花嫁は忘れたい

九

男は良い気分で目が覚めた。
隣に温もりを感じ、引き寄せ華奢な身体を抱きしめる。

レイア…戻ってきたのか

「旦那様おはよー」

男は覚醒した。
反射的に引き寄せた身体を引き剥がすと、見慣れた元愛人の顔があった。

「お前…どうしてここに」
「どうしてって、子供作るためでしょ？」

舌打ちをして身体を起こす。
昨夜は結局レイアを見つけることができなかった。
顔を隠して出会った夜会の会場や、いつか二人で行ってみたいと言っていた恋人たちの聖地である名所の丘。

思いつく場所を回っても彼女はいなかった。

屋敷に戻り、やけ酒を煽って…

そこからどうしたのか覚えていない。

身体のだるさは酒のせいだと思っていたが。
女の身体に残る鬱血痕を見つけ、嫌な想像する。

「昨日は、」
「やだ。旦那様激しかったよ♡」

女の言葉にカッとなって枕をぶつけた。
短い悲鳴が上がる。
不覚だ。
レイアを抱く夢を見た。
夢ではなかった。しかも、レイアでもなかった。

「くそっ」


部屋を出て執事を呼ぶ。
なぜあの女を屋敷に入れたのか。