なにをおっしゃいますやら

基本二度寝

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「王族としての、実績…」

陛下から常々催促されてはいた。
実績は、なにかないのかと。


第一王子は当然自分が次期国王だと思っていた。
ここ近年歴代の王は第一王子だった。
王太子の条件である成果や実績など、ただの建前だと。

しかも、婚約者に選ばれたのは、英雄の血を引く侯爵令嬢。
後ろ盾はこれ以上なく完璧だった。

先代国王も、現国王も、国を救ってくれた英雄の一族をずっと重宝していた。
彼らがいなければこの国は他国に食われていた。
その血筋の令嬢との婚約を結ばれ、第一王子は揺るがない地位に安心しきっていた。

ただ、彼女の実家の力で国王になれたと言われるのは癪に障る。
どちらが上なのか、理解させるつもりで今日、第一王子は壇上にあがったのだ。

か弱い令嬢を虐げ、他の男と親密になるなど、勝手は許さぬ。
それらは作り上げた罪などではなく、事実であった。
ただ、取るに足らない。
罪とも言えぬ程度のものだった事も把握していた。


婚約破棄など茶番のつもりだった。
国王の決めた婚約を、まだ立太子もしていない第一王子が破棄できると思うほど馬鹿ではない。

ただ、彼女、エリクシアに思い知らせたかった。

あるじはどちらか、と言うを。


エリクシアは呆れた顔を取り繕いもせず、王子を見据える。
エリクシアだけでない。この場にいる他の貴族も似たような顔をしている。

「第二王子は現在学園で二年生ですが、いくつかの公共事業を提案し、着手されています。国のために、この国に住む民のために。
第一王子はこの学園生活の五年間、なにかなされましたか?」

今まで何もしなかったのはエリクシアだって同じではないか。

顔に出ていたのか、エリクシアの側にいた、が口を挟む。

「エリクシア様は国王夫妻の外交に同行して相応の成果を示しております」

外交に必要な能力は他国の言語と文化の習得。
形に残る実績なら、第一王子の箔付けとして取り上げることも出来たが、本人のあずかり知らぬ所でエリクシアは自身の知識を己の実績と出来るように、国王夫妻の補佐を買って出た。

「それら外交のノウハウもすでに第二王子の婚約者令嬢に引き継ぎを終えており、現在はもう彼女が補佐役を務めております」

立つ鳥跡を濁さず。

エリクシアは王子の婚約者としての責務を全うし、そしてもう終えた後だった。
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