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王太子、いや昨日国王となったリーゲネズは呆然と立っていた。
国王に即位し、戴冠式を終えたのが昨日。

翌日の今日、国王の初政務と言うことで報道記者が囲む中、リーゲネスは

正気に、という言葉が的確な表現なのかはわからない。
ずっと誰かの人生の物語を読んでいたかのような感覚といえばよいのか。


「お父様?」

目の前で不安そうにリーゲネスを見上げる子供が、自分の息子だということは頭では理解している。

ただ、つい先程まではあった子を愛しく想う気持ちがすっかり削げ落ちている。
この子が、との子であったのならばそうはならなかっただろうに。

「…私は、今まで何を」

呆然と呟くリーゲネスの異変に、いち早く気づいたのは十年近く連れ添った妃だった。

「陛下は連日の式典にてお疲れのご様子です。申し訳ありませんが、皆様席は改めてご用意致しますので本日はこれにて失礼致します」

妃はリーゲネスの背に手をやり介助する。
心配そうな息子は近衛騎士が抱き上げ、新しい国王夫妻の後を追う。


記者団は首を傾げ、散り散りに解散した。
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