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八
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幼い頃に会ったきりだったグリシアは、フレイグの想像以上に美しく育っていた。
呼ばれた侯爵家で再会し、久しぶりだと声をかけてみれば、頬を染めてフレイグを見つめている。
どうやら、フレイグは賭けに勝ったようだった。
そして、事態もフレイグに都合の良いように動いていく。
「フレイグ」
「公爵様。お久しぶりでございます。いつも我が商会をご利用いただき誠に」
「あぁ、挨拶はいい」
以前のように、公爵当主は国を渡り侯爵家にやってきて、フレイグを呼びつけた。
まるで屋敷の主のように振る舞い、フレイグをソファに促す。
「フレイグ。君の父親も素晴らしい商人だったが、代替わりした君の腕も買っている」
「ありがとうございます」
今までになかった賛辞に、何か無茶な要求でもされるのかと、フレイグは身構えた。
「グリシアは番を見つけることができれば、王家との婚約を解消できるんだ。
君どうだ?グリシアの番にならないか」
ーーー
隣国からグリシアが戻ってくる。
ヴェロージオは今か今かとその時を待っていた。
グリシアは国王と謁見し、正式に婚約が解消される。
その前に、どうにか彼女を引き止めねばならない。
ヴェロージオは、ぐっと手に力を入れる。
手に入れたばかりの魔道具を握りしめていた。
ーーー
「…本当に番なのかしら」
謁見の間には、国王だけでなく王妃も同席した。
そう簡単に出会えるはずのない番を、たった二年で見つけ出したというグリシアに王妃は懐疑的だった。
王妃の呟きに、その場に居るヴェロージオも同意したい気持ちだった。
(番じゃなければ…)
国王の入室の許可が下り、扉の向こうから待ち望んだ婚約者が帰還した。
一人ではない。
彼女の隣には、スラリと背の高い男がグリシアをエスコートしていた。
いや、エスコートと言うにはあまりにも…。
貴族の所作を忘れたように、グリシアは男に身体を預け切っている。
視線は前を見るわけでなく、国王の御前だというのに、じっと男を見つめ続け、何が不服か唇を尖らせている。
グリシアの甘えた声が謁見の間に響いた。
「フレイグ。もう帰りたいの」
「グリシア。もう少しだけ我慢しよう、ね?」
妃教育でも手のかからないと言われたグリシアが、国王の前だというのに、男に口付けを求め始める。
仕方がないと、男もそれに応え…、
ヴェロージオは思考が停止していた。
あれは、グリシアなのか…?
目の前で行われている行為を理解できず、狼狽えた。
婚約関係であった今まで、一度も見たことがないほど緩んだ顔をして、端ない音を立てて他の男と唇を交わすグリシアに、動揺してヴェロージオは一歩二歩と後ずさった。
呼ばれた侯爵家で再会し、久しぶりだと声をかけてみれば、頬を染めてフレイグを見つめている。
どうやら、フレイグは賭けに勝ったようだった。
そして、事態もフレイグに都合の良いように動いていく。
「フレイグ」
「公爵様。お久しぶりでございます。いつも我が商会をご利用いただき誠に」
「あぁ、挨拶はいい」
以前のように、公爵当主は国を渡り侯爵家にやってきて、フレイグを呼びつけた。
まるで屋敷の主のように振る舞い、フレイグをソファに促す。
「フレイグ。君の父親も素晴らしい商人だったが、代替わりした君の腕も買っている」
「ありがとうございます」
今までになかった賛辞に、何か無茶な要求でもされるのかと、フレイグは身構えた。
「グリシアは番を見つけることができれば、王家との婚約を解消できるんだ。
君どうだ?グリシアの番にならないか」
ーーー
隣国からグリシアが戻ってくる。
ヴェロージオは今か今かとその時を待っていた。
グリシアは国王と謁見し、正式に婚約が解消される。
その前に、どうにか彼女を引き止めねばならない。
ヴェロージオは、ぐっと手に力を入れる。
手に入れたばかりの魔道具を握りしめていた。
ーーー
「…本当に番なのかしら」
謁見の間には、国王だけでなく王妃も同席した。
そう簡単に出会えるはずのない番を、たった二年で見つけ出したというグリシアに王妃は懐疑的だった。
王妃の呟きに、その場に居るヴェロージオも同意したい気持ちだった。
(番じゃなければ…)
国王の入室の許可が下り、扉の向こうから待ち望んだ婚約者が帰還した。
一人ではない。
彼女の隣には、スラリと背の高い男がグリシアをエスコートしていた。
いや、エスコートと言うにはあまりにも…。
貴族の所作を忘れたように、グリシアは男に身体を預け切っている。
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グリシアの甘えた声が謁見の間に響いた。
「フレイグ。もう帰りたいの」
「グリシア。もう少しだけ我慢しよう、ね?」
妃教育でも手のかからないと言われたグリシアが、国王の前だというのに、男に口付けを求め始める。
仕方がないと、男もそれに応え…、
ヴェロージオは思考が停止していた。
あれは、グリシアなのか…?
目の前で行われている行為を理解できず、狼狽えた。
婚約関係であった今まで、一度も見たことがないほど緩んだ顔をして、端ない音を立てて他の男と唇を交わすグリシアに、動揺してヴェロージオは一歩二歩と後ずさった。
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