2 / 6
二
しおりを挟む
「辺境の…伯爵家からの手紙は無いか?」
落ち着かぬ王太子ベンジンは城内をうろうろとして、手紙を仕分けている従者に声をかけた。
「伯爵家…ですか?」
「…元婚約者の…ニナの」
「殿下。もう関係のない令嬢を愛称で呼ぶことは」
「私とニナの関係は切れていない!そんなことより手紙はあるのかないのか!」
声を荒らげるベンジンに処置なし、と従者は頭を振った。
「ございません」
くそっ、
呟いてベンジンは従者に背を向けた。
「殿下。政務を」
「わかっている!」
ベンジンは執務室とは反対方向に歩いていった。
「いるか!邪魔する」
ベンジンは目的地の扉を部屋の主の許可を待たずに開いた。
「これはこれは殿下」
部屋の主と、向き合う形で来客がいた。
客人は王太子の顔を確認すると、挨拶もそこそこに慌てて部屋から去っていった。
「あんなに慌てずとも」
部屋の主、この国の大臣であり主に芸術関係の一切を取り仕切るコリンズ候爵はくくっと喉を鳴らして笑う。
「なんなのだ」
「お咎めを恐れたのでは」
「?…奴は何をしたのだ」
「王国劇場の関係者ですよ」
「劇場…?要件は何だったのだ」
コリンズはまだ、くくっと笑う。
「別の作品を上演したいとのことでした」
「…なに?」
「もう終いです。殿下」
「終い…まさか貴様」
「演目変更の許可を出しました」
コリンズは目を細めてニコリと笑む。
「なっ…!だめだ!まだ…ニナが戻っていないっっ!」
「…こんなことしたところでアドニナ嬢は戻りませんよ」
王太子が用意した物語通りに上手く行くはずなどない。
王城での仕事振りを辺境にいる令嬢が知る術などない。
物語のように、一般貴族同士ならあり得た…かもしれないけれど。
「劇場へ向かう」
「そんなことをしても無駄です」
「なんだと!権力を使ってでも」
「国王陛下がお呼びです。殿下」
部屋の入り口に厳しい顔をした宰相がいた。
「事業の、詳細が知りたいそうです」
ベンジンは項垂れた。
落ち着かぬ王太子ベンジンは城内をうろうろとして、手紙を仕分けている従者に声をかけた。
「伯爵家…ですか?」
「…元婚約者の…ニナの」
「殿下。もう関係のない令嬢を愛称で呼ぶことは」
「私とニナの関係は切れていない!そんなことより手紙はあるのかないのか!」
声を荒らげるベンジンに処置なし、と従者は頭を振った。
「ございません」
くそっ、
呟いてベンジンは従者に背を向けた。
「殿下。政務を」
「わかっている!」
ベンジンは執務室とは反対方向に歩いていった。
「いるか!邪魔する」
ベンジンは目的地の扉を部屋の主の許可を待たずに開いた。
「これはこれは殿下」
部屋の主と、向き合う形で来客がいた。
客人は王太子の顔を確認すると、挨拶もそこそこに慌てて部屋から去っていった。
「あんなに慌てずとも」
部屋の主、この国の大臣であり主に芸術関係の一切を取り仕切るコリンズ候爵はくくっと喉を鳴らして笑う。
「なんなのだ」
「お咎めを恐れたのでは」
「?…奴は何をしたのだ」
「王国劇場の関係者ですよ」
「劇場…?要件は何だったのだ」
コリンズはまだ、くくっと笑う。
「別の作品を上演したいとのことでした」
「…なに?」
「もう終いです。殿下」
「終い…まさか貴様」
「演目変更の許可を出しました」
コリンズは目を細めてニコリと笑む。
「なっ…!だめだ!まだ…ニナが戻っていないっっ!」
「…こんなことしたところでアドニナ嬢は戻りませんよ」
王太子が用意した物語通りに上手く行くはずなどない。
王城での仕事振りを辺境にいる令嬢が知る術などない。
物語のように、一般貴族同士ならあり得た…かもしれないけれど。
「劇場へ向かう」
「そんなことをしても無駄です」
「なんだと!権力を使ってでも」
「国王陛下がお呼びです。殿下」
部屋の入り口に厳しい顔をした宰相がいた。
「事業の、詳細が知りたいそうです」
ベンジンは項垂れた。
383
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者が私の妹と結婚したいと言い出したら、両親が快く応じた話
しがついつか
恋愛
「リーゼ、僕たちの婚約を解消しよう。僕はリーゼではなく、アルマを愛しているんだ」
「お姉様、ごめんなさい。でも私――私達は愛し合っているの」
父親達が友人であったため婚約を結んだリーゼ・マイヤーとダニエル・ミュラー。
ある日ダニエルに呼び出されたリーゼは、彼の口から婚約の解消と、彼女の妹のアルマと婚約を結び直すことを告げられた。
婚約者の交代は双方の両親から既に了承を得ているという。
両親も妹の味方なのだと暗い気持ちになったリーゼだったが…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【短編完結】婚約破棄ですか?了承致いたしますが確認です婚約者様
鏑木 うりこ
恋愛
マリア・ライナス!お前との婚約を破棄して、私はこのリーリエ・カント男爵令嬢と婚約する事にする!
わたくしの婚約者であるサルトル様が声高に叫びました。
なるほど分かりましたが、状況を良く確認させていただきましょうか?
あとからやはりなかった、間違いだったなどと言われてはたまったものではございませんからね?
シーン書き2作目です(*'ω'*)楽しい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
これでお仕舞い~婚約者に捨てられたので、最後のお片付けは自分でしていきます~
ゆきみ山椒
恋愛
婚約者である王子からなされた、一方的な婚約破棄宣言。
それを聞いた侯爵令嬢は、すべてを受け入れる。
戸惑う王子を置いて部屋を辞した彼女は、その足で、王宮に与えられた自室へ向かう。
たくさんの思い出が詰まったものたちを自分の手で「仕舞う」ために――。
※この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる