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四
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「君がアリサ嬢かな。平民の」
「殿下。そのような物言いはお止めください」
王太子殿下との通常の出会いのイベントは発生しなかった。
誰に嫌がらせされることもなかったから仕方がない。
物語は大筋で外れてしまい、もはやアリサの力では修正不可能だった。
しかし、ここに来て王太子殿下からお声がけくださった。
側には婚約者の悪役令嬢も控えている。
思わず、距離を取って頭を垂れる。
「おや」
「平民、とひと括りで呼ぶのは失礼ですわ。殿下。彼女の所作はそこらの貴族令嬢よりも美しいのですから」
「…そのようだね」
「アリサ。殿下の失礼をお許し頂ける?」
「私のような者に勿体無いお言葉です。スフィ様」
「ありがとう。アリサ」
「…君たちは愛称を呼ばせるほどの仲だったのかい?」
悪役令嬢こと、スフィアは扇子で口元を隠し、はぁとわかりやすく息を吐いた。
「殿下はほとんど学園に顔を出さないので知らないのでしょうが。アリサに近づきたいと思う人間は多いのですよ。学園には」
貴族のマナーに所作を理解し、その上学業も誰よりも努力して維持しているのだとスフィアは殿下に説明をする。
「スフィ様もったいないお言葉です。しかし、私などまだまだ」
「ふふ。加えて、このように貴族には見かけない謙虚さ。誰もが彼女の虜になりますわ」
スフィアがここまでアリサのを買っているとは思わなかった。
顔を合わせば少し会話を交わす程度の仲だけれど。
そこに悪意はなく、楽しげに微笑まれ美人の笑顔は破壊力が凄いなと実感した。
前回は睨まれてばかりだった。
今思えばスフィアには睨まれるような行動しかしていない。
マナーを知れば、己の行動が恥ずかしいものだったと理解できる。
「彼女の周りに集まる貴族には派閥という垣根がないのです。彼女のような人間が国母となるべきなのかもしれません」
「スフィア。私の婚約者は君だよ」
「あら、殿下。ただの戯言です、お忘れになって」
スフィアは微笑んだ。
とても綺麗に。
アリサはまさか悪役令嬢に、王妃の座を薦められる事になるとは思わなかった。
「殿下。そのような物言いはお止めください」
王太子殿下との通常の出会いのイベントは発生しなかった。
誰に嫌がらせされることもなかったから仕方がない。
物語は大筋で外れてしまい、もはやアリサの力では修正不可能だった。
しかし、ここに来て王太子殿下からお声がけくださった。
側には婚約者の悪役令嬢も控えている。
思わず、距離を取って頭を垂れる。
「おや」
「平民、とひと括りで呼ぶのは失礼ですわ。殿下。彼女の所作はそこらの貴族令嬢よりも美しいのですから」
「…そのようだね」
「アリサ。殿下の失礼をお許し頂ける?」
「私のような者に勿体無いお言葉です。スフィ様」
「ありがとう。アリサ」
「…君たちは愛称を呼ばせるほどの仲だったのかい?」
悪役令嬢こと、スフィアは扇子で口元を隠し、はぁとわかりやすく息を吐いた。
「殿下はほとんど学園に顔を出さないので知らないのでしょうが。アリサに近づきたいと思う人間は多いのですよ。学園には」
貴族のマナーに所作を理解し、その上学業も誰よりも努力して維持しているのだとスフィアは殿下に説明をする。
「スフィ様もったいないお言葉です。しかし、私などまだまだ」
「ふふ。加えて、このように貴族には見かけない謙虚さ。誰もが彼女の虜になりますわ」
スフィアがここまでアリサのを買っているとは思わなかった。
顔を合わせば少し会話を交わす程度の仲だけれど。
そこに悪意はなく、楽しげに微笑まれ美人の笑顔は破壊力が凄いなと実感した。
前回は睨まれてばかりだった。
今思えばスフィアには睨まれるような行動しかしていない。
マナーを知れば、己の行動が恥ずかしいものだったと理解できる。
「彼女の周りに集まる貴族には派閥という垣根がないのです。彼女のような人間が国母となるべきなのかもしれません」
「スフィア。私の婚約者は君だよ」
「あら、殿下。ただの戯言です、お忘れになって」
スフィアは微笑んだ。
とても綺麗に。
アリサはまさか悪役令嬢に、王妃の座を薦められる事になるとは思わなかった。
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