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アルベリクはアネッサの部屋にいた女をそのままにして逃げ出した。
長い廊下を息が上がるほどに走り続け、国王夫妻の寝室がある部屋に飛び込めば、側近二人が向かい合ってソファに座っていた。
その側近の膝の上に抱かれている人物を目にして、呆然とした。

「陛下…」

「ウォレス、グレゴ、…どうして、彼女が…」

昨夜ずっと愛し合っていたと思っていた想い人は、従兄グレゴワールの腕の中でシーツを身体に巻きつけた状態で眠っていた。

「陛下、貴方はなんて愚かな事を…」

ウォレスの言葉を無視して、アルベリクはずっとアネッサを見つめている。

「…グレゴ、彼女に手を出しては、居ないよな?王妃の相手をしてほしいと言ったが、彼女は、アネッサは違う。なぁ?そうだよな?」

アルベリクは縋るように従兄を見、アネッサに視線を戻す。

「…あんなもん飲まされてこの部屋に入れられて、なんもなかったと本気で思ってるのか?」

「いや、嘘だ、嘘だ…アネッサ、アネッサ…」

昨日、何度も囁いた名を繰り返す。
それに気づくことなくアネッサはグレゴワールの腕の中で眠っている。

「陛下。とりあえず座ってください。」

---


「王家の媚薬など持ち出して…」

ウォレスは頭を抱える。
ソレの効果は強烈だ。
それは仕込んだアルベリクも体感した。
ましてや自分以上の量を飲まされたグレゴワールは、

「正直、まだ治まってない。それだけならまだ良い。妙にアネッサに突っ込みたくて仕方ない」

「グレゴっ!彼女は私の、」

「陛下。黙ってください」

ウォレスは国王を睨みつけて黙らせた。

「…陛下には知らせていませんが、王の血族しか使用を許されていないその媚薬は、服用した直後に性交した相手としか…出来なくなるんですよ」

「…なに?そんなこと」

想い人アネッサのあのようなあられもない姿を見ても陛下は反応していないでしょう?あの媚薬がただの媚薬じゃないのはそういうわけです。性交した相手じゃないと勃たなくなるんですよ」

アネッサはシーツを巻かれてはいるが、その太ももはグレゴワールが撫でているから顕に曝け出されいるし、シーツがずれて彼女の胸が見えてしまっている。
グレゴワールが小刻みに足を揺らしているのは、苛立っているというより、何かを紛らわしているようだった。

ウォレスが言ったように艶めかしい彼女を見て、頭ではは興奮しても、身体の方はぴくりとも反応しない。

「何代か前の国王陛下の女癖が酷かったので、王妃が用意したのが始まりです。以降、王族の血を使った呪いのような媚薬は、その血筋に対して効果を発揮することで、初夜で使われるようになりました」

アルベリクは呆然と、聞いていない…と呟く。
ただの強力な媚薬だという認識しかなかった。
妃を迎えたばかりのアルベリクには簡単に手に入った媚薬だから使っただけなのに。

「本来なら陛下伝えるべきことではないですからね。先代陛下も知らなかった事と思いますよ」

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