていない事を証明してます」

「王城に…いない?」

ミリスは頭を殴られたような衝撃を受けた。

「ミリス。貴方は昨夜誰と過ごしたのですか」

「ぇ…あ、あ、あぁ…」

冷静になれば、ことの重大さに気づいた。

ミリスは純潔を失った。
顔も知らない男に捧げた。

夢見て、現実にしようとしていたイグナスとの婚約は、儚く露と消えたのだ。
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