令嬢は魅了魔法を強請る

基本二度寝

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十一

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「アトラクト様」

声をかけられて振り返るアトラクトは、笑みを浮かべる。
彼を囲んでいた令嬢達の黄色い悲鳴が上がるのを、気に留めずアトラクトはまっすぐにミファセスの元にやってきた。

「うるさい羽虫が集られて参っていた」
「アトラクト様…」

笑わぬ魔法師は容姿が良くとも、学園内で安易に近づく者はなかった。
それが、笑顔を見せるようになって令嬢たちが色めき立った。
笑顔を向けるのは、婚約者に対してだけだと知っていても、ミファセスに成り代わりたいと肉食的な令嬢たちは、いつもアトラクトに集っている。

そんな彼女たちなど、アトラクトは歯牙にもかけていないのだが。

「おや、彼処にいるのは。婚約破棄を叫んだという…前の婚約者か?」

アトラクトを見つめていたミファセスは、彼の視線を追って元婚約者を見つけた。

「あぁ…今日も仲がよろしいようで」

ミファセスはすぐに興味を失ったようにアトラクトに視線を戻す。

「…そのようだ」

アトラクトはしばらく彼を見ていたが、ミファセスの視線に気づき笑みで答えた。

ミファセスは気づかない。

令嬢の手を掴んで離さないシュラブの姿を。
シュラブを振り払おうとする令嬢と彼が、仲が良さそうには到底見えないが、ミファセスの中ではその程度の認識なのだ。

アトラクトは婚約者の肩を抱いて、彼らに背を向けた。

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